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「いやだ!放して!!」
『無駄だ。静かにしていろ、イーリス』
「ゼロさんが、ゼロさんがまだ中にいるんでしょ?生きてるんでしょ?なんでこんなところで…」
『たとえクガネが無傷とて、あの崩壊のなかでは間に合わない。お前が行ってもどうにもならん』
「だからってじっとしてるわけには…」
『わからん奴だ。他者の協力で助かる命ではない。
あの破壊の方法を見ろ。とうに限界を超えて、生存のためにある魔力を燃やしている。もう欠片も体に力はないだろう』
「でも死んでない!死んでないよ!あのゼロさんだよ?死ぬわけ…」
『そうだ。今は死んではいない。あいつの性格だ。あの建物を瓦礫の山に変えるまで心臓は動いているだろう。だが、それだけだ。助からん』
「そん、な…」
『あの魔力は、生命維持のために本来なら利用することのない魔力だ。あれを使おうとして使えるのは、恐らくゼロしかいない。それを行うほど、あの場所を破壊することには奴にとっても意味があるという事だ』
アガド牢獄を飲み込むように、絡みつくように、絶対に逃がないと言わんばかりに破壊していく。
あんなものは見たことがない。禍々しく、悪魔らしい。
ゼロ、お前は何故死を選んだのか。
イーリスを縛る鎖を壊すために、何人もの命を犠牲にして自分さえも厭わないのか。
『助けにいくことはゆるさん。イーリス以外の者もだ』
可能性が1%でもあるなら、私とて救いに行く。
あいつの存在は私にとっても小さくない。
だから邪魔はさせない。
今の状態を、誰にも見られたくはないはずだ。お前ならば。
『今は、見守れ』
だが、願わくばその塔から飛び降りてくれ。
私がすぐにそこへ行くから。