02
何度も見る夢。
白銀の少女が、泣きながら手を伸ばし。
俺はそれをつかめなくて、そのまま世界が砕ける夢。
なんて言っていいかわからない感情に呑まれる。
あの不快極まりない夢。
それに加えて今度はなんだ?
なんか、引きはがされるような感覚。
痛いのかどうかもよくわからん。
なんとなく、奪われる感じはする。
千切れて、砕けて、盗られる。
ふざけんな、止めろ。
どこまで俺から奪えば気が済むんだよ。
とにかく守る。
奪わせないように、とにかく耐えて耐えて耐えまくって……。
それが今、突然終わった。
少女も、俺を閉じ込める何かも、大量の水に流される。
俺も流されているような気がするが、不思議と焦りはない。
なんというか、転移するときと似ている。
…………と思ったら急に地面にぶつかった。
「………いってぇ」
あ?なんだよ。痛いってなんだよ。声も出るのか。
手も足もある。翼を出したら翼もある。水面に移る姿も、俺だ。
…まぁあの状況だ。俺は死んだとする。というか死んでないとおかしい。
それで?死後の世界ってこんな大自然が広がってるのか。
広大な平原に透明な泉。
生き物が走り回り心地よい風も吹いてる。
なんかよくわからねぇが、平和だなってかんじ。
俺は死んだら、まぁほぼ100%地獄行きだと自負していたが、これが地獄か?嘘だろ。
「じゃ、死んでねぇのか。白蛇か、銀か。何しやがったんだ」
死にかけてる人間にとんでもないことをするよな。人間じゃないやつらって。
ほっとけよ。安置してろって。
遠慮もなければ、同意を求めもしねぇのか…。
絶対楽しんでるだろ、あいつら。
「ま、繰り返し繰り返し同じ夢ばっか見るのも飽きたしちょうどいいか」
とは言ったものの何すりゃいいんだ?
夢か幻かしらねぇけど、徹底的にあの走り回ってる生き物を切り殺せばいいんだろうか。
何かをぶっ殺せっていうならあるもの全て壊していくが、それじゃルール違反か?
ち。ルールのねぇゲームほど面倒なものはねぇな。
遊ぶのは嫌いじゃねぇけど、これじゃ遊びにもならん。
風景は動いても変わらないし、変な生き物どもも、一定の法則で走っているだけでこちらに見向きもしない。
なら動く必要もないか。景色も生き物も、単なる背景だってことだろう。
じゃあ、とりあえず後ろのこいつと戦えばいいのか?
「それとも、お前を殺すと俺は死ぬのか?」
俺の視線の先には、"俺"がいた。