06
なんだって?
仕事が大変になった。うん、更にね。大丈夫かな、依頼料。お金足りるかな?
それで…銀さんまで動く!?
え。それっていいの?できるの?お金払ってないよ?え。銀さんへの依頼料なんて考えたことなかったんだけど!?
それで、え? 何でゼロさんがアガドへ襲撃することになっちゃってるの?
「……話すべきことはねぇよ」
「そうだな。お前にとってはそうだろう。
ではこの状況において伝えるべき情報はあるか。そう問えばなんと答える」
「……」
そしてどうしちゃったの。この二人。
「お前がアガドへ向かう情報が漏えいすることはない。表のルナティクスでその件は公表もしてはいないし、行動すらみせてはいない。お前もイーリスも表の連中に言ってはいないだろう。
可能性があるとするなら、ここにいるメンバーの誰かが口を割ったか、だ」
確かに、リオもルナも外の世界で生きる人だからしゃべることはできる。
でも、絶対そんなことはない。ありえない。目を向けたってみんな「何言ってんだろ?」という表情しかないし。クガネに至っては話の内容すらたぶんわかってない。
「……俺に判断させたかったわけか」
え。どゆこと?
「私は心理を読むことはできんからな」
……つまり、裏切りもの探しってことか。ゼロさんにみんなの表情だとか魔力だとかを見せることで。
こうなるとシルバが連れてこられたことも一枚噛んでそうだな。
おそるべし。銀さん。
「俺がこの中の誰かが言ったって言えばどうする気だったんだよ」
「もちろん消えてもらう。私の存在を知る裏切り者など邪魔でしかない」
おっとぉう。
どストレートにとんでもないことを。いや、裏切ったりしない前提だけどね。
それにしても銀さんがゼロさんへ向ける信頼度の高さってどこからくるんだろうか。
「だが、お前の隠し事については別だ。ここにいる者たちが口を割っていないなら、どこかで情報が流れているか、または予期されての行動をされたということになる。
言え。これは必要なことだ。それによって起こる害に関しては私が責任を持つ」
ゼロさんは長いことため息をついて、お手上げとばかりに両手を挙げる。
それを見て顔をしかめる銀さんを見て、ゼロさんは片目を開けてニヤリと笑った。
あれ?そういえば体が動かな・・・動いた。ん?
「じゃ、どこから始めるか」
ゼロさんはそう切り出し、もう意味の分からない言葉の羅列を唱えだした。
ちょっとゼロさん、今何語しゃべってますか?銀さんも…おーい、何を言ってるんです?
ちらりとリオを見ると諦めたように目をつむってるし、クガネとルナに関しては寝ちゃってる。
最後の期待にシルバを見ると…あ、これわかってる顔だ。
「小娘には難しいだろうな」
「な、何語なの?」
「古い言葉で名前はない。昔は魔法もあの言葉で唱えられておったが、魔法の使えないティナ持ちがそれを操るとは…。無用な長物よの」
うん。よくわからない。本当の意味で呪文だ。
理解できたのは、「アルテマ」という言葉と、きっとそいつらがまずい奴だってことだ。
話を終えたのか、銀さんは嘆息をこぼす。
「この私でさえ知らない巨大組織のことを、よくもあの短い間でそこまで辿ったものだ」
「そこまでじゃねぇよ。ほんの少ししかわかってねぇ。
で、俺から銀の連合の当主へ依頼だ。徹底的に調べろ。もちろん秘密裏にな。表だってやっても責任はとれねぇぞ」
「了解した。依頼料は後程請求しよう。だが、まずはアガドルークの攻略からだ」
え、あ、はい。もういいのか。
「そのことだが、イリスはあくまで俺個人に依頼して金も用意してる。お前が動くと連合経由になるだろ?」
「それはいい。ルナもリオもクガネも無償で協力すると言っている。私はそれに協力するだけだ。仕事としてするつもりはない」
「へぇ。お前がねぇ。よかったな、イリス」
頷く。
うん。ありがとう、銀さん。
「ちょっとまって。イリス?ゼロ、イリス呼びってどういうこと??」
ゼロさん。スルー。
「話が脱線したな。アガドの攻略についての話を続ける。そこの二人を起こしてくれ」
わたしは隣のルナの背中をたたき、ゼロさんがクガネの座る椅子を蹴っ飛ばした。