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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第三章 崩れる
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02




「イーリスさん、オレはやりますよ!絶対この街を今まで以上にいい物にします!」


「やられたらやり返す。それっきゃねぇよ」


「町一つぶっ壊されたなら、街二つ壊さねぇと気が済むか!」


「腕をなくしたからな。敵の腕をいくつ集めればいいか」


「娘の仇だ。苦しんで苦しんで死ねばいい!全員な!」


「イーリスさん。おれ頑張りますから」


「街のため、死んだ奴のためにやるぜ」



猟奇的な目と言葉。悲しむ人はもういない。


これは良いことなのか、悪いことなのか。わたしには判断がつかないけれど、狂気的な感じになっているのはよくわかる。



「母さんが死んだのに、お父さん泣かなくなっちゃった」



ゼロさんの言葉についていけない子供たちや一部の人たちは泣いていた。悲しんで、痛みに呻いていた。


わたしは何も言えない。


無気力に悲しむのと、激しすぎる感情で動くのと、どっちがいいのかなんてわからない。



「お父さん、母さんが死んだのに笑って、うれしいみたいで怖いよ」



わたしにできるのは、悲しむ人たちに寄り添うだけだった。



一通り治療も終わり、街の人も休息を取り始めた。わたしも一息つく。



「問題あったか?」



気づけば背中にゼロさんがいた。



「…わからないけど、きっと良くはないことなんだと思う」


「だろうな」


「……」



じゃするなよ、とは言えない。



「ゼロさんのしたことは良いことじゃない。でも、悪いこととも言えない。

無気力に悲しむのが、いいことではないと思うから…。でも、悲しむ心も、何もできないくらいに打ちひしがれることも無くなるのは……それもいいことじゃないと思う」


「それが人間で、道徳あっての行為だからな」


「…ゼロさんには通用しないわけだ」


「俺にとっては無駄でしかねぇからな」



わたしはやろうとしてもできないし、何とも言えないけど。


じっとするより動いた方がいいに決まってると思うけど。


その人のためにも目的があった方がつらくないとも思うけど。


…釈然としないな。



「この状況だからな。アガド攻略は多少遅れるだろ。銀が準備してきたものも色々崩れただろし、正直それどころじゃない」


「うん。それはわかってる。大丈夫だよ」


「そうか。じゃ、頑張れよ」


「ん?え、なにを…」



と、後ろを向くと銀さんがいた。


ゼロさんは、上空を飛んでクガネのとこに行ってしまってる。



「私に用があると聞いた」



用!?


あ、あああ。あるけど、こういきなりするか。

さすがはゼロさん。人のこと考えてくれない!



「え、えっと。まずは、お疲れ様です」


「ああ。苦労をかけた。少しは休め」


「大丈夫。ありがとう」



さぁどうしよう。


いくらわたしでも話すのに勇気がいることだってある。



「表のルナティクスでは私の力も十分には使えない。すまないが、話してくれなければ理解できない」


「あ、いや、わかってる。龍だってバレないようにするためでしょ?」


「そうだな。私の力は人の範疇を超えている。表でそれを晒すわけにはいかない」



そりゃそうだ。もし裏の銀さんだったら、敵襲なんてできるわけがないんだから。来る前に撃墜だ。


銀さんはパフォーマンスの意味で、魔法も魔法陣も使えるけど、本来はそれよりも上位の龍の力を使っている。表ではエデンの中でしか一部でしか使っていないらしいし、それも自由自在じゃない。



「聞きたいことはそれか?」


「いや、違う。えーっとね…」



わたしはなんとか伝えた。

ティナを消すという目的について。



「そのことか」


「うん。友達の龍のことしか目的って聞いてなかったから」


「確かだ。私はティナは滅ぶべきだと考えている」



最初に浮かんだのはゼロさん、そしてリオとルナの顔。


胸がずくんと痛んだ。



「私は、ティナとは憐れなものだと考えている」



銀さんは虚空を見つめる。



「生き物は死んだらそこで終わりだ。にも関わらず、ティナは生まれ変わり、また死んでいく。ティナの魂に痛みの概念があるのかどうかまで定かではないが、何度も生まれなおし、また滅びを知る。それは苦しみしかないだろう。

人間もそうだ。ティナを司ることを拒否することもできず、常に自我を失う危険性の中で生きていかねばならない。それは強制的に人として生きていく道を閉ざされたのと同義だ」



わたしもゼロさんから聞いて、考えた。だからわかる。


銀さんは優しいから、だから苦しみ続けることが無いように、新しい犠牲者ができないように滅ぼそうとしている。



「不満か?」


「不満ではないけど、少しだけ、悲しい」



ゼロさんも、リオも、ルナも。きっと了承の上なんだろう。だからわたしが悲しむのも否定するのもおかしい。理由もわかる。納得もできる。でも、悲しい。



「イーリス。全て理解しろとは言わん。それをするには、お前は友人が多すぎる。ただ、私に反抗したところで、なによりゼロを止めることができないだろう。

私の目的がティナの消滅といえど、それを行うにはゼロの力が不可欠だ。あいつが壊さないというなら、ティナは存続する」


「………それは、無理だ」



ゼロさんの考え方を変える?


ゼロさんの場合は敵になった際のことを考えた対策法だ。

今までに、実害があっての行動だ。銀さんのような優しさからくるものじゃない。


ただでさえ感情論で説得できるタイプじゃないのに、説得は難しい。



「そう。だから考えるな。考えることが無駄とはいわんが、必要ではない」


「うん……」



ゼロさんが今日やったこと。銀さんがやってきたこと。


二つともきちんとわかる。わかって、納得して、それでも………。


拳を堅く握る。結局、わたしには何もできなかった。




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