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破壊の魔王  作者: Karionette
復興編 第四章 闘技場へ
207/353

03




悲鳴と、人の吠える声と、 狂気の笑い声。


どうしよう。

吐き気がするどころか涙が出る。


メニューの意味はわかったけど、直接目にするのでは訳が違う。


どうして、女の人を切り刻んでるんだろう。 それを見て何が楽しいんだろう。

チップだと、もう死ぬしかないであろう人にお金を投げつけて。

ほんとに、なにが......。


コンと足を蹴られる。 冷ややかな目をしたリオだ。

そう。 わたしたちは見なければならない。


観客で来たのだから、見ないと不自然だ。 今、耳のいいリオと目のいいセロさんが辺りを探ってる。

わたしは怪しまれないように、ほんとなら、きゃっきゃと喜ばないといけないのだ。 ・・・・・・さすがに無理だけど。



「余興は終わりだな」



人一人が惨殺されるところが余興なのだから、ほんと怖い。



「次までに時間があるから、俺は少し歩いてくる」


「あたしは待ってるよ」



二人はうなずく。 うん。なにかわかったのだろう。



「じゃあな」



マスクで顔を隠しているとはいえ、 ゼロさんは正体を隠す気あるんだろうか。

怒気というか殺気というか。 なんか漏れ出てますよ。



「・・・ あたしでも、ああいうの見たら荒れるんだよ。 あいつはもっとでしょ」



リオは小声で話す。

そうか。 だから離れたのか。 赤い眼だったりだったりになると、ゼロさんだとバレてしまうから。


リオも今は尻尾を隠しているし、名前も伏せている。

誰がいるかもわからないところだから、ティナ持ちがいるなんて知れたら、どう なるかわからない。 そのままあの地獄へ突っ込まれることさえ考えられる。



「こんにちは、お嬢さんたち。 見ない顔だねぇ」



きた。 絶対来ると思った。

ゼロさんの言った通りに。



「ええ。 初めて参加しましたので。 妹には少し辛かったようです」


「刺激が強いからね。 失礼ですが、 どういったご経緯で?」


「ティナに興味があります。 なかなかアレを見ることはできませんし、まして やアレに勝てる人間を見ることがないですから」


「それは残念ですね…。 血に興味がおありかと」


「血ですか」



リオは、狐の金色の目を輝かせた。少しだけティナの本性がそこから見える。

興奮と、狂乱の。



「ティナには()()があります。が、趣向は、 別ですので」



息をのんだ。


リオ。リオだめだよ。


性格上そういうことしないから、あれだけど。 リオは九尾の狐だから。 女で、人を惑わすことに、これほど長けたティナはいない。

そしてリオだから、リオの見た目だから、これは、まずい。


話しかけてきた人は一瞬で目を奪われてた。 骨抜きにされたというか、魂ごと引っこ抜かれたようだ。

それほど、なんというか、まずかった。 女のわたしですらまずいと思う。



「そりゃ幻術含めだからね」


「だとしても・・」



何故か個室にて、リオの足元に跪く男×3という構図が出来上がってしまった。 おそるべし九尾。



「貴方のためなら死ねます!」


「貴方のためなら殺せます!」


「貴方のためなら何でもします!」



壊れた男たちの出来上がりだ。 煽ったり恐怖で支配するゼロさんとはまた訳が違う。 こっちの方が見てて怖い。



「そう…..」



口調すらどこか変わる九尾はうっすらと笑う。



「それなら、あたしの、 興味と趣向。 どちらも満たしてくれる?」



こわ!!!



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