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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第二章 旅
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トラの上というのは案外寝やすいもので、振り落とされることも、ぐらぐらとずれることもなかった。


魔物は基本的に賢いから、そういう風に動いていたのかもしれない。今は近くの泉で休憩を取っていた。



「おい、トラ。お前火くらいだせんだろ」


「・・・」


「それとも無能なデカネコか?ならバラして肉にする方が使い道あるんじゃねぇか?あ?」


「ゼロさんゼロさん、なぜ魔物ちゃん相手に煽ってんの」



こいつ、何喰わない顔してるけど、俺のこと心底怖がってんだよ。それなのに強がってる感じがなんか気に食わねぇんだよな。獣なら獣らしく、降参して腹でも出してろ。



「こら、ぜろ!おれのむれをいじめるな!」



クガネは水泳に勤しんでいる。ちなみに犬かきしかできない。



「お前の群っつってもルナティクスには連れて行けねぇだろ。たかだか魔物を。意思疎通もとれねぇし」


「そうか?しろならなんとかしてくれるとおもうぞ!」


「そんな奴をどうやって運ぶんだよ」


「もちろんはしるぞ!」


「走ってルナティクスまで行けるか、馬鹿。そんな目立つトラを連れて船になんか乗れるわけねぇし、俺用の通路も、こんなくそ重いやつ抱えていくなんざごめんだぞ!」


「そこをなんとかってやつだ!」


「なんとかならねぇよ、この馬鹿」


「ねぇねぇ、それよりこの子の名前どうする?」



こいつも話きいてねぇな。捨てろって言いたいんだけどな、俺は。



「きいろのとらだから、きいろとらだ!」


「うーん、とらすけ?とらとら?」



ネーミングセンスが絶望的だな。

心なしか、この虎も顔つきが戸惑ってる。



「トラでいいだろ」


「ゼロさんのネーミングセンスないなぁ」



こいつぶっ殺すぞ。



「よし!じゃあきんにしよう!おれのくがねってなまえも、きんといういみだってしろがいってたぞ!」


「おお!キンちゃんかー!」


「きんきらきんだぞー!」


「きらきらちゃんだー!



やめろ、トラ。そんな目で俺を見るな。なんでこういうときだけ救いを求めるんだよ。


あ、こいつ腹見せやがった。



「……せめてゴールドにしてやれよ」


「ごーるど?」


「金の意味。お前もクガネって多少ひねってんだから、こいつにも多少工夫してやれよ」


「ごーるど…ごるどか!よし、じゃごるどだ!」



トラは歓喜の咆哮をあげた。


それから夜明けが近いという最悪のタイミングのため、適当にイリスの飯を食い、虎が餌付けされるのを見届けた後、俺は眠ることにした。

便利なことに寝ている間もこの虎が移動してくれるらしい。クガネが通訳するに、連れて行きたいところがあるようだ。



「にんげんのくびわをこわしてくれたおれいだって!」



それやったのはクガネだが、まぁ楽できるならいいだろう。休んでいられるのは助かる。助かるが、こいつらがなぁ…。



「おれがついてるからだいじょぶだぞ、ぜろ!ゆっくりやすんでろ!」



ものすごく不安だ。



「わたしもついてるから大丈夫だよ」



いや、変わらず不安だな。



「おい、任せたぞ。トラ。面倒なことにしやがったら解体するからな」



トラの目がぎらりと光り、大きく頷いた。

よし。多少安心できた。



「クガネ。わたしとクガネよりも、ゴルドの方が信用あるみたいよ」


「う?」



うるせぇよ。

お前ら二人に任せられる理由がひとつもねぇだろ。


俺は無言でトラの背に昇り、上着で全身を隠して転がった。

太陽がなきゃ、よかったんだけどな。





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