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どうしよう。
いーりすとはなればなれになった。
これはあぶない。
いーりすがおそわれても、おれはまもれまい。
みずがじゃまだ。
のんでものんでも、まだまだいっぱいだ。
おれはおよげるけど、いーりすはかなづちだ。
いーりすがしんじゃう。
「たわけ者がぁーー!!!」
ばごんとなぐられた。
「迷ってる暇などあるものか!妾と一緒に壁を壊すぞ!壊してイーリスを助け出す!助け出してここから脱出じゃ!」
「~~~~う!わかったぞ!」
あたまがいたいけど、かべをける。なぐる。つめでひっかいた。
みずのなかじゃ、ちょっとちからがでない。でもがんばる。
「イーリス!妾じゃ!返事せい!」
「いーりす!がんばれ!!」
へんじがない。
いーりすがおぼれちゃってるかもしれない。
だめだ。なぐったりじゃまにあわない。
おとうさん。おとうさん
おれはむれをまもれないのか?
おれはよわいのか?
おれはいやなのに、だめなのか?
「…っつ!おとうさんだ!」
「ん!?お父さん?」
「るな!おとうさんだ!とうさんはそうしろっていってた!」
「ま、待て待て!何を言っとるのかわから…」
「るな!どーんだ!どーんをする!」
「どーんってなんじゃ!!」
どーんはどーんだ。
わからないか!なんていうんだったけ。
「すとれすだ!」
すこしはなれる。
はなれて、てんじょうに4ほんあしでしがみつく。
「るな!すとれすをくれ!」
「す、ストレスか?」
「いいからはやく!もっとだ!」
「え、えええと…クガネのドアホ!ばか!雑魚!なにもできないチビが!」
「いいぞ!もっとだ!」
「大食い!尻尾!耳!もこもこ!ガキ!よわいよわいよわい!」
いらいらだ。
いらいらがすごいぞ。
いらいらが、めらめらになって、ごおおってなる。
「ぐ、ぐ、ぐ…」
「クガネのばーかばーかばーか!お前なんか大嫌いじゃ!群れひとつ守れん役立たず!!」
ごおおっていうのが、ぐるぐるして、くちにぎぎぎってなる。
「ガアァァアアアアアアアア!!!」
そして、くちからきんいろがとびだした。
ばーんとすごいおとがして、みずもいわもなくなった。
るなはぽかーんとしてる。
「おとうさんは、すとれすははきだせっていってた!」
「…すごいぞ、クガネ!今まででこれほど意味が分からんのに、感心するようなことはなかった!す、すごいぞ!」
どーんをしたら、ちからがぬける。
ぜんぶのちからで、どーんとばーんってしたからだ。
「るな…いーりすを…」
「任せるがよい!」
るなにおなかをもたれて、そのままぐいぐいすすむ。
みずもすこしはきえたけど、またふえているみたいだ。
「イーリス!」
いーりすはぐったりとしていた。
でも、しんでない。
「おまえがまもったのか?」
さっきみかけた、ぐちゃぐちゃのにんげん。
だきしめるみたいに、いーりすのからだにくっついている。
「ありがとう。おれのむれをまもってくれて」
ぐちゃぐちゃは、ゆっくりといーりすからはなれる。
そして、おれのところでじっとしていた。
なにもいわないし、ぐちゃぐちゃしてるだけだ。
うん、でもわかったぞ。
おとうさんのときと、いっしょだな。
「るな。はなしてくれ」
「うむ。イーリスは気を失っているようじゃ。早くこの部屋からでて、牢獄からも出たいところじゃが…」
るなははなしてくれた。でも、おれはたちあがることもできなかった。
それでも、うでにちからをこめる。
「がぁ!」
そして、ぐちゃぐちゃたちをなぐった。
みずみたいなからだは、べちゃっととびちって、いのちのにおいがきえる。
それをひとりずつ、できるだけはやく、いっしゅんでがんばる。
るなはとめなかった。
「……行くぞ、クガネ。背中に乗れ。クガネが水を消し去ったとはいえ、どんどん水かさが増している。急いでここから出るぞ」
「うん」
おれはるなのせなかにのる。
ぐちゃぐちゃのしたいをみて、かなしくなった。
クガネ はじめてのカタカナ