01
「何があった…うわあああああ!!!」
「あ、あれは闇の帝王!?」
「素晴らしい! こんなショーは初めてだ!!」
会場は大変なことになっていた。 運営の人間が現れては斬られ、放り込まれた闘士も一瞬でゼロさんに斬られた。
そのショーを楽しむ観客。
酒と狂気に酔った人間にはこの異常事態すら娯楽の一部なのだ。
次々襲い掛かる敵に拍手と喝采の渦。
ゼロさんが絶対に嫌うであろう環境下で、ゼロさんが優先しているのは、そこにいるティナ堕ちの鎖を壊すことだった。
存在を破壊する、憤怒ではなくて。
「待ってろ。 今、加減が、効かねぇから。 闇は、使えねぇ」
「れーくん、チガう。 もう、ちがう、よ。 ボく、ぼクじゃ、ナい」
「わかってる。 喋んな」
「れーくん」
さっきの試合の勝利者を殺した、矢の雨が放たれる。
居ても立っても居られなくなったリオが飛び降り、同時に火を放った。
それから人が出てくる道を炎で塞ぎ、誰も入ってはこれなくする。
その行為にも、歓声があがった。
「狐」
「いいから。 何でそんなことしてるのか意味不明だけど、ゼロのやりたいよう にすればいいよ」
「……悪、い」
「上の連中黙らせれてくばよかった。 こっから上の階に火が放てない。 魔道具か知らないけど安全対策は済んでるみたいね」
わたしも行きたいけど、流石にこの高さは飛べない。 それに行ったら行ったで邪魔だろう。
あそこは戦場だし、リオの言うように下から上に攻撃できないなら、 万が一何かのために動けるようここにいた方が良い。
観客たちを倒そうにも、護衛が何人もいる。 でも、 だからって見ているだけなんて、できるはずもない。
わたしは関係者以外立ち入り禁止に向けて走った。