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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第五章 アガド牢獄
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「すごく久しぶりだ。そうだな…10年ぶりくらいかな。ぼくも変わったけど、君も変わったね」



なんだ、こいつは。



「ぼくがわかる?わからないよねぇ。こんな子供になっちゃってさ。しかも魔力もなくなって。

ホント最悪だよ。でも君がいるから救われる。会いたかったんだあ」



俺は知らない。脳裏をまさぐっても、こんな奴の顔は知らない。



「あの時のこと、ぼくは忘れてないよ。君があんなことをして…兄さんもぐっちゃんぐっちゃんになってさ。怒ってるんだよ?これでも。一応兄弟だしね」



知らないのに、どうして俺はこいつを殺さなければならないと思うんだ。


殺したいでもなく、壊したいでもなく。


殺さなければならない。消さなければならない。


ならいいさ。殺せばいい。ティナの衝動にしろ他の理由でも殺せば済む話ならそれでいい。


なのに、俺は、なんで動かない。


なぜだ?理由はなんだ?


……くそ。頭が割れそうだ。



『……ゼロ、どうした?なにか問題でも』


「っっっっ!!」



通信を破壊する。

どうやってやったんだよ。俺。

あいつは頭に直接語りかける常識外れなやり方してんのに。



「…ここは通信遮断の魔法陣組んでるんだけどなぁ。そんなにすぐに切っちゃったら原因もわからないじゃないか。君の連れは、結構優秀みたいだね」



…だめだ。何も言えない。


ぐだぐだと話しかけてくるところを見ると、こいつは俺が記憶を失っていることを知らない。


なんとなく、それを知られるのは危険か。


ああ、いいからさっさと殺せよ。こんなガキ。

なんで、俺の体は動かない。



「ねぇ。会いに来てくれたのは嬉しいんだけど、理由は…やっぱりあの子なの?」



脳内に電流が走る。


"あの子" 


意味するのはあいつだ。白い髪のガキ。


こいつはあいつを知ってる。知ってて、煽るように、言ってる。



「そうだよねぇ。何も言わない、か。まぁ昔から何も喋らなかったしね。…まぁいいよ。時間はあるんだし」



シルクと呼ばれるガキが一歩近づき、俺は一歩後ずさる。


ダメだ。これ以上はもたない。


俺が周りの魔力も感じられない。俺の魔力すら操れない。乱れている。


このままじゃティナ堕ちしてもおかしくない。



「どこ行くの?」



あいつを通り過ぎることもできず、後ろの壁を破壊しようと手をかける。


くそ。力が入らねぇ。魔力を使いすぎたか?

んなわけあるか。ここまで調整して使ってきたはずだろうが。



「そっかぁ、だよねぇ。ぼくも君は逃げると思った。離れるのが一番有効だからね。

うんうん。でもそうはさせないよ。ぼくだって、君を追い求めてやまなかったんだから」



ガキが分厚い本を開き、もう片方の手で杖を持つ。


その一ページを杖で叩くと、銀がやるように空中に映像が浮かび俺の目の前にきた。


その映像は、部屋が水で満ちていく映像。これは…牢獄内か?



「イーリス。まさか彼女がぼくのカギになるとは思わなかった」



後ろを振り返る。


映像は次々と出現し、首元まで水に漬けたイリスの姿が写った。


ガキは、にやりと笑う。



「彼女を外の世界に出したのは気まぐれだった」



鼻歌まじりに、こいつは映像を出していく。


水の中で杭に貫かれるヴァンパイアの姿が流れた。



「それでどんな経緯があったのかはわからないけど、結局君をここに連れてきてくれた。彼女は、ぼくにとって天使みたいに大切な子なんだけど…こんなギフトをくれるなんて思わなかったよ。そしてぼくにとって天使のようなイーリスも、君という宝石には敵わない」



水かさが増していく。


止まる様子はない。



「もうアビスシードはいらないし、彼らは失敗だ。ぼくにとって十分じゃない」



ガキは満面の笑みのまま、懐から短剣と液体の入った瓶を取り出した。


遠くからでもわかる。純銀の剣と最高品質の聖水。



「コード:ゼロ。君がぼくから去れば、あの水はあのまま増えていく。君がここにきてくれるならイーリスたちは助けてあげるよ」



…最悪だな。ホント最悪だ。


あの犬もヴァンパイアも何してんだよ、ホント。


敵はそっちに一人もいねぇのに勝手に死にかけてんじゃねぇよ。



「…望みは」



まぁ、しょうがねぇな。


出来るだけ守るっつったしな。


今も、不可能ってわけじゃ、ねぇし。



「君の記憶だ」



ガキは嗤いながらそう言って、俺の胸へと短剣を突き刺した。




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