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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第五章 アガド牢獄
152/342

04




『イーリスたちは侵入に成功した。そちらはどうだ』


「…疲れた」


『だろうな』



罠。人間。魔法。武器。


周りが俺をどう扱ってるかしらねぇが、疲れるもんは疲れる。


ここは空気も悪いしな。



「入っちまえば、もう見つからねぇだろ。見つからねぇというか、追ってこれねぇ。あとは探す時間だけだな。どのくらい必要だと思う?」


『わからん。それに、リオがそろそろ限界だ。敵がなだれ込む可能性がある』


「…嫌な知らせだな」


『ここで聞くべきではないのだろうが、体力が落ちていないか?』


「うるせぇよ」



血の味がするまずい煙草を口に咥える。


体力が落ちたって?だとしたら何だよ。鍛えろっつーのか?


つーか体はちゃくちゃくとティナ堕ちが進んでんだから、そんなことありえるはずがねぇだろ。


………ま。その見解は認めるけどな。



『それと悪い知らせだ。お前に恨みがあるやつらまで集まってきている』


「腐るほどいるから知らん」


『暗殺者たちだ』


「あー…」



懲りねぇな。あいつら。



『それと、軍』


「………」



ジジイたちか?それはめんどくせぇな。

俺よりも、あいつと相性が悪い。



「狐に伝えろ。相手が悪いから下がれってな」



あのジジイは魔力を見る。幻影はあまり効果がない。


それにあそこには幻影だろうが、相手が魔物だろうが、まったく関係ない動く死人がいる。



『いいのか?』


「俺に会いにきたなら通してやれよ。イリスの方に行かねぇなら計画通りだろ」



さーて。敵に増援がくるなら、もっと派手にいくか。


俺の居場所が相手に伝わらないと意味がないんだし。


傷もだいぶ治った。そろそろ後ろの銃声もやかましいし、頃合いだろ。



「安心しろよ。疲れたっつっても重傷はねぇし、調子は悪くねぇから」


『なら何に疲労感を覚える?』


「久々にここまで壊して殺して、敵意と殺意向けられて…ぶっ飛びそう」


『……最悪だな』


「だろ?」



まぁ理性を飛ばしたりは、俺に限ってありえねぇ。ティナ堕ちしない限りは。


制限なくぶっ飛んだら気持ちはいいだろうが、俺じゃなくなるのは御免だ。



『通信を終了する。武運を祈る』


「は。悪魔に祈ってんじゃねぇよ」



さてと。

あいつらが潜入できたなら、陽動としての役目は終わりだ。 あとは俺の目的になる。


どこかにある資料室。

犯罪資料を置いてあるところがあるはずだ。

そこで、アルテマや子供の誘拐について調べる。調べる時間はねぇから頭に叩き込む。


資料室も、その他の部屋も銀から既に場所は聞いてる。ならそこに向かうだけだ。



「……よし」



後ろは常に連射状態。手でも出そうものなら千切れそうだ。

この壁もそろそろ耐えれねぇな。



「クロ」


「きゅ」


「別れる。お前は時々俺の姿を映しながら走りまくれ」


「…うぎゅううううう」


「むくれんな。流石に数が多すぎるから相手もばらけさせてぇんだよ。いいな」



クロは盾として優秀だが、錯乱にも使える。


額の結晶から俺の姿を映し出し、敵の目をそちらに奪う。敵が分裂すれば後ろから始末するのも楽だ。


今回は相手の魔法を封じたところで、どうにもならねぇしな。



「下には行くなよ。任せた」


「…うきゅ!」



よし。

額の赤い石を小突き、クロが構える。

俺は魔剣を解き放ち、それを纏った。


制限時間は、3分。



怠惰(ベルフェゴール)



辺りが闇に覆われる。


いつもの影のようなそれではなく、光がなくなるという意味での闇。

それも一瞬で、光が戻るときにはクロはその部屋にはいなかった。


銃口が急な暗闇に惑うも連射は続く。

俺はその銃の直線上に立った。


弾丸は俺の体を貫き、そのまま壁を砕いた。



「悪いな。この技はお前らを殺す技じゃねぇんだ」



今の俺の姿は闇そのもの。手や翼はおぼろげに揺れて影のようだ。


憤怒(サタン)は一切を破壊する技。

強欲(マモン)はティナの能力を、色欲(アスモデウス)は精神を破壊する技。

そして怠惰(ベルフェゴール)は、俺を破壊する技だ。


今の俺には、肉体の概念が破壊されている。物理的な攻撃は通用しない。



「これくそ痛いんだけど、ハチの巣にされるよりかはマシかな」



瞬時に近寄り戦闘にいたやつの首をねじ切り、左右のやつらの背中を折る。


都合がいいことに、俺から生きた相手には触れることができる。

人は闇に触れることはできねぇけど、闇は人に触れることができるんだろう。


無機質なものはすり抜ける。

俺の手は銃を通り抜け、銃を握る拳に触れた。瞬間に指を握りつぶし、痛みに膝を屈した瞬間に顎を蹴り上げる。首から上が飛んだ。


銃が不可と悟ったのか、周りの魔力が高まっていく。


魔法は通過できない。が、俺が肉弾戦しかできねぇわけがない。


ちょうど3分。

纏った衣が剥がれ落ち、姿を変える。


剣よりも大鎌よりも長いハルバードへと。


今、俺の居場所は敵の群れの中心地。俺はそれを振り抜いた。



暴食(ベルゼビュート)



部屋中に闇が広がる。波のように飲み込む。悲鳴と断末魔が響いた。


崩れ落ちる人間。いや、人の形をした何か、だ。


いつも思うが、この技が一番むごい。

暴食(ベルゼビュート)は魔力を破壊する技だ。今ここに転がっているのは、生きている人形と変わらない。



「あー…それにしても…」



清々しい。抑えずに、自由に、何でもしていいのは楽でいい。やっぱり一人が楽だ。


ひとりずつ、ゆっくりと胸を貫き、首を落とす。ほっといてもいいんだろうが、俺なりの気遣いだ。


返り血が舞い、足元に赤い海ができ、俺はそのなかを歩く。


殺すたびに、何かが流れ込んでくる気がする。


理性をぶっ飛ばしそうな麻薬みたいな…いや、俺に麻薬とか全く効果ねぇんだけど。言葉で表すなら、酔いしれるってかんじか。



『人を殺して快感に溺れるのはティナの特質だ。気を引き締めろ』



何をいまさら。

知らないわけがねぇだろ。



『悪魔は人に興味はなくとも、人を神のしもべと考えている節がある。破滅は願っていなくとも、死を忌避するほどではない。むしろ滅びを願っていない分、残虐な一面さえある。人の苦しみ悲しみが、悪魔の餌と称された程だ。あまり流されていると呑まれるぞ』



なるほどね。

苦しんでるのを見るのは大歓迎ってか。



「じゃ、調整する」


『…できるのか』


「俺の体に快感物質が出てるってことだろ。それを制御すればいい話だ」



酔っていたくないわけじゃねぇけど、まぁ戦闘中だしな。冷静な判断力を手放していいことはないだろう。


というか、この話昔にも聞いたよな。大量に殺すとこうなるとかなんとか。



『言ったな』



だよな。


こう酔ってると頭も回ってねぇのか。厄介だな、やっぱり。気分はいいけど。



『あと数分で敵の援軍がくる。それまでにできることは済ましておけ』


「あのバカ3人組にさっさとしろって伝えとけよ」


『試みる』



もしもあいつの友達とかいう奴が死んでいた場合。それが面倒だ。


死んだ奴を探し続けるのも、死んでいることをわからず探すのも、どっちも無限に時間がかかる。

あのバカがそんな判断をしないことを祈る限りだが、場合によっては引きずってでも連れ出す必要がある。


となると、ひとり抱えて逃げる余力は残しとかないといけないのか。だるいな。


正直絵描きに関しては9割諦めてる。

なにせアガド牢獄だ。

絵を描く生業のやつが、生きているはずがない。そっちの路線で調べるのはもう無理だろう。


今は、子供の誘拐事件。

そこからアルテマに関する人物なり、事件なりが出てくればそれでいい。



「闇の帝王!オレはオークのティナ持ちの…」


憤怒(サタン)!!」


「え?あ、うぎゃぁぁぁぁぁあああ!!!」



ということで、次の目的地に向かうか。




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