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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第二章 旅
128/339

15




ゴルドの足は速く、それでいてそこまで揺れず、快適に走り抜けて目的地までついた。


なんだか不気味な森。ゴルドが通れるほど木と木の間が空いているのに、一切光が差さない不思議な場所だ。


音もない。風に木々が揺れる音すらない。


なんだろう。お化けとか出ちゃいそうなかんじだ。



「くうきがきれいなところだな、ごるど。いいところだ」



クガネは上機嫌である。クガネはお化けを見ても、食べると何とか言いそうだな。


それからしばらく歩くと、少し開けた場所にでた。


光る草は、苔があるような、なんだか神秘的な場所なんだけど、わたしにとってはアガド牢獄を思い出す場所だった。ただ、アガドと違って足元は柔らかい芝生みたいで気持ちいい。


ぐるる、とゴルドが唸った。クガネが反応し、ゼロさんに声をかける。



「ぜろ。ここでいいみたいだぞ」


「………暗ぇな」


「でもまだひるだ。すずしくてきもちがいいぞ!」



起き上がったゼロさんはすぐさま辺りに気を配る。殺意も含めて周りを警戒し、邪魔な何かを近寄らせないようにするのだ。そ

して首を傾げ、空気を大きく吸う。



「…すごいな。マナの量が違う」


「マナ?あの魔力の元になるやつ?」


「ああ。ここまで濃いと魔物が生まれやすいし、魔石だって多くなる。

軍に管理されていてもおかしくねぇんだけど…。それに俺は夜しか魔力回復しねぇのにここは別ならしい。」



少し得意げにゴルドが唸る。どんなもんだいってかんじだ。


そうか。魔力の元がたくさんあるところなら、ゼロさんの回復も早いということか。ゴルドやるじゃん!



「ただ…ここに住んでるやつは、ちょっとまずくねぇか」


「住んでるやつ?」


「ここのマナを何年食って生きてんだか」



ゼロさんのその予言めいた発言のすぐ後だ。

泉が盛り上がり、それが現れたのは。



『人の子が。神域になんのようだ』



大蛇だ。


真っ白で、銀の鬣がある、ゴルドが小さく見えるほどの大蛇。


蛇に睨まれたカエルというけど、今わたしがそうなっていた。



「…銀に似てる」



ゼロさん、何をおっしゃいますか。



「そういえば…龍とドラゴンの違いについて、あいつに言ったことがあったな。

龍は要するに手足のある蛇で、ドラゴンは翼のあるトカゲだろって」



それで目の前の大蛇は銀さんみたく龍のようだと?


いやいやいやいや、それだと尚のことまずいよ!笑ってる場合じゃないって!


というか銀さん相手によくそれ言ったね!!



『ほう。貴様は龍を知っていて、儂を龍と呼ぶか。嬉しいことを言ってくれる』



なんか喜ばれてる!?



『人の子。貴様は忌み子か』


「…古い呼び方だな。相当年くってるだろ、白蛇」


『かっかか。儂を前に良い度胸をしておる。忌み子、今はティナ持ちか。何のティナを身に受けておる?』


「悪魔」


『それはまたけったいなものを。よくも人の形を保っていられるものだ』



なんか、盛り上がってます。ゼロさん流石すぎて何も言えません。


そして、意外にも同じく彫刻になっていたのがもう一人。クガネだ。野性的な何かに響くものがあるのかもしれない。



「お前はずっとここにいるのかよ」


『種族戦争の終了間際から、儂はここで主を務めておる。儂は始まりの魔物じゃ』


「なるほどな。殺すのに苦労しそうだ」


『儂の首をとると?かっかか。その気もないくせによく回る口よの』



ゼロさんがにやりと笑って、大蛇さんの前に腰かける。


おわー、近い近い近い。一瞬でぱくんってされちゃいますよ!



『…まことに、良い度胸をしておる』


「ここに滞在する前提で家主に挨拶なしじゃな。祟られそうだ」


『儂にそんな力があるとでも?』


「さぁな」


『質問を変えようか。儂が怖くないのか?』


「正直怖いという感情がよくわからん。危険だとは思うが、どっちにしろ殺しにくるなら殺すまでだ。相手が白蛇だろうが人間だろうが変わらねぇよ」


『くくくく。伊達に人間の身に悪魔を宿していないということか。恐れ入ったわ、人間。気に入ったぞ』


「そうかよ。俺もお前を飼いたくなってきた」


『カカカ。傲慢にも程がある。面白い奴だ』



大蛇さんはゆっくり泉から上がり、それと同時に姿を変えた。


さっきまでは見上げるほどの大きさだった蛇が、するすると小さくなっていく。


ゼロさんの前に立った時には大蛇の姿はなく、代わりに現れたのは少女の姿だ。


それを見て、ゼロさんから殺気があふれる。



「お前冗談もほどほどにしろよ。殺すぞ」


『儂なりの傲慢の示し方よ』



少女は少女らしからぬ声で応えて笑う。


どうやら大蛇さんは少々悪戯好きのようだ。ゼロさんは何も言わずに目を背ける。


誰かはわからないけど、その白い少女が何なのか。わたしでも想像はつく。



『貴様名はなんという?』


「知らん」


『ふむ。ないではなく、知らぬ、か。ならば貴様で良いな』


「好きにしろ、白蛇」


『龍への呼び方と同義とは、これは誉れと思うべきであろうな』



完全におじさんの声を発する少女というのは、なかなか奇妙なもので違和感がすごい。そして少女の姿というのに、未だにわたしもクガネも動けない。


なんだか、威圧感みたいなものがすごいのだ。息がしずらい。空気が張り裂けそうだ。



『これらは連れの者か』


「一応な」



いや、たぶん動けるのがおかしいんだ。


見た目少女だけど、喋るときに口は動いていないし、姿だって見せかけ。最初にみた巨大な大蛇であることに変わりはない。



『小娘。なぜ何も言わん』



な、なぜって言われてもですね…。



「怖いから、です!」


『くくく。素直でよろしい』



それから大蛇さんはクガネに目を向けた。


クガネは尻尾をぴんとたてて、耳をへなりと寝かせている。



『…小僧。貴様は…』


「おれはくがねだ!お、おまえは、おとうさんのむれか!?」



クガネは震える声で拳を固め、そう吠えた。


左右で色の違う目が揺らいでいる。勇気を振り絞って言ったのだろうが、大蛇さんは首をかくんと傾げる。



『おとうさん?父という意味か。儂は人間や犬に仕えたことはないが…待て。貴様はなんだ』


「おれはくがねだ!」


『…混ざっているのか』



途端に少女は姿を消し、どさりと倒れた音がしたと思えばクガネに覆いかぶさっていた。


止めるはおろか、あっと言う時間さえない。今クガネが殺されててもわたしは何もできなかっただろう。



『………儂は(こうべ)を垂れる必要があるのかもしれぬ。よもやこのような形で、方々(かたがた)に会うこととなるとは』



大蛇さんは悲しげに笑い、そっとクガネから離れた。



『忌子として現れぬ以上、地の果てのどこかに生き残っておられると(のぞ)みを持ったが、人の子を守ったか…。

クガネよ。儂は父上どのの群れではない。しかし敬愛はしておった。ここで出会えたことを嬉しく思うぞ』




「…そうか!おとうさんのともだちか!」


『そのようなものだ』


「そうか!おとうさんにはもうあえないけど、ともだちにあえた!おれもうれしい!」



クガネはいつものように尻尾を振って、耳をたてて、満面の笑みで大蛇さんに飛びついた。


少女の姿でも力は変わらないのか、ふらつきもせずにそれを受け止める大蛇さん。抱きしめたまま、大蛇さんの目はギラリとこちらを向いた。



『二人は滞在を許そう。しかし、小娘はだめだ。儂は人間を好ましく思っておらん。それに、小娘は面白くもなければ得もない』



それに抗議したのは、まさかの唸り声。ゴルドだ。



「ガウ!」


『…なんだ。何を言っている?』


「ガウガウガウウウウ」


「そうだぞ!ともだち!いーりすはなんでもできるぞ!」



まて。獣たちで会話しないで。意味わからないから。


そしてクガネ、わたしはなんでもできませんよ?



『…よかろう。では頼んでみるか』


「ガゥ!」


「よかった!な!いーりす!」



だから何!!




8月も終わりです

お読みいただきありがとうございます( ´ ` )


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