02
「ルナティクスって銀さんと二人で作ったんだったよね?
「俺は提案しただけ」
あーあ。くっそめんどくさいことになった。
病み上がりを働かせんな。
「お前もウラガとかいう奴を探そうとしてたのにな」
「うん。 でも銀さんが情報を探してくれるって約束してくれた。
わたしの手がかりも、 ルークさんが言ってた “生きてる”って言葉だけだったし。 ちょうどいいのかもしれない」
今更急いだって仕方ないし。
と、桃金色の髪を揺らしてイリスは笑った。
俺が目覚めたばかりのとは真逆だ。
あのグダグダした雰囲気はもうない。
今のコイツは楽観的になれるくらいの余裕があるらしい。
「でも実際どうするんだろ? わたしには何ができるかなー」
「どうせお前は食い物作ってばっかりだろ」
「うぐっ」
ほぼ廃墟となったあの場所で、 俺ができることも整地くらいなんだけどな。 家を建てるなんか無理だし。
つーか、ルナティクスにいた奴らもどうかしてる。俺が煽ったとはいえ、復讐に駆られて家を戻すことを忘れたか?さすがに手をつけ無さすぎだろ。
「ゼロさんはどうするの?」
「俺は基本破壊行為以外は何もできねぇから、瓦礫壊したら休む。さすがに3か月動かしてない体は、借り物みたいで気持ち悪いし、これから動かすためにも慣らさねぇと」
というのはただの文句。
本当はあの力を使った後だから、何もしたくないというのが大きい。
本気で死ぬつもりだった。 死ぬつもりでやった。
今までもこうしたら死ぬかもしれないだとか、こうなったから死ぬ可能性が高いというこ とは腐るほどあった。
が、あれは死ぬとわかってやったことだ。
言葉のあやだとか冗談じゃなくて、 本気で死ぬ気でやった。
だからか。 少し、あれからティナがうるさい。
というか、あの時使ったのは全ての魔力だ。生命維持のための魔力も含めて。 使ってはいけない力で使えない力 で、使えば精神的に死ぬ力だ。
正直なんで生きてるのかもわからんし、生きてたとして、俺の意識があるのも、ティナ堕ちしてないのも、理屈的には理解できない。
そんな状態で、今の俺が本当に問題ないのかがわからない。
せっかく生き残った挙句が、ティナ堕ちじゃ笑えねぇからな。 ちょうど世間でも死んだことになってるなら時間がある。
「少し調整してやらねぇとな」
「また自分をみたいに言うんだからー!」
まずは力を完全回復させよう。 そのためにも日が昇らないルナティクスが俺としても都合いいといえば都合がいい。 魔物だらけの場所じゃの俺の性格上休めねえし。
「ゼロ」
狐の尾が9本、現れた。
軽く俺の体を診てもらったが、 なんだその顔。
「リオ、どうしたの?」
「いや、ごめん。 体は大したことないというか、傷自体は完全回復してるんだけど…」
「あ?じゃあ何だよ」
「......... さっき、 銀に手渡されて…」
すっと羊皮紙の束を差し出す。
それには...いや、あいつホントまじか。
そんなにキレてんのかよ。
「ごめん。 休みたいって言ってたけど、 たぶん無理」
渡された羊皮紙は、今回脱獄したアガドの罪人たち。
しかも全員 「捕らえてこい」 だ。
「くそ野郎」
俺が言ったことだ。 街を作るなら最初は労働力だと。
言われた通りに、とてつもなく面倒な労働力を取りに行けという指示ならしい。
ああ、これも言ったな。
お前は指示だけしてろって。
「…過去に戻ってあの時の俺を殺したい」
「いや、過去戻れるなら無くなった記憶見に行きなよ」
はぁ。
こりゃ隠せないな。
体がおかしいってこと。 本当に調整が必要だってこと。
いらん情報は伝えるつもりなかったんだけどな。
…あいつ。 まさか俺の口から言わせるためにこうしたんじゃねぇだろうな。
「銀は、裏のルナティクスにいるから」
「了解」
あー…… めんどくせ。