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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第五章 アガド牢獄
168/342

20




「い、今のは…」



ルナはつぶやく。

わたしは、何も言えなかった。ただ、ぼろぼろと涙を落とす。


こんなに離れていて、あんなに傷だらけで、それでもわたしを守ってくれるのか。


わたしは、道が見えなかった。どうすればいいのかもわからなかった。


だから強制的に乱暴に、ゼロさんは道をひとつに絞った。ただ生きるという道だけに。


他の道は面倒だからって、すごいわがままな理由で、一番ゼロさんが大変な方法で、ゼロさんらしい方法で。



「!!わっ」



足元にヒビが走る。どろりと黒くて濃い、水のような闇。


それが染み渡るように広がり、破壊し、部屋を埋め尽くす水もそれに飲み込まれていく。


そして、静かになった。



「イーリス!掴まれ!クガネ!お前もじゃ!」



ルナの翼がばさりと開き、血のベルトがぐるぐると巻きつく。

クガネも察したのか、手足をルナに巻きつけて、尻尾はわたしの胴を巻く。



「おれがあいずする!10だ!」




地震だ。ぐらぐらと足元が揺れる。

破壊された水よりも、大量の海水が地面から吹き上がった。



「3.2.1…いまだ!」



わたしは息を止めた。一瞬で顔まで海水に覆われ、激流に呑まれる。


同じく巻き込まれた瓦礫やごみ、中にはオトナが玩具のように振り回され、わたしたちに激突する前にルナが切り裂いた。


ティナ持ちを超えているルナでさえ、流れに逆らうことができないらしく、歯を食いしばってなんとか羽を動かしている。


岩はどんどん降りそそぐ。当然だ。壊れているのはアガド牢獄全て。


あの巨大な建物を作り上げていた材料がぜんぶ落ちてくるのだ。


しかし、ルナは表情を変えない。絶望なんて当然のようになく、凛とした目で笑みを浮かべる。


わたしの不安が伝わったのか、ルナはこちらを見て優しく微笑んだ。




「かぼごぼ、ぼぼぼがふごぼ」



ルナ、なんて言ってるかわかりません。

というか海のなかで口開くとかやっぱり馬鹿だよね。ルナ。

顔青くなってるよ。



「ばどばあああ!」



クガネ、なんで。

なんで喋ろうとしたんだ。


でもクガネの言いたいことはその後すぐにわかった。


落ちてきたのは檻だったのだ。



「!!」



あれに閉じ込められたら終わる。


ルナにもそれはわかったらしく、落ちてくる瓦礫に足をかけ、ジャンプする要領でどんどん海上へ近づいていく。でも瓦礫は止まないし、海上は遠い。

ルナの速度がどんどんと落ち、瓦礫が翼に当たり嫌な音を立てた。

ルナの顔がゆがむ。


その時だった。


一気に瓦礫が消し飛び、誰かが飛び込んでくる。

そして凄い速度でわたしの襟首を掴んだ。



「がぼおお!?」



見覚えのあるその顔はにやりと笑って、ぐんぐんと海水をかき分ける。


もちろんルナもクガネもついてきている。


なのに、ティナ持ちであるルナよりも早い速度で進んだ。



「どはー!!!」



そして、掲げられるようにわたしは海面から顔をだした。



「く、熊、おじさん……?」


「おおう!久しぶりだな!ありんこよ!」



以前と変わらないスキンヘッドの大男は、朝焼けのなかでにっかりと笑った。



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