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破壊の魔王  作者: Karionette
復興編 第二章 リオの過去
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04




「話が違う!娘を救ってほしいと私たちは依頼したはずだ!」


「救うってのが、殺すことか壊すことか生かすことか。 どれをとるのかは俺の判断だ」


「ティナの力を使えばティナ堕ちが進む! その力を何故使わせたんだ!」


「それもそれで必要なんだよ。 生かすなら、 な。 殺すならいらねぇんだけど。

いいからその銃置けよ、ガリ医者。 家にいれろ」


「というか何故!闇の帝王だろ、君は!!」


「ティナ関連の処理が俺しかできねぇからだよ。いい加減にしねぇとその銃へし折るぞ」


「というか君そんなに若いのか!!!」


「いいから置けって言ってんだよ!!」



というやり取りを最後に、宙をぐるぐると回る銃。 それが、ぼんやりとした目に映った景色だった。


なんだろ。この脱力感。 魔力使いすぎたのか。



「いいか。俺が殺すのは、ティナ堕ちしてるやつと、ティナに抗えないと判断した奴だ。 死にたいだとか、殺して欲しいって言うなら、手を貸すこともあるが、敵じゃねぇ限りは基本、破壊(ころ)すつもりはない」


「じゃ、なんで娘に力を使わせた?」


「これからも生きていくなら何ができるかできないか。 暴走しないためにどうするか。 人間が力加滅を覚えるみたいに、ティナも知る必要がある。

お前らのせいだぞ。甘やかしやがって。 鳥を籠で飼ってるんじゃねぇんだ。 何もしない、何も知らないまま、生きていける程甘くねぇんだよ」



押し黙る父さんと、心配そうな顔をしたままの母さん。 動こうと思ったけど、うまくいかない。


というか、家の中ですらなくて外か。

家に入る前に、父さんたちが立ちふさがっていて、あたしはこの男に抱きかかえられてるらしい。



「~~~っつつつつつつつつつつつっっ!」


「おい、 暴れんなって。 魔力使いすぎてんだからじっとしてろ」


「は!放して!」


「娘を放せええええええ!」


「お前はまた銃を構えるなって…….」


「と! 父さん!?大丈夫だから銃はやめて!」


「嫌がってるだろおおおおおおおおおおおお!!」


「どーせ俺が放して地面に落としたら、お前キレるんだろうが…」



そんなこんなでちゃんと話しをすることになった。


家に入ったものの、あたしは座ることさえできなくて傍のソファーに転がされた。

父さんはまだ銃を手放さないし、母さんはお茶をだした後は、あたしの近くで震えている。

余裕な表情をする男、闇の帝王ゼロだけは、机に足を投げ出して悠々とお茶を飲んでいた。



「いいな。 ゼ口くん。 私は娘を助けるために銀の連合に依頼した。 報酬先んじてお渡しした。それで間違いないね?」


「ああ」


「嫌がる娘を抱き抱えたのも!その一巻ということで!いいんだね!!?」


「….…根に持つなよ、おっさん」



父さんは非力で頭しかよくないけど、こういうよくわからない強さがある。


実際、母さんよりひょろいんだし、 そうじゃなくても、闇の帝王なんかに勝てる見込みはないのに。



「さっきも言ったが、俺自身が破壊する方を選ぶのはティナ堕ちが見えたときだけだ。 こいつは見るからに安定してる。 俺よりもな。 だから俺には殺す選択肢は今のとこはない」



ちらりと赤い眼がこちらを向いた。



「敵になるなら別だがな」



なるわけないだろ。



「で、生きる方を選ぶなら、この先も長生きしてもらわないと困る。 それが俺にとってのメリットだしな」


「メリットとはなんだね?」


「知っての通り俺には敵が多い。 面倒なティナ持ちの敵をこれ以上多くしたくねぇ。だから、敵にならないティナは俺にとっては貴重なんだよ」


「成程・・・。君の理屈はわかった。

だが、長生きすることを望むなら、力を使わないで済むのが一番だろう。私は間違っているのか?」


「それも間違いじゃねぇけど、ティナってのはそう単純じゃない。 どうやっても人間を殺したい衝動があるし、 感情がある以上、勝手に心理的にブレて崩れる時もある。

ただ生きていてほしいなら、植物人間状態にしとけばいい話だ。 そうしたいわけじゃねぇだろ?」


「……もちろんだ」


「だから理想は、力を使っても変化のない状態を保つことだ。

一切ブレないでいること。 衝動に駆られようが、死にかけようが、 目の前で誰かが殺されようが、だ。

お前らがやってた、無知のまま死ぬまでやり過ごすことも間違いじゃねぇだろうが、何かあった時には抵抗することもなく堕ちて、 死ぬまで暴れるが、周りを殺し尽くして終わるぞ」



さっきみたいに制御できずにな、とゼロは続けた。

目線は父さんからこちらへ向いている。



「あとは、 お前が決めろ」



刃物を思わせるような鋭い眼。

同じ年くらいのそれに負けたくなくて、あたしは弱った体で必死に 睨みつけた。



「ティナを持った時点で、周りを殺す危険はある。 普通の死に方はできない。挙句生きていても、ずっとティナに抗う人生になる。それを踏まえて、どうするかはお前次第だ」



生きていれば、誰かを殺すかもしれない。

生きていても、 苦しいことばかりかもしれない。

それなら死んでおこう…というのも理解できる。


でも、あたしは・・・・。



「何もしないのも、 できないのも、するのをやめるのも、もう嫌だ」



あたしの言葉にゼロはにやりと笑った。



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