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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第五章 アガド牢獄
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「くそ!なんだ、この丈夫な天井は!妾の力で…ぬぅううう!!」



水の勢いは止まることなく、ざばざばと牢獄内を満たしていく。


何人ものオトナが死にもの狂いで暴れて、壁や天井を壊そうとするけど、どこも傷しかつかない。


外につながる捨て口も、何か特殊な材質なもので閉められ、それには魔法陣が浮かんでいた。



「おれがどーんする!もういっかいだ!」


「やめよ、クガネ!この術式は反射が組んである。妾の攻撃もこの通りじゃ」



ずたずたになった手を見せるルナ。そしてぎりりと歯をかみしめた。



「水は厄介じゃ。妾の血が薄まる…。腕力でどうかなるものでもないらしい…」


「じゃ、かべをけるぞ!かべをこわそう!」


「それができたら、投獄されたティナ持ちがとっくに逃げ出しておる。海底の水圧に耐えうる強度の壁ぞ?妾たちのような力任せタイプには無理じゃ!」


「じゃ、どうするんだ!」


「わからんが、出口といえばここで、銀もここから出ろと言っておった!だからここに絞ってぶん殴るのみよ!」



わたしはぼーっとする頭で、そんな会話を眺めていた。


しばらく溺れていたからだろうとルナは言っていたけど、それだけではない気もする。



「……シルク」



シルクに会わないと。

会って、きちんと話をして確かめないと。


シルクは犯罪者だったのか、ウラガはどうなったのか、あの研究所はなんなのか、シルクは何者なのか。


何もわからない。


何もわからないけど、シルクは確かにわたしを守ってくれた大切な人だ。それは本当の話だ。


このままじゃ、進めない。


何もかも無視して無かったことにして、日常に戻るなんて、わたしにはできない。


それに、ここの蓋だって。シルクならなんとか……。



「シルクに助けてもらう」


「イーリス?そなた何を言ってる」


「シルクはほんとにすごいの。脱獄だって、ここと外を行き来することだって、全然不思議じゃないんだよ。


ウラガのことは、たぶん何かの間違いだと思うんだけど、もしかしたらシルクは外で頑張って昇進したのかも」



そう。シルクは、ほんとにすごかった。できないことはないんじゃないかっていうくらい、ほんとにすごかった。


そうだ。そう考えれば、シルクは助かるためにすごいことをし続けてるのかも。



「シルクが助けてくれる。だから、シルクと話ができる場所に行きたい。あの研究室で待とう」



頬に電流が走る。

遅れて甲高い音がして、耳が衝撃で揺れる。


じんとした痛みで、わたしはルナにぶたれたのだとわかった。



「何を言っておる!そなたは!あれを見たであろう!?それでそやつを信じるのか!」


「ルナは…ルナはシルクを知らないじゃん!勝手なこと言わないでよ!」


「知らぬ!知るわけがあるまい!だが、人間は変わる。そなたがここまで頑張って変わったのと同じでな!長い月日が経った今、そなたの知るシルクはもうここにはいない!」



ルナの手が弾ける。今度はもっと強い。唇がぷちりと裂けた。



「あれは外道だ!外道の行ったことだ!イーリス、現実から目を背けるな!逃げるなぞ、そなたらしくないぞ!」


「し、シルクは、わたしの大切な人だ!侮辱しないでよ!!」



わたしも殴り返す。ルナは避けない。ばちんと頬を叩いた手は、なぜかすごく痛かった。



「わたしは研究室でシルクを待つ!みんなはここから出たいならそうすればいいよ!」


「この…たわけ者めが!!」



激怒で赤い目を燃え上がらせるルナ。くたくたの体でわたしとルナを止めようとするクガネ。


わたしだってこんなことしたくない。みんなと一緒にいたい。


でも、シルクは裏切らないし、わたしもシルクを裏切らない。


信じるんだ。シルクは家族だ。生まれたときからずっと一緒にいる大好きな家族なんだ。

あの研究室が、もともとあるのか、わたしがいなくなってかるなのか。分からないけど、わたしの知るシルクを、信じるんだ。



『あー……これ、繋がってるか?』



そんな時に、聴きなれた声が響いた。




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