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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第六章 終結
175/342

03




そいつには、悪魔の翼もなく、昔の目…空色の目をしていた。

そして妙に無表情な"俺"は、その腕から見たことのない魔法を放った。


咄嗟に避けたが、なんだ。あれ。

俺が魔法使ってるなんか違和感しかねぇんだけど。



「消えろ」


「あ"?」



無表情な"俺"は言葉を続ける。声まで一緒とかホント気持ち悪い。



「お前じゃ足りない」



………意味がわからねぇ。

いや、これを設定した白蛇どもが馬鹿か。


よくある話だよな。

試練のためとか、自分を超えるためとかで己と戦うって。


こいつ俺じゃねぇよ。俺の姿を模してるだけで、全然違うじゃねえか。



「めんどくせぇな。意味わからねぇけど、こいつ殺せば終わりか?」



武器(えもの)がないのが面倒だが、この際仕方がねぇ…。って、なんだよコイツ。剣持ってんだけど。


まぁしゃあない。ない物ねだりはやめるよう。

ティナの力は問題なく使えるみたいだし、魔力だって正常設定ならしい。


腕の悪魔化を行う。自分を殴り殺すなんてナンセンスだが、この際仕方がない。



「死ぬべきだった」



"俺"は、無感情に言う。



「それでも死ななかったのなら、俺が責任をとらなければならない」



…意味がわからねぇ。


まぁいいか。攪乱するのが目的だろ。精神的にも強くなりなさい、ってかんじで。


俺にこれ以上精神強化する意味あるか?ねぇだろうよ。



「つべこべ言わずにかかってこいよ」



そのつもりだと言わんばかりの重い斬撃。


構えもなんもなしでこの威力か!受け止めた腕が、一発でヒビが入ってんじゃねぇか。



「~~~~~~っ、おもしれぇ!」



空を飛ぶ。闇をためる。

"俺"は風の魔法で一瞬で間合いをつめてくる。


斬撃、斬撃、斬撃。


打ち合うたびに悲鳴をあげるのは俺の腕だ。


死角から蹴りを放つも、流れるように躱され、発動の予備動作なく火炎の魔法が全身を包んだ。


…こいつ、どうやって魔法使ってんだよ。


魔力がほとんど見えない。動きもない。予測は無理、か。



「その様子だと、お前は俺の魔力が見えてんのか」



さっきから先読みされてる。気分悪いことこの上ないな。


あっちの返答は降りそそぐ雷。


おいおいおい。剣を作ったのは橙、空を飛ぶ緑、炎の赤に雷の黄か。水だけ使えない、なんてことはなさそうだな。

全属性持ちで剣の扱いもできて、魔力まで見える上にコイツ自身の魔力は見えない。


んな奴いねぇだろ!

夢幻とはいえ常識飛ばしすぎだ!

白蛇2匹、あいつらホントふざけてんだろ!



「もう、ほんとめんどくせぇ。殺す!」


「同感だ。消えろ」



魔力は抑える。悟らせない。破壊をぼんぼん撃って殺すのは難しいだろう。嫌でも魔力で悟られる。


相手の剣を制し、魔法のみ破壊で防御。

要は肉弾戦。


今まで俺と戦ってきた奴の気持ちが初めてわかった。なんだよ、この先読みだらけの試合。


重い斬撃がくる。


躱し、振り返って一撃。防がれる。もう一度。足元から刃が飛び出すが即座に破壊。


剣が肩を貫く。拳を叩き込む。防がれたが腕の骨くらい持って行けたか。


離れた隙に剣を破壊しそのまま空へ。一瞬で魔力を満たし、覚醒状態となった。



「沈め」



"俺"の周囲が陥没する。体勢は崩れるも"俺"は倒れない。

それどころか炎が陣を描き、技の発動が消えた。


くそ。魔法陣も扱えるのかよ。しかもあんなに早く…いや、予測してたか。にしても早い。


俺も破壊を放つ。設置されていた爆発魔法を発動前に破壊した。

赤と橙の組み合わせか。魔法陣まで使えて、2属性魔法も即座にできる、か。


流石に手こずりそうだな。



「覚醒状態のみに可能な重力操作。魔力を見なくてもわかる」


「へぇ。俺のことはお見通しか?」



すっげぇ腹立つ。

次々と放たれる攻撃魔法を破壊。


間を詰めて凄まじい速さで襲う剣を足で押さえ、拳を固めて鳩尾に突き刺した。



「…」



顔色一つ変えずに、腕を切り落とそうと振りかぶる"俺"。

更に前に出て、俺の腕を取り押さえる。


そしてその腕を握り潰し、関節を固めるが、ぱきんと"俺"は腕の関節を外したらしく脱力する。

その脱力した腕から魔力が迸った。


まずい!!


全身を雷が貫き、氷の槍が降り注ぐ。

体に突き立った氷が体の内部へと電流を伝えていった。


血を吐き出す。

こいつ中だけ潰しにきやがったか。



「弱い」



強烈な蹴りが心臓付近へと突き刺さり、俺は泉まで吹き飛ばされた。


翼を広げて静止するも傷が深い。

魔力を総動員させて治療にあたる。


あっちは鳩尾に一発と腕の関節が外れただけで、腕に関してはすでに嵌めなおされてる。

で、俺はこの様か。さすがは"俺"。強いな。



「…お前、俺なのに魔力量が違わねぇか?」


「お前は失敗して、俺は成功している」



なんだよ、それ。腹立つ言い方だな。


俺を強化した"俺"と戦う遊びだっていうなら、ちょっとやりすぎなくらい差があるだろ。


つーか俺より魔力が多い奴って初めて見たな。



「お前は弱い」


「は。俺が何いってんだ」


「弱い。だから不要だ」



ほんとむかつく奴だな。

俺は久々に1対1でまともに相手できる人間に、少し楽しくなってきてるっつーのに。



「ゴアアアァアアアアァアアアアア‼‼‼」



そこで、不相応な咆哮が轟く。


うるせぇなとそちらを向くと、ばっさばっさと翼を動かしてるのは誰もが知ってる生き物だった。


脚のある蛇じゃなくて、翼のあるトカゲ。

つまりはドラゴン。



「ガァオオオァオオオオ!!」



俺と"俺"は同時に動く。

闇を渦巻く俺と、赤と黄が混ざる"俺"。

拳と剣が交差した。



「うるせぇな!!!」


「邪魔をするな」



同時に両サイドから攻撃を叩きこみ、翼のあるトカゲは咆哮のエコーと血しぶきだけを残し姿を消した。


あ?なんだよ。ドラゴンってそんなもんなのか。やっぱ飛ぶトカゲだな、ただの。



「…ダメか」


「あ?」


「不可能は不可能なままということか」



は?どういう意味だ。



「お前は弱い」


「おいコラ。さっきからいい加減にしろよ」


「弱いが、お前は俺だ」



そして"俺"は目を閉じた。



「頼んだ」



その瞬間視界が暗転する。

広い風景は覆り、暗闇が訪れた。



「……」



で。ここはどこか。


冷たい、水か。


息はできる。…その時点で銀の仕業か。ついでに体を確認したが無傷。


やっぱ夢かなんかっていう扱いか。いや、あの内臓ダメージはやばかったから、夢で助かったな。


俺は泉の底から体を起こし、地を蹴った。

翼を広げて更に上昇を続ける。

泉から脱出すると、目の前には、見慣れた変な髪色があった。



「……よぉ」



新緑色したその目から雨が降ってきたのかと思うほどの滴が零れ、そのせいで声も出ないようだ。


そしてそいつは、そのまま飛びついてきた。

躱す。勢いを殺せず泉に突っ込んだ。



「死にそうになったら助けてやるよ」



イリスはごぼごぼと溺れながらも泣き続けていた。




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