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破壊の魔王  作者: Karionette
復興編 第二章 リオの過去
193/342

06




「死ぬ気でって…….. 死にそうになったらティナ堕ちするんでしょ?」


「死ぬ気でやってもティナ堕ちすんなって言ってんだよ。 そのラインはもう何となくわかってるだろ」



簡単に言ってくれる。 それは失敗したら終わりじゃないか。



「失敗したら破壊してやるから心配すんな」


「軽々言ってくれるけど、そんなのほんとにできるの?」


「約束は破らねぇよ」



空き地を進む。 木が一本。 ぽつんと立った空き地。

課題はこの木を死ぬ気で1時間守り抜くことだった。 敵はゼロ。 敵は殺しても良いというか、殺しに来いと言う。


いや、無理だろう。 相手は闇の帝王で百戦錬磨だ。 千戦錬磨かもしれない。

対してあたしは、街の子供と殴り合いすらしたことないんだから、能力は扱えても戦うということの能力が低すぎる。

となると、戦うよりも守るを優先。 生き残ることが優先か。 確かにあたしは殺したい相手がいるわけでもないんだし、 そっちの方が心構えとしてはいいかもしれない。



「来いよ、 狐。 武器は使わないでおいてやる」


「あたしが勝ったら名前で呼んでよ」


「あ?お前も俺の名前呼んでるわけじゃねぇだろ」


「知らないんだからしょうがないじゃん」


「そりゃそうだ」



クックと笑ったゼロは一直線でこちらに向かってきた。


固い拳から放たれた打撃を直前で回避し炎を放った。



「あたしに攻撃してくるの!?」


「そりゃあ敵だからな!」



にやりと笑うゼロは、どこか楽しそうに見えた。 戦闘のせの字も知らない初心者をいたぶるのがそんなに楽しいか?


…..…いや、違うか。


ゼロにとって戦うことは生きることで、戦って遊ぶのが初めてなのか。


なんというか、本気でやろうと思った。


まずはゼロの機動力を奪うために、空中にも大地にも炎を駆け巡らす。

飛ばれたら手が届かない。


ゼロの顔が炎で青く光った。



「空を燃やせるのか。 お前、器用だな」


「さあ。もうできないからって嘆くのが嫌だし、やってみるだけ損じゃないでしょ!」



そして夜を明けさせた。

真っ赤な太陽が降り注ぎ、撒いた炎が姿を消す。



「だから、できないって思うのやめてみた」



こうなったら勝ってやろう。そう思って尻尾を叩きつける。 拳で殴るよりも、足で蹴るよりも、今のあたしの体の中で一番強い場所だ。

とはいってもあのゼロに通用するわけない・・と思ったら、



「え」



直撃したゼロは吹き飛んで、一本立っていた木をへし折って止まった。



「………え!?」



駆け寄ると、額からダラダラと血を流しながら茫然とするゼロがいた。 まさか怪我させることになるとは思わず、 服の袖で血を拭う。 そこで自分の恰好まで変わってることに気づいた。 ティナになったとき、勝手に服は装備されてたけど、見た目まで勝手に変わるのか。



「…..... お前」


「は、はい」


「わざとか?」


「いや、なにが?」


「….俺は太陽が弱点なんだよ」



ゼロは笑っていた。いつも口を歪めるだけだが、それよりも温度のない冷たい眼で...。 思わずぞっとして飛び退()いた。



「ん。 能力よし、俺を飛ばした膂力よし、近寄ってきた速度よし、危険(さつい) から逃れる感性よし。

合格だが、守るべき木をへし折ったらだめだろ」


「だとしても、あんたがあたしなんかに吹き飛ばされたらだめでしょ」


「確かに油断したな。 まさか太陽が出てくるとは······一瞬感覚が死んだんだが 、よくよく見ればこれ幻影かよ」



あたしはただ、夜中の炎より日中の炎の方が見えにくいから、効果があると思っただけだ。 ゼロに対する太陽効果なんか知らない。

そんな殺気漂う表情をさせたいわけじゃなかったのに。

無論、怪我なんてもってのほかだ。



「でもお前の負けな」



ゼロが闇を放つ。 すると太陽の幻影も炎も、食われていくかのように壊れていく。 あたしが着々とやってきたことを、紙でも破くかのように簡単に。


反則だ。 ゼロの技は異常すぎる。



「ずるい」


「ずるくねぇよ。 俺の魔力量が異常だからできるんだよ」


「その魔力量がずるい」


「そう言われたらおしまいだな」



笑いながら煙草を咥える姿を見ながら、 自分にあきれてため息をついた


ずるいずるいと言っても、常識すら壊さなければ生きていけなかったゼロに、何を言ってるんだか。


翼のない悪魔のティナ持ちは、あたしほど安定はしてない。

荒ぶる覇力をそれ以上の魔力で押さえつけてるだけだ。

波が立っていないわけじゃない。


選ぶことのできないティナで、 恵まれてるのがどっちかなんて馬鹿でもわかる



「できねぇのが嫌だから、か」


「ん?」


「そういう考えは嫌いじゃねぇよ。 ティナ持ちになったら、できないことのが多いからな」


「まーね」



怪我をしたゼロだが、ティナ持ち特有の回復力で傷はすぐに塞がり、 本物の太陽を浴びたわけでもないから特に異常はなかった。



「今日で終わりだ。お前なら大抵のことで堕ちたりはしねえよ。 最後のテストはおっさんが断固拒否でできねぇし、まぁしなくても日常を生き るなら問題はねぇだろ」


「最後のテスト?」


「死にかけるまで拷問」



うん。却下。



「ティナの声が煩く感じる、人を殺したくてしょうが なくなる、お前なら狐って生き物の要素が強くなる。 それがティナ堕ちが進んだ証拠だ。 危ないと思ったら俺を呼べ」


「うん」


「勝手に死ぬなよ。 そのティナの能力が敵に回ったらめんどくせぇ」


「わかったよ」



別れもそこそこに、ゼロは片手をあげて夜闇に飛んで 行った。 なんとなく、そうするだろうなと思ってたから悲しくはなかった。


翌朝。

なんだかんだで気に入っていた父さんがしょん ぼりと落ち込み、大量の食事を用意した母さんが絶句 して立ち尽くしていた。




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