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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第五章 アガド牢獄
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残酷描写が続きます…






「君が生まれてから今までのこと。簡潔にまとめて、それでいて全て。今ぼくに話せ」



馬鹿か。こいつ。

俺はぐらぐらする頭の中でせせら笑った。


それ、俺が一番知りたいことだっての。


まぁこれでわかった。記憶がないことはアルテマは知らない。

で、こいつらも俺の記憶が欲しいということ。


納得できないのが、なんで今更俺の記憶を求めだしたか、だけど…まぁいいか。そんなもん。

死にかけてる間際で考えるもんでもないだろう。


しかしよ。強大なアルテマっつー組織でも口を割らせる手段は拷問か。

ついでに下手だな。これじゃ口割る前に死ぬぞ。



「困ったな。黙秘か」



そりゃ口を開いていいことなんかねぇしな。



「死んじゃうよ?」



そうなりゃアルテマにとっても失敗だ。よくわからんが俺の記憶…お兄さんの研究結果はお前にとって相当重要なんだろう。


だから殺せない。死ぬ危険も冒せない。ついでにティナ堕ちもさせられない。


俺の方が立場は上…ってことはないな。

俺はこいつを殺せねぇし、記憶も差し出せれねぇ。相手は俺を殺せる。



「……しょうがない。生存本能はすべての生命体に通じるものだっていうし、頭のいい君ならしゃべった方がいいのもわかるでしょ」



ガキが本を開き、また杖を振る。俺の手足に光が宿ったかと思えば、ゆっくりと()()()いった。



「ぐぁっっ!!?」



嘘みたいな激痛が走った。さすがの俺も自分の体が崩れる痛みに経験はない。体が、分解されていく。

物みたいに。バラバラと落ちていく。



「あとは頼んだよ。ここには誰も来れないし、ぼくは休んだ後イーリスに会いに行くよ」



ちらりとガキがこちらを見るが、悪かったな。目線を返す余裕もねぇほど痛ぇよ。これ。



「そうだ。言っとくけど、イーリスはぼくやこの場所に縛られてる。

ぼくが会いに行けば丸く収まると思うよ?そして、ぼくが会って優しくしないかぎり、イーリスはまたここにくる。離れられないんだよ。

それほどぼくらの絆は深くて、だからこそイーリスは、突き付けられた事実を信じられないだろうからね」



あいつは最後にそう言って、姿を消した。


………さて、と。こんな痛みに頭を支配されるわけにはいかない。


冷静に、落ち着く。もう面倒だ。

わからないことを考えるのは生き延びた後にしよう。


この状況。とにかく、イリスたちが厄介だ。人質にとられている以上満足に動けない。

いや、関係ないか。どうせこの体は動けても殺せない。


つーか、あいつら、シルクってガキ探してんだろ?そいつここにいたよ、さっきまで。ゴミ捨て場探しても見つかるわけねぇよ。

助ける必要もまったく無さそうだったぞ。


でも、それをあいつに知らせる手段もなければ信じさせれる気もしない。


生まれたときから一緒のやつに懐柔されるのは、まぁ当たり前と言えば当たり前だ。

このままだとあいつに良いように使われるんだろ、あのバカ。


最悪アガド牢獄自体がアルテマの所有しているものとしたら、イリスの顔は全員に伝わってる可能性もあるのか。ヴァンパイアたちがいるからとはいえ、逃げ切れるか?


……この体の崩壊。どういう原理で止まるかは知らねぇけど、はやくしないと手足を失くすどころじゃ済まなさそうなんだけど。


あー、めんどくせぇ。



「うぐっ!」



またも浴びせられる聖水。そして顔を隠した男はすらりと銀の剣を抜いた。


こいつ殺す気かよ。


剣はぺたりぺたりと傷口に沿い、小さく少しずつ切り裂いていく。


普通の剣ならうっとおしいで済むものが、聖水を含んだ銀の剣だと、焼き切られているかのようだ。



「よくも。同胞を…」



あ?こいつ、キレてんのかよ。


あの青ガキほど冷静でもなさそうだな。黙っておいても得はないか。



「……殺すなら一思いにやれよ。めんどくせぇ」


「嫌だ。じっくり、生を楽しんでもらう。地獄のような、痛みのなかで。死ぬだけなんて、生ぬるい」



剣がぶつりと肉を切り裂く。そのまま、ゆっくりと傷は新たな軌跡を描いていく。


おいおいおいおい、動脈ぶちぎってんぞ。


どこまでやれば死ぬかがわからずに拷問なんざすんな。三下が。



「家族を殺された、仲間を殺された。悪魔め。許さない。死ねばいい」


「っ……!」



地面に剣を突き立てるように、銀の剣が真っ直ぐに体を貫いていく。


まずいな。意識が、とぶ。急所は外してるみたいだが、聖水は毒だっつってんだろ。


魔力もない、血液もない。いくら俺でも限界はある。



「痛みに強い、か。苦しいのはどうだ?」



男は聖水を持ち上げる。水属性もちか。そしてもう一方の手には普通の水を生成。


二つの水は組み合わさり、そして俺の全身を包み込んだ。


酸素を失い、毒が混ざる。この内臓が腐っていくような感覚は、表面の痛みよりも性質が悪い。


呼吸ができねぇのは苦しいが、今はこっちの方が楽だな。意識が朦朧となってちょうどいい。


あー。

さっさと終わらねぇかな。



「…お前はもがきもせずに死ねるのか」



いつの間にか水攻めは終わっていたらしく、清々しい空気を肺に入れる。


意識飛んでたか。それとも一瞬死んだか?それはいいんだが、聖水の毒はまずいだろ。呼吸ができても一向に良くなった気がしない。



「もがきもしないから、加減が難しい」



うるせぇな。もがいたところで息ができねぇのは変わらねぇし、こうすれば同じことはできねぇだろ。



「苦しみを与える。すると死を悟らせない。痛みには耐性がある。なら、大切な人を殺すか。いや、それも数が少なすぎる。さぁどうしようか」



知るかって。

それより、クソ野郎が。お前十分やりすぎだ。

俺の耐久力はティナの恩恵だ。それの弱点をずかずかと突いたら、その耐久力も弱まるだろうが。


絶対あの青ガキの命令外だろ。あいつはまだ加減というか知識があった。



「…そうだ。そうしよう。死んで、生き返らせ、死んで、死んで、生き返らそう。お前が耐えられなくなるまで」



あー。もう、ほんと勘弁してくれよ。

死んで生き返らすのはいいけど、生き返る保証もねぇよ。それだと。


俺は盛大にため息をつき、もうどうでもよくなって目を閉じた。


なにせ手足は崩壊が止まらねぇし、力は一切使えないし。抵抗する意思がどうこうよりも力がない。


銀の剣は、俺のどこを貫いたのか。俺にその感覚はなかった。



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