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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第二章 旅
131/340

18




ゼロ専用に作った、月を支点につくった転移術式。それが発動し、天より光が差し込む。


転移先は本来なら裏のルナティクスだが、それを操作。ここへと呼ぶ。


…どうやらゼロの魔力ではないようだ。

しかし敵意はない。ゼロが手を回した何かによるものだろう。それにしても良いタイミングだ。


光を眺めながら、首元を締め付ける襟を引っ張った。



「おい」



声が降ってくる。



「おい、何があった。これ」


「………お前は本当に、自由気ままな奴だな」


「何があったって聞いてんだよ。見る影も無くなっちまって」



ここは表のルナティクス。


あれほど栄えた繁華街は消え失せ、今あるのは負傷者と瓦礫の山だ。中心地であるカジノ、エデンは大きな外傷なく姿を保っているが、周りはひどく壊されている。


私はその中心地、エデンへとつながる階段に座っていた。



「空からの爆撃だ。魔法ではない。物理的に爆薬を落としたのだろう。街の魔法陣は事前に破壊されたせいで壊れたが、エデンはさほど被害を受けていない。本当の目的は私か裏かだろう」


「…で、裏は?」


「通路を閉じた。全ての転移魔法陣も一時解除している。私を殺せば道は開かれるだろうが、それ以外に干渉するのは不可能だ」


「じゃ、裏は問題ねぇのか」


「私が不在であることでの問題はあるだろうが…。今、私が表から消えるわけにはいかない。裏の存在を確定させる行動はとれん。それに、(ココ)を守らなければ裏は存在できないからな」



今は銀の連合を総動員して、情報を集め体勢を立て直している。誰が街の防御術式を破壊したのか、何処が襲撃してきたのか。


しかし、もともと連合は団結力の固い集まりではない。今動いているのも、自らの欲の塊が壊されたことでの怒りが動力になっているに過ぎない。その怒りの矛先が互いに向くのも時間の問題だろう。



「銀さん、大丈夫なの?」


「イーリス。よく戻った。このような有様ですまない。疲労時にすまないが、怪我人の手当てに回ってくれるか?」


「もちろんいいんだけど、銀さんに怪我は?」


「問題ない」



しばらくイーリスはじっとこちらを見て、それから頷いて走り始めた。その後ろを見慣れぬ虎が走っているが…あれは魔物か。



「しろ!ごめん!おれがいなかったから、おれがいないせいで!」


「クガネ。お前のせいじゃない。お前が守るのは裏と裏にいる私だ。気にするな」



クガネの首には鋭い牙が下がってた。抜け落ちたそれには、強い魔力を感じる。通路を開いた主の者だろう。想定よりも強大な魔物のようだ。今でなければ存分に調べつくしたいところだがそうもいかない。


クガネの耳と尾を視認されないよう術をかける。表のルナティクスではさほど効力もないが、今の混乱状態ならば気づく者もいないだろう。



「きにするなっていわれてもきになる…おれは、なにすればいい?」


「見張っていてくれ。何かしら争いが起きたら吠えて知らせろ。クガネの咆哮なら大抵の喧嘩は止むだろうがな」


「うん。うん!わかったぞ!おれはたかいところからみてる!」



そう言ってクガネは空高く飛びあがった。



「…で?」


「で、とはなんだ」


「その敵を殺してほしいのか、敵を明確にしてほしいのか、ここの守りを任せたいのか。どれだよ」


「……お前というやつは…」



相手を労うでも状況の心配するでもなく、次の行動の指示か。ゼロらしいの一言で片付いてしまうのが更に問題だな。



「敵は目星がついている。おそらくギルド間が手を組んだのだろう」


「…暗殺とハンターか」


「おそらくな」


「消すか?」


「ギルドは中枢がなくなっても消えてなくなりはしない。追うだけ無駄だ」


「だから昔言ったろうが。全部のギルド長どもをここに呼んで薬漬けにでもしろって。ああいう権力者が、騒動を起こすんだよ。手駒にしとけば中から腐らせれるだろ」


「私がこの世界に影響を与え続ければ、同種(アレ)に見つかる可能性がある。表立って動くことはできない」



同種。龍が戻る理由は存在の隠滅。つまりは私を消しに来るということだ。


龍の序列2位である私を消しに来るとしたら、それは序列1位の龍。あれとは会いたくない。



「んなこといいんだよ。俺は早いとこアガドの件を終わらせるって言ったろうが。こんなくだらねぇことはさっさと終わらせる」


「そうか」



それならば、早くこの騒動を終わらせるためには。



「場所を移す」


「……あ?」


「場所を移す。壊れた時点でここは捨てる。環境の適した所を見つけたらそこへ移動。その間に敵を駆逐する」



ゼロの視線が貫く。


言いたいことはわかっている。表では思うように力を行使できない。それでも測れるものはある。



「止めるつもりか?」


「…よくもそこまで頭が回るな。人間かどうかそろそろ疑わしくなってきた」



そう。表がなければ裏は存在できない。表が眩く輝くこそ、裏は闇に紛れることができた。

そして多大な魔力が表から供給されて、裏は存在している。それが絶たれるとなれば、裏は隠れてはいられない。表舞台で行動する必要がある。


しかしそれは許されない。ならば、裏のルナティクスの時を止める他ないのだ。



「どちらにしろ今のルナティクスは稼働していない。裏が存在できなくなるのも時間の問題だ」


「どうせ一度止めたら戻すのに暫くかかるんだろうが。10年くらいか?」



本当に、勘が鋭い。



「で、お前もどうかなると」


「……そうだな」


「却下だ。アガドの攻略にはお前の頭がいる。銀の連合もお前がいてこそだろ。俺を後継者にしようとしてるなら断る」


「それならばどう解決するつもりだ?」



ゼロは自信ありげに口を歪める。



「要は、裏は隠れて存在するために多大な魔力があれば問題なくて、表は敵を消してまた裏を隠すためのハリボテになれるよう復興すればそれでいいってことだろ。


まだまだだな、銀。まだ人間の使い方を理解してねぇよ。別に何もしなくていいんだよ。俺も、お前もな」




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