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ゼロさんは、とんでもないことをした。
本当にとんでもないことを、だ。
思わず鳥の姿の銀さんが頭を抱えてしまうくらいに。
何をしたかって?
街に破壊の闇を降り注ぎ、大きな建物がいくつも倒し、その中でクロちゃんがまぶしい光を放って、見ろと言わんばかりにアガドの分厚い門をどがんと破壊してしまったんです。
その直線状にあった建物も人も、みーんな巻き込んで。
街は一瞬で錯乱状態。悲鳴と悲鳴と悲鳴が飛び交う血まみれの舞台になった。
それでも生き残っていた人は、その後ゼロさんに真っ二つに切られたり刺されたりして、ゼロさんはそのまま堂々と真正面から、しかも歩いて潜入してしまった。
「アガドルークの諸君、歓迎ありがとう。ちょっと野暮用があってな。通してもらうぜ」
………うん、みんなの目が向くね。
こんな状況で、空の上にいるわたしたちを気にできる鋼鉄の心を持つ人はきっといないよ。
「や、やりすぎでしょ…」
みんなの心をリオが代弁。うん、ホントにそう思う。
『…作戦を決行する。やりすぎとはいえ、あいつはあいつの任を十分すぎるほどこなしている。リオ、頼んだぞ』
戦闘スタイルへと服装が変わったリオは、青い炎をゆらりと揺らし、その淡い炎で街を包んだ。
まったく熱を感じず、まるで霧に呑まれたみたいで、騒動のなかの町人たちが異変に気付いた様子はない。
「準備できた。行って」
その声と同時に飛空艇が消え、予期していたルナがわたしを掴んで蝙蝠の翼を広げる。
クガネは満面の笑みで自由落下だ。
なんで飛空艇消えたのさ!と言いたいところだけど、小さい飛空艇を飲み込んだ銀さん(鳥)を見て納得することにした。そう。この人はなんでもありなのだ。
「こんなに堂々と行っていいの!?」
「妾が姿を隠しておるから安心せい!それにあの狐娘の幻と炎を操る力は本物。常人に妾たちの姿は見えん」
「しろ!おれがんばってくるな!ごるどもがんばれな!」
『私はこの付近で待機する。健闘を祈るぞ』
こうして、わたしにとっては故郷ともいえる場所の攻略が始まった。