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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第五章 アガド牢獄
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06




兵士や軍人、中には腕に覚えがある町人までそこにいた。


自分の国への襲撃に対して、逃げ惑う者より武器を手にするものの方が多い。それがアガドルークという国だ。


しかし想定したものと現実は違う。


突然発生した青みがかった霧。

途端に身に覚えがない壁ができたと思えば、味方同士が急に剣をぶつけ合った。


慌てて周りで止める。

止めるも、当人同士は化け物だという声を止めない。



混乱を避けるために気絶させて、道の端へ転がしたら、何故か彼は消えた。何故だと慌てて駆け寄ると足場がなくなり、下は岩山と海。風の魔法の持ち主だけは生き残った。


戦士たちは混乱する。


混乱するも牢獄へ辿り着かんと橋を造り、その理解できない不可解な場所から離れた。


戻ってきたものはいない。

当然だ。アガド牢獄へ辿り着いたのだから。



「な、なんだぁ!??」


「うわぁあああああ!!」



その混乱が最高潮に達する。


アガド牢獄へ辿り着く一本の橋。それを守るように突如君臨したのは、巨大なトラと炎を纏った九尾の狐だ。


大地は急に焼け野原へと変わり、霧が更に濃さを増す。手を伸ばした自分の指先さえも見えない。


加えて音も届かない。濃い霧はそれさえも飲み込んだ。己の声も、隣であがっているはずの声も、届かない。多人数できたはずなのに、孤立しているかのような感覚に陥る。


そして炎が足元を舐める。熱いと思う。体を炎が這う。それで悲鳴をあげた。


恐れながらも狐へと向かう戦士がいた。それを狐は嗤い、たやすくその人を喰らった。


その光景はありありと目に焼き付く。

ばりばりばり、ぼきぼきぼき。ごくん。そんな音は、耳にこびりつく。


真横でそれが起きたかのように、目や鼓膜に刻み込まれる。



「うおおおおお!」



果敢に挑む兵士がその剣を狐の脳天へと突き刺した。


それでも狐は嗤い、血の一滴も流さない。そして、剣を突き刺した兵士は消し炭になるまで燃やされた。


人の焼ける臭い、焼かれる声。



「い、いやだああああ‼」



喉が千切れんばかりの声は誰のものか。


戦士たちは逃走を開始した。

誰も見えずに孤独を感じながらも、皆が逃げている感覚はある。


虎が追ってくる。雄々しい雄叫びをあげている。魔法を放つがダメージを負った形跡はない。


背後では悠然とした狐が長い9本の尾を揺らしながら、虫でも見るかのように嗤っていた。


断末魔が響く。視界はないまま音だけ届く。


燃える。

足元に消し炭になった人型が転がっている。人の焼ける臭いが鼻腔を支配する。


助けてくれ。死にたくない。痛い、苦しい、苦しい。殺してくれ。



「ああああぁぁぁあああああぁぁあああ!!!」



意味のない叫び声が支配する。恐怖が伝染し広がる。


ここを離れなければならないとしか、考えられなかった。



「なんじゃこれ。ゼロの技か?」



その悲鳴の中に、違う音が届く。



「いやー。ゼロのは個人単位の精神破壊だろ?こんな集団で同じもの見て、転げるのはちがうっしょ。こっちにもばっちり効いてるし。なに、あの大狐」


「ボク、効かないみたい。トラしかいないよ?あ、でも炎は本物。足こげちゃった」


「シュウは精神も死んでるからなぁ」



そんな間抜けにも聞こえる声で、数人が我に返った。


それに目も向けない彼らは、そのまま虎へと歩みを進め、その中の大将であろう髭面の男がぎろりと睨む。



「そこにいるんだろ?ティナ持ちか?とんでもねぇ幻影(モノ)作りやがってよ!!」



そんな言葉と同時に、一帯を貫かんばかりの雷が天から降りそそいだ。


新たな悲鳴が響き渡るのも同じときだった。




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