09
途端に部屋の外が騒がしくなり、念の為に物陰に隠れた。クガネもどうにか引っ張り込む。
「おい」
現れたのはゼロさんだった。
あと、誰かを引きずっている。
「部屋を空けろ。尋問する」
「いいけど、どうしたの?誰?」
「情報を持ってるやつ。いいからどけ。クガネもな」
その情報をもってるらしい誰かは、恐らく最初向かう時に言っていたティナ持ちなのだろう。
体は石の色で、翼がある。小柄だが、壁や床に体が当たる音が普通じゃない。
よくわからないけども、とりあえず出ることにした。小柄なクガネは、ゼロさんに片手でつまみ出された。
情報か。聞いちゃいけないやつかな。
話し合いがあるならお茶くらいだすけど……
「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!」
「ちょっと!ゼロさん!?」
扉を閉めた瞬間に響く悲鳴。
思わず扉を開け放つと、相手に馬乗りになったゼロさん。その手にはへし折れた翼があった。
「あ?開けんなよ」
「情報ほしいんじゃないの!?」
「いや、だからやってんだよ」
ゼロさんは当然のように、今度は相手の腕をへし折った。
「い、いぎゃぁぁあ!やめ、やめてくれ!話す!最初から隠すつもりなんでねぇ!」
「そうかもなぁ。でもそれが本当かは分からねぇだろ?」
「ひぎぃぃ!!!」
突如始まる拷問に、思わずゼロさんに飛びついた。
いや、ほんとこの人は。
昔の話は聞いたけど、それにしても、人の痛みとか命とか、そういうことを知らなさすぎる。
「止めんな。尋問中だ」
「話すって言ってるよ!」
「当たり前だ。それは、当たり前。
なぁ、ガーゴイル。話すよなぁ。全部、包み隠さず、話すよなぁ。
じゃなきゃ殺す。指先1ミリずつ、順に壊して殺してやる。嘘でもついてみろ。死に方がそれで楽だと思うくらいに、念入りに殺してやるよ」
恐怖。
この部屋は一瞬でそれに満ちた。
同じティナ持ちでも、色々と、違いすぎる。
「話ず!全部、必ず嘘もつぎまぜん!許して、許しで!」
「何を、だよ。意味わからねぇこと抜かすな」
また腕が折れる。
この人の立場もどういう状況かもわからないけど、これはあまりにも……。
「ひ、酷すぎる!おでは!言うって、言ってるのに!!この悪魔!この化物!!!」
泣きじゃくりながら、そいつはそう言った。