08
銀は天才だ。
いや、人間じゃないんだから、天才という表現自体間違っているのかもしれないが、とにかく、通常とは逸脱した頭をしている。
だからこそ、あいつの作ったこの街も異常な街にはなったんだが、あいつにも欠けてるものはある。 発想力というか想像力というか。そういうもんだ。
ルナティクスを作る前は、 あの人間じゃない生き物軍団をただの島に隠していた。
単純に人目につきにくい場所を選んだだけで、その隠すための技術は異常だったが、根本にある隠し方は安易すぎる。
ただ物陰に隠しただけ。その物陰が異常なものでも、そんなやり方は大事なものを目につ かないところに置くガキのやり方だ。
まぁ要するに、あいつには発想力がない。
ないというか、少ない。
こっちが考えて望めば、願い通りのものを作る技術はあっても、それを発想するには至らない。その発想力が人間の強みだとかなんとか言っていたかな。
「だからゼロさんが作るの?」
「俺は作れはしねぇけどな」
俺は技術云々を抜きにして、 破壊の性質のせいで何かを生み出すことはできない。 改造ならできなくもないが、 どちらかというと改悪だ。
改造して性能あげても、その後す ぐに壊れる羽目になる。
だからこの街も、あいつの要望をもとに俺が考えて提案して、 あいつが作った。 だから、 俺は俺が作ったわけじゃないと思う。
生き物を隠したい。
なら絶対に目につかない場所へ
その場所へ隠すための方策を俺が考え、それに必要な素材の収集方法も考えて、 俺が出した答えをあいつか叶えて・・・・・ まぁそんなかんじのやりとりで出来たのがルナティクスだ。
結局、俺の仕事は前とそう変わらない。 現状を見て労働力どもに指示しながら考えて、工夫し構築して、 仕組み上で必要なものを銀に要請すればいい。
あいつなら無茶苦茶なことを言っても大抵なんとかできる。
「まずは労働力の確保だな」
「そんな方法ある?」
「ルナが脱獄囚捕まえてくるのも、すぐにとはいかないしね」
いやいや、目の前にいるだろ。 死屍累々となった無気力軍団が。
狐は使えねぇって判定だったが、 生きていて働く以上何かの労力にはなる。 問題はそれをさせる方法だ。
力で制圧するのが一番ラクだが、暫くは「ゼロ」の名を出す気はないし、力での脅しだと効率が悪い。
いちいち脅すの面倒だし。
加えてビビリながらやる仕事じゃ性能も望めない。
結果、悪手。
だから、武力行使は却下。
「じゃあどうするの?」
「人心掌握」
悪魔が言うと意味合いが違ってきそうだな。