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おい、何してんだ。クソガキ。
そう言われた気がしたけど、きっと気のせいだ。
「おじいさん。何があったの?何を助けてほしいの?」
「皆が……女子供が捕まったんじゃ」
「どうして?」
「……私欲を満たすためか、奴隷として売り払うか…。考えたくもないがの」
おじいさんは顔を暗くする。それからぽつりと経緯を話し出した。
町が襲われてから随分日は経っているらしい。襲撃者たちはそこそこ有名な盗賊団ならしく、町の人たちでは手も足もでなかった。町を守るはずの軍人は盗賊と手を組んでいて、兵士は元々ここにはおらず、時々見回りに来る程度。まったくあてにはならないらしい。
そして、盗賊は町の住人を拐い、残ったのは老人だけになった。
「金を支払えば助けてやると言われたが……わしらにはとてもとても払える金額じゃなかった。見せしめのようにボロボロにされた娘を引きずり回したり、手足や内臓のない男の遺体が町に捨てられた。もう……わしは我慢ならん」
おじいさんはボロボロと涙をこぼした。
「そこであんたがたが来てくれた。頼む、わしらの町を……わしの娘や孫たちを助けてくれ!」
必死に頭を下げるおじいさん。
わたしはちらりとゼロさんの方を見た。日陰でうんざりした表情で煙草を吸っている。
うん、無理はさせたらダメだ。
「わかりました」
ガバッと頭をあげるおじいさんより、一瞬の貫くような殺気に息を飲んだ。でも、がんばる。
「でも、お金は払ってもらう」
目を揺らがせないように。
緊張を悟られないように。
「一度だけ支払える金額を言って。その金額が足りなかったら、やらない。足りてたら、絶対に失敗しないとは言えないけど助けにいく」
おじいさんは迷った。目をうろうろさせて、乾いた唇を何度も舐める。
わたしはしばらくして、何も言わずに立ち上がった。
「ま、待ってくれ!」
咳を切ったように口をまわすおじいさん。
「町の資産を!金300を出す!だから、お願いじゃ」
「うん。わかった」
わたしは即座に答えた。
「すこし休んで作戦練ったら、行くね」
わたしはおじいさんを置いて来た道を戻る。
日陰にはもう誰もいなかった。




