07
ゼロに抱えられて揺らされぶん回され、 暫く続いた破壊活動は外に出てやっと止まった。 ティナ持ちのあたしがこんなに酔いそうになってるのに、イーリスはケロッとしてる。
なんか悔しい。
やっと降ろしてもらったのに立てもしない。
「ふわぁー。 エデンの屋根の上は初めて来たよ。 高い!」
「いつもなら絶景スポットなんだけどな」
エデンというのはこの街の最大施設のカジノの名前で、銀がここを拠点としていたことも あり、街の中心を担う施設だ。
ゼロがあれだけ破壊しても倒壊しないくらいに丈夫な建物だ…ということは今知ったんだけども。
目下の街は閑散としているどころじゃなくて、もはや廃墟のようだ。
営業している雰囲気の店はない。
街の復興よりも相手の復讐に走った人が多かったということで…まぁルナティクスらしいといえばルナティクスらしい。
「………最悪だな。 ほんと1からやらねぇと」
そうは言うが、復讐を煽ったのはゼロだ。
「そういえばリオのお父さんたちはどうしたの?」
「無事だよ。 でも、ルナティクスじゃないところに逃げてもらってる」
「まぁそれがいいよねー」
今ルナティクスに残っている人は、ゼロの声でも活力が出なかった無気力者か、ほんとに何もできない無能者だけだ。 少なくともあたしにはそう見える。
連合の人なわけないし、 エデンで借金でも作って、ここから出ることすらできない、救いようもなくなった底辺な人間だろう。
ああいう人間は死んでもいいと思うのは、あたしがティナ持ちだからだろうか。
「バーカ。 ああいうのは使えるんだよ」
「え」
心読まれたらしい。久々に。
「何もすることがねぇ奴はただ空っぽなだけだ。少しつついてやれば、堕ちてくれる」
…………どこに堕とす気なんだろう。 悪い顔してる。




