11
早朝。
夜は終わり、空は白んでる。
町に着き次第簡素な宿をとり、ガキは一つしかないベッドの上に人形のように座っている。俺はとりあえず邪魔な装備を放って外に出た。
まだ店が開くのは早い。物を集めるにも、飯を食うにも早すぎるが、町に邪魔な奴がいないかを調べにきた。
町の中心。
大抵、そこには教会がある。
ティナの性質上、俺はそこには入れねぇんだが、この小さな町には小さな噴水があるだけだった。一応、神を祀った世界樹の紋章が入ってるが、これくらいなら特別影響もない。俺は目を閉じて、町の魔力を探った。
……………まぁ問題ねぇな。
特別、戦闘力があるほどの魔力は感じないし、軍の詰め所も形だけで機能してない。暗殺者系がいたら面倒だが、まぁ確率的にないな。ごく普通のド田舎と考えていいだろう。
「問題はありそうだがな…」
まぁ、んなこと関係ない。どうせ、長くいるつもりはねぇし、さっさとずらかれば何の問題もないだろう。
それにアガド牢獄で暴れたあとだ。あんな失態を公にするはずはねぇが、秘密裏に動く奴らはいる。どっちにしろ長居はすべきじゃねぇな。
「おや。見ない顔ですね?」
視線を向けると、折れ曲がった腰を杖で支えながらトボトボと歩く老人がいた。俺からすると、不気味なほどの柔らかい笑顔を携えている。
「まさか旅行じゃないでしょうから、お仕事かなにかですかな?」
「そんなところだ」
「それはご苦労さまですねぇ」
闇を追い払うかのように現れた太陽は、目を焼くような光で空を差す。
うわぁ…………。もう寝よう。
「いい天気になりそうですね」
「…………」
俺は黙って立ち去ろうとした。
老人がそれを細い棒で制す。
「た、助けて、くだされ……」
めんどくせぇ。こういうのは、うんざりだ。
「自分で何とかしろ。お前の町だろ」
細い杖は何の制止にもならず、俺はそれを足で払って前に進む。もう日の出だ。さっさと寝るに限る。
と、思ったら見慣れた猫が横を通りすぎていった。
「その話、詳しく聞かせて」
白猫はそう言った。