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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第三章 崩れる
136/339

04




裏のルナティクスにわたしと銀さんはきた。


流石の銀さんでも場所を丸ごと転移させるとなると、いつもみたいに手をブンで済むはずもなく、入念な準備と確認を繰り返していた。


そもそも、異空間が存在していること事態が説明つかないものなのに、お手軽に移動ができるはずもない。銀さんの龍の力と言うか知識と言うか、正直わたしじゃよくわかんない力で進めている。


まずは表ルナティクスとの繋がりを切り、運べる状態にするとのこと。


なんですか。

空にずらずらと書かれた球状の魔法陣みたいなのは。もはや魔法陣じゃなくて、ミミズみたいな呪文も空に書いてあるけど。空に書ける事態がありえないんだけど、そこは考えたらだめなんだろうね!



「シルバ、その座標は確かか。私の目でも見えん」



そんな作業をしながら、銀さんは現在シルバとお話し中である。


銀さんが話すときには通信機はいらないから、独り言を言っているように見えなくもない。違うとわかるのは、何処からかはわからないけどシルバの声がするからだ。



『かの銀龍殿も見破れんとは、若かりし頃の儂もなかなかやりおる』


「ああ。これの完成度は高い。魔物の聖域というわけか」



銀さんがゆっくり目を閉じる。開くと黄色い爬虫類のような龍の目が、獣のそれとなっていた。


え。銀さん。体、自由に変えれるの?



「見えた。魔物の目ならば干渉できるようだな。魔物を従えた相手に対する防壁はあるか」


『ここに入れば人間の作る魔道具は機能せぬ。魔物をたとえ懐かせていようが、儂の声に逆らえる魔物は早々おらん』


「魔物をつれた人間が攻めてきた場合はどうする気だ」


『簡単なことよ。鍵となる魔物を殺せばよい。儂は始まりの魔物であっても、魔物の守護者でもなければ親でもない。そこを勘違いしてくれるな。ここへ許可なく侵入する者は人であろうが獣であろうが、討ち滅ぼすのみよ』



………わたしたちよく生き残ってたなぁ。ゴルドに感謝だ。



「承知した。失礼な物言いだったのならば謝罪しよう。今回は世話になる」


『良い。儂も銀龍殿とは話をしてみたいと思っておった。楽しみにしておるぞ。それに、小娘。近くにおるか?』



ふぁ!?なんでわかるんだ!



「は、はい!!」


『貴様の腕をまた味わいたい。あの悪魔に酒でも選ばせて、貴様の肴で宴でもしようぞ。そうでもせんと喰い損ねた魔物どもがうるさくて敵わんのだ』


「あ。はい…」



ほんと(しょく)って、どんな生き物にも共通して影響強いね。料理学んでよかったよ。



『では。楽しみにしているぞ』



そしてシルバはあっさりと通信を切ってしまった。



「…興味深い魔物だ」


「そうでしょ。面白いよね」


「龍を知り、そして私が銀龍であることまで知っていた。畏怖はあれど、怯えはせんか。魔物というには……ふむ」


「まぁ…人間の姿に変身もしてたし」


「なんでもありか」


「銀さんだけは言えないと思う」



銀さんはそうだな、と微笑を浮かべ、それから魔物の目を変える。



「ゼロ。始めるぞ」



返事を待つことなく足元が光に覆われ、体が転移するあの感覚に襲われる。しかしそれはすぐに終わり、気づけば表のルナティクスの銀さんの執務室にいた。


同じく、ゼロさんとクガネ、銀さんがいる。



「……それが裏か」



銀さんの掌には大きな水晶玉のようなものが浮いていて、中にはルナティクスの空や森が見えた。その水晶体を守るように、銀色の龍が絡みついている。

まるで生きているかのようにリアルだ。実際これが銀さんの本当の姿だというなら、生きているんだろうけど。



「あの場所を縮小し、持ち運ぶことができるようにした。皆には少し眠ってもらっている」


「こんなちっちゃくなったら、るぴはもうみえないな!」



いやー、ルピどころかみんな見えないと思うけどね。



「しろ!おれがもっとく!」


「これは私にしか触れることもできん。それに、この状態は長くはもたん。早急に例の森へ移動する」


「……え。どうやるの、それ」



銀さんはルナティクスから出られない。早急にというのだから、乗り物にのっていくのは難しいだろう。それじゃ間に合わない。



「ここの転移魔法陣を改変し、座標を例の森へとセットした。同時に、表と裏との接続を切り、空間の状態をもとに戻す。最後に転移だが、それらが可能だけの魔力が必要になる」


「……よくわかんないけど、とんでもないよね!?それ」


「私がするわけにもいかん。表のルナティクスには、私の力の残滓があるから存在できているとはいえ、私とて今はこの形を保つのが限界だ。無駄をすれば本体に還ることになる」


「え!???」


「そうなれば私の本体を基盤としてつくられたルナティクスは消滅する。だから、頼んだぞ。ゼロ。お前の魔力が頼りだ」


「イリス、いいから任せてろ。全員離れてろ」



ゼロさんがそっとわたしとクガネを離す。そして何をするかと思ったら、急にあの暴走状態に変身した。



「ち、ちょっ!?」


「う゛う!!」



そしてそれに同調するかのように、銀さんの手にもつ水晶玉から魔法陣がいくつも浮かび上がり、天井や床、空間に刻まれていく。円錐状だったり、球状だったり、単なる羅列だったり。様々な魔法陣が飛び出しているかのようだ。


それは、ゼロさんの魔力を食べるかのように闇を吸い取り、大きくなっていくが、何も起きない。



「…くそっ。まだ、かよ!」



ゼロさんは真っ黒い闇に覆われ、魔法陣の中心で片膝をつく。背中の翼は凶悪さを増し、濃い闇はゼロさんを染め上げるかのようだ。


そして、確実にゼロさんは苦しんでいる。何をしても顔色ひとつ変えないゼロさんが、汗を流し、牙を覗かせて食いしばっている。



「……どうした、ゼロ。計算上では問題ないはずだが、異空間に縮小したとはいえ限界か?」



銀さんは顔色を変えずに魔法陣を操作する。


ただ光輝いていた魔法陣が、まるで炭で染めたかのように真っ黒になっていった。



「あ-、もう知らね。クガネ、暴走したら頼んだぞ」



めんどくさそうな一言のあと、赤い瞳が力なく閉じた。


そしてカチリとスイッチが切り替わったかのように、闇の出力が変わった



「!!!!!!」



電気がちかちかと点滅し、部屋に置いてあるものが木端微塵に壊され、床がきしみ、天井からぱらぱらと破片が落ちてきた。


思わずわたしも飛びのき、クガネに至っては戦闘体勢を整えるくらいだ。爆発するようなそれは、今までのゼロさんにはない何かが見える。


魔力は精神を司るものだから、想いの力で変わることもある。

でもそれは正直精神論のようなもので大きな変化はないと聞いていた。

聞いていたけど、現実に今のゼロさんの破壊的な魔力は、まるで心を削っているかのようで、その対象じゃないわたしにも、怒りや憎しみ…何か分からないものが全身を貫いてくる。


許さないという怒り。理解できない苦しみ。もがいてもがいて、今までの人生の想いを凝縮したかのような……。


この激しさは、まるでゼロさんのものじゃないみたいだった。



「っっゼロ!もういい!やめろ!!」



魔法陣は全て真っ黒に染まり、銀さんは即座にそれを発動し景色は暗転した。





連続投稿してみました

とくに理由はありません笑




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