06
こいつは、馬鹿だ。
何がメリットだ?なにもないだろ。
脱獄した時の、あのときからそうだ。
無駄に名前聞いてきたり、死にかけながら俺を助けたり、平気で隣で寝たり休んだり協力したり……。
なんだよ。意味がわからねぇ。
俺の知らない人種か。
「………」
「ゼロさん?」
そして、俺も、つくづく、どうかしてる。
何で……こんな契約むすぶかな。
無視すりゃいいのに、やめときゃいいのに。
……らしくねぇな。ほんと。
今回なんだ?教会のヤツらに浄化されすぎたか?
「………休む」
「ん?」
「俺もいろいろヤバいんだろうって思えてきた」
あー。やばいよなぁ。
ここまで信用してくれって言ってきてて、何度も体も命も張って、今回も助けられたコイツに。
俺はこういう形じゃないと、信用するなんて、当たり前のことが出来ない。
壊れてる、か。
「休むなら寝転んだら?」
「いや、いい」
「……大丈夫?落ち込んでる?」
「は。そんな感情覚えたことすらねぇよ」
でも、まぁ、そうかもな。
若干気落ちしてるか。
「……イリスでいいか?」
「え?」
「呼び名。本名は…長いし呼びたくねぇ」
「うん。いいよ!わたしも本名じゃないし、お互い様」
お互い様じゃねぇよ。
俺のは本当にわからなくて、お前のはわかってんだろうが。
「…休む。少し静かにしててくれ」
「うん。ゆっくりして。これから、宜しくね、ゼロさん」
落ち着いた鈴の音は、柔らかな声で言った。
「……あぁ」
……は。
得意気になりやがって。
俺を過信しすぎるなよな。