02
あたしには姉がいた。2つ年上の優秀な姉だった。
魔法は赤と黄の2属性持ちで、家業である医者の勉強もできた。 それでいて優しくて、優しいけど厳しくて、 周りからの評判も高かった。
対して、あたしは持っている属性は風の一つ。
あまり人付き合いも得意ではなく、話しかけてくる人物を睨むのが日常だった。
「リオはかわいいんだから、もっと愛想よくすればいいのに」
そう、 姉にはよく言われた。
あたしは姉に憧れた。
最大の目標で、 追い付こうと努力をしてきた。 それも性格が邪魔してうまくいかない。 それに、姉も同じように努力するものだから、差が埋まることはなく、姉を超えることはできなかった。
そんな中、 転機となったのは、大雨の降る夕食の日。
「家を出る」
姉はそう言った。 完璧だった姉には恋人ができたのだそうだ。
紹介されたその相手は荒っぽく、それでいて力もなく、言葉はただただ乱暴でどうしようもない人物 だった。
父さんと母さんは止めた。
付き合うなとまでは言うつもりはない。だが家を出るには早すぎると。
姉は当時16で、結婚はできる歳でも生活力のある歳ではない。 それでも姉は譲らず、挙句家出をした。
あたしたちを置いていった日だった。
「まぁそれだけなら、なんともないんだけどさ」
3か月ほど経った日、 一人の女性の遺体が見つかった。
化粧に派手な格好。 痩せこけて、注射の跡を全身に残し、腹に子供を入れたまま死んだ女。
それは姉だった。
見るも無残な姿になった姉だった。
「その時、ティナ持ちになった」
男を選んだことや、馬鹿な真似をしたことを恨んだのか、 完璧な姿しか知らなかった時に絶望したのか、目標を失って自分が壊れたのか。 ぐちゃぐちゃな想いはティナの憎しみに塗り替わって、 全てを抑え込んだのに残ったのは、空虚だった。
「姉をクスリ漬にして子供まで孕ませて、挙句殺した男たちは、きちんと罪人として処理された。父さんたちは至って普通の人だから、殺すとか復讐とかもなかったよ。
それよりも、 あたしがこんなになったから、そのための お金のこととか引っ越しとか。 そっちに全力を注いでくれた」
家を引き払って山奥に引っ越し、誰の眼にも止まらないところで薬を作って生活した。
あたしは空っぽになったままだったけど、機械のように薬だけ作って親を手伝ってた。
「いずれティナ持ちは堕ちるし、 力がある以上軍や賊に狙われる。 両親 が銀の連合についてどんな手を使って調べたのか知らないけど、こうしてつながったんだ」
あの日。
夜中に強烈な殺気を感じて飛び起きた。
ティナ持ちになったせいで、 感覚は鋭敏になり、身体能力は 異常に感じるほど向上している。
何が相手でも、父さんと母さんは守らないと。 その一心で 飛び出した。
その先には鋭い紫色の眼をした男がいた。
それがゼロとの出会いだった。
少し夏バテ気味で少々更新おやすみします
お待たせしてすみません……