02
「たのもぅっ!!」
大声を張りながら扉をあけたのは、大柄な熊のような男だ。
過剰な力で扉はパキリと音をたてて、少しだけゆがむ。
それよりも、そこで待っていた他の人物の表情が歪んだ。
「これはこれは。まさか海賊までくるとはねぇ」
「なんじゃ、蝿か。 お嬢さんと呼ぶには歳がいきすぎるの」
「陸にあがった魚がでかい口叩くんじゃないよ」
古ぼけた酒場で火花が散る。 カウンターの隅では少年がぷるぷると震えていた。
「グリさんはいいよ。 わかるよ。 なんで、なんでも屋さんまでいるのさ」
「なぜかってぇ? それはあいが集めたからさぁ」
「君苦手なんだよ。ほんとに」
「おつかれ様だねぇ。最近イカみたいな魔物に襲われたって聞いたよぉ」
「てめぇ!ヤマトから離れろ!、オレ様が相手してやらぁ!!」
カウンターの反対側では片腕の男がグラスをあおる。
「てめぇら!!どいつもこいつも静かにしねぇか!!!」
「なんじゃ!ハゲ剣士は静かにしとれ!ここは裏側の人間の集いじゃ!表の奴は引っ込んどれ!」
「アタシゃここにいる全員に用がないよ。 さっさと帰んな」
「怪盗ではあるけど、 裏方の人間ってわけじゃ・・・」
「オレ様、 人間じゃねぇんだけど」
「へへへへ。 カオスだねぇ。 楽しいねぇ」
酒場には怒号と怒号、 たまに悲鳴が響いた。 騒がしい夜の音を耳のいい男が聞こえないはずもなく、その男は近づくにつれて徐々に苛立っていった。
男からすると、彼らの声は耳障りな騒音でしかないのだ。
「てめぇら全員うるせぇんだよ!!!!!」
軋む程度で済んでいた扉がついに粉々になって吹き飛んだ。