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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第五章 アガド牢獄
151/340

03




真っ暗じゃ。何も見えん。そして、とんでもない臭いじゃな。


妾の血の守りがなかったら、妾もクガネみたく伸びておったかもしれん。


うむ。暗さに慣れてきた。


何せ妾はヴァンパイア。夜の生き物。闇なぞ怖いどころか親しみ深く感じる。



「大丈夫?」


「ひどい、臭いじゃ」


「ここはごみに一番近いから、生ごみもだけど、落ちて死んだ人の死体とかも埋まってるの。早く離れるよ」



イーリスは、いつになく緊張した面持ちをしておった。


ここはアガド牢獄。

一度入ったものは出られない地獄牢屋。そこで暮らしてきた感覚が戻ったのだろう。どことなく、野生的な雰囲気がある。



「イーリス。そなたは妾が守る。だからそんなに心配することはない」


「…うん。ありがとう、ルナ」



それでも警戒した顔つきを変えない。

もうよい、生まれながらの本能的な何かだろう。そう考えておく。

だが、そんなに壁際を歩かなくてもよいではないか。



「わたし、すごく大きくなってる…。知ってたけど、すごい実感するなぁ」


「うむ。前とは随分違うぞ」


「シルクたち、わたしのことわかるかな」



うーむ。

そこなのだが、本当にそやつらは生きておるのだろうか。それを聞いたらとんでもないことになりそうだから言わんが…。


そやつらが見つからなかったら、イーリスは永遠とこの牢獄内を彷徨うのか?


……うううううむ。



「それにしても役にたたんの!そなたは!」



いい加減抱えておくのも面倒になってきたぞ!クガネ!


臭いのはわかるが、そろそろ起きても罰は当たらんぞ!



「クガネは起きない方が楽かもしれない。臭い、きつくなるかもしれないし。クガネだから、戦わないといけないときには起きるよ」



イーリスの目には、明らかに恐怖があった。


きっとこの世界で15年もの間。

常に恐怖し身をすくませながら生きてきたのだろう。


その状況で生まれる強さもあるが、子供という弱い存在にこの場所は辛すぎる。


強くなり、大きくなった今でも刻み込まれる程の世界だったのだ。



「そなた…よく生き残れたの」



転がる頭蓋骨の残骸を横目に、自然とぼろりと言葉が漏れた。


それに対して、イーリスは苦笑する。



「二人が、いたからね」



その顔は悲しそうだった。だから、イーリスの覚悟もわかった。


二人が死んでいる可能性を、考えない程能天気でも無責任でもないということか。



「探すぞ!」


「…うん」



弱弱しい背中をばしんと叩き、イーリスの前をがつがつと歩く。足音もたてて、周りを威嚇するかのように。


妾は、怯えた友は見たくないのじゃ。




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