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破壊の魔王  作者: Karionette
復興編 第五章 ルフ
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04




ルフは、俺が銀のとこに流れ着いたとき、何かとしつこく接してきた奴だ。

本当は巨大船くらい簡単に持ち上げれるくらいの巨鳥ならしいが、そいつはまだ雛鳥で、ただの白くて丸っこい鳥だった。

まぁ雛って言っても当時の俺の2倍はでかかったが。


俺が裏のルナティクスで英雄呼ばわりさえることになった事件。あの日、こいつは死んだ。

俺は全員を守ると契約して、それができなかった。 後にも先にも、契約を果たせなかったのはあれが初めてだ。



「それも、これも………てめぇのせいだ! このバカ鳥!!!」


「ぐぎャア!!」



だんだん腹がたってきた。

そうだ。こいつは俺を守るだとか見てられないだとかで、 勝手 に飛び出してきて死んだ馬鹿だった。



「だッテ、 れークん、翼おれテ、 おちソうだった」


「だからってそれが原因で死んで、挙句ティナになって現れるとか迷惑でしかねぇ!」


「うぅ、そんナ、 知らない、 ぼク、ぼく、 ジャないから…」


「銀が聞いたら心から喜んでくれるだろうよ」


「シ・・・・・!??」


「よかったな、 羽達磨(はねだるま)。 あいつはあの日にティナ を皆殺しにするって決めたんだぞ」


「し口が...、 オコる、 ぜったイおこル、 たすケて、れーくん、 トモだチ」


「だから違うっつってんだろうが!!」



もう一度ぶっ飛ばすも、 毛玉の塊にはなんのダメージもない。 ぶった切っても羽が数枚散っただけだ。

ということは、破壊しかない。 ティナ破壊用にありったけ残しときたかったが、 攻撃手段がこれしかないならしょうがない。

本来ティナ堕ちを破壊するのが無理な話だ。 基本ステータスが違いすぎる。



「トもだチだもん!」



馬鹿力での突撃に吹き飛ばされる。 言葉と行動があってねぇんだよ、この鳥頭が。 その突進防ぐ度 に骨がいかれるだろ。

ま、それがティナ堕ちだ。幸か不幸か、ルフの意思が残っている方 がおかしい。



「あ、マタ、ごめん、うぅ、ぼク……」


「ルフ。 いいから、 動くな。 俺が終わらす」


「……ぽク、 また、 死ヌの? こわイ、いやだよ」


「今殺されねぇと何度も死ぬぞ」


「............ ウウう!!」



ルフは甲高く鳴き、無我夢中に暴れだした。 翼を動かせば壁まで叩きつけられ、空中からの突進は剣で受け 止めてなお、アバラがいくつか軋んだ。

鋭いルフの足が肩に食い込む。 間に腕を挟むが、その硬質化した腕ごとメキメキと潰れていった。



「この、馬鹿力、が!!」


「ああああアアあああ!!」



そこで人間の歓声が聞こえる。


その声に、 悪魔のティナが暴れだした。 ほんと、 黙れよ。 人間ども。

俺もギリギリで保ってるっつーのに、 さっきからキャンキャンと…。



「レーくん!! 大変!ともだチ! まもル!!」



そういうときにこのバカ鳥。 急に何をするかと思ったら、足で俺を掴んだまま 投げた。 視界の先に、狐とアラクネ。 その元凶(アラクネ)が蜘蛛の足を振り上げているところだ。


ごく自然に、その首を落とした。


勢いを殺せず壁に突っ込む。 俺を追ってくるルフの姿を見て、ガタガタになった体をなんと か動かした。 狐が動けてない。


あんなのに轢かれたら俺じゃなきゃ体がもたない。 覚醒状態の俺でも骨がいかれるっつーのに。



「ルフ!!!」


「レークン止まラナイ! アブない!レーくン!!」



…..….しょうがねぇ、なあ。


動けない体を翼で動かし、剣を向けてルフを迎える。 切っ先をその羽毛に埋もれた胸に向けて。

あの勢いなら突き刺さるとすぐに理解できた。


破壊はできない。

だからって狐を殺させるわけにもいかない。

だから、仕方がねぇ。


そう思った矢先に予想外なことがおきた。



「うわああああ!」



人間が、落ちてきた。 それも大勢。


ルフの目の色が変わった。 それは自分を嘲笑い、娯楽として楽しんだ人間だ。 顔を見なくてもそれがわかったのだろう。


突進は向きを変え、落ちてきた人間を襲った。


断末魔と狂ったような鳥の鳴き声が聞える。



「…あいつ」


力なく切っ先をおろす。 上を見上げると、へんな髪色のアホが闘士たちを率いて戦ってるのが見えた。 何故かそのなかに情報屋まで混ざってる。



「ゼロさーーん!!」



目が合ったそいつから何が投げられたかと思ったら、煙草と「落ち着け!」 というメッセージだった。



「······ うるせぇよ」



奴隷に闘技場に、貴族に、挙句の知り合いのティナ堕ちだ。 俺だってうまく調整できないときくらいある。

煙草を一息吸う。

これを吸い始めたのも、ルフが死んで荒れたときからだったな



「狐、助かった。ルフに幻覚みせてるだろ」


「… ま、 痺れて、 動けないし。 ほんとあたしは、戦闘向きじゃない」


「動けねぇ体であれができるなら文句ねぇよ」



ルフはいない存在を殺してる。


イリスに投げ込まれた観客は本物だが、 ティナ堕ちの性質がそ れで満足するはずがない。 だから、狐はそこに人間の幻覚でも用意したんだろう。 きっかけがあ れば、幻術ははまりやすい。 ずっとではないが、少し休めるだ けでも助かった。 とにかく、荒れて止まないティナを........。



「アアアアア、・・・・・・ モォ、 失敗ダァ」



狂ったような笑い声。


咄嗟に狐を抱えて離れる。そこには、 あのアラクネがいた。



「痛い、痛イ、 気持ちいィねぇ!ティナ持ちって首が落ちても すぐに死ねなイんだねェ!」



人ではない動きで立ち上がる姿も、糸だけでつながった首もどうでもいい。 俺の目に見えるのは、尽きた魔力だ。

そして背中に動く巨大な蜘蛛が、その女を食らうところだ。



「ハハ、はははははははこうシでティナ堕ちスルの!? やばいやばいやばい! 痛すぎて痛すぎて、 憎くてニククで、気 持ちよくてたまらないよおおおおおおおおぉぉおお!!」



羽化するようだ。


蝕み続け肉を食らい、生まれ出て支配する。 ティナの(さが)のまま。



「ああ。 やっと、 やっと、 楽に、 終わレル・・・」



その言葉を最後に、女は食われた。

戦場も死体も見てきたし、拷問したこともされたこともある。

腐るほど、凄惨な場面は見てきたはずだ。


それでもこの感覚に 寒気が上がって、口が乾く。 これが恐怖か。



「狐、気合で下がれ。 あれは俺が殺す」



それと同時に塗りつぶすかのように沸き上がる“破壊”と“殺戮”の感情。 俺は衝動のままに襲い掛かった。



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