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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第二章 旅
116/339

03




「嬢ちゃん、おかわりー!」


「こっちもだ!追加追加ぁ!」


「酒がたらん!もってこいや!」


「馬鹿野郎!自分で取りいけ!」



食堂は大賑わい。


品性の欠片もない野暮な空賊どもは、飢えた野犬のようにガキの料理に群がりむさぼっている。

ガキもガキで無茶苦茶な要望に答え、次々と望みの品を出し続けていた。



「いーりすー!にくー!」


「お前は生肉(コレ)で我慢しろ。あいつ大変だろ」


「う?ありがとう!」



こうして仕事ぶりを見ているが、あいつ本当に有能だな。掃除のときにも思ったが、無駄な動きが一切ない。

効率を重視しながらも質が想像以上に良い。こいつなら連合にも入れるんじゃねぇか?誰かにしごかれたのか、もともとの性質なのか知らねぇが。



「いい子だねぇ。うちにもらいたいくらいだ」



頭のばあさんが酒瓶を片手に隣の席に座った。



「あれはあんたのものかい?」


「なわけねぇだろ」


「違うのかい。それじゃ、連合の当主のものかい?」


「誰の物でもねぇよ。決まった相手がいるとは聞いてない」


「そうかい。見栄えもいいし気立てもいい。おまけによく働く。陸の連中が放っとくとは思わなかったが、それならうちにもらってもいいんだね」


「俺に聞くな」



俺はあいつの保護者でもなんでもない。たまたま脱獄の手伝いをすることになっただけだ。

あいつの先のことなんか知ったことか。



「あんたにも良い相手ができたと思ったのにねぇ」


「あ?」


「あんたの年齢は正確には知らないけど、そろそろ相手がいたっていい年頃だろ?」


「仮に俺がそうなるほど人を好きになったとしら、全力で突き放すだろ」



現在進行形で軍や教会、国に狙われ、果てに待ってるのは俺のティナ堕ちだ。


死ぬほど守りたい奴にそんな地獄を味わらせるかって。



「かっかっか。そうだったね。あんたは地獄の悪魔だった」



ほろ酔い加減のばあさんは何が嬉しいのか、顔を綻ばせて酒をグラスに注ぐ。ガキが磨き上げたグラスは琥珀色の液体を美しく映した。



「あんたとの別れはさみしいねぇ」



くるくるとグラスを傾け、回し、また傾ける。


空賊らしからぬ柔らかな表情。



「……お前そろそろ死ぬんじゃねぇか?」


「失礼なガキだね!アタシゃまだまだ生きるよ!あんたより長生きしてやるさ!」


「へぇ?婆には難しいだろ。今俺を殺せばもれなく願いは叶うぜ?」


「馬鹿なことを言うでないよ。できると思ってないだろうに。そんな予測もたてられないほど狂気に飲まれてるのかい?」



笑いながら、軽口をたたき合う。この婆は昔からこうだ。絶対に退きはしない。変わらないもんだな。



「はぁ、契約終了ねぇ」


「喜ぶべきことだろ」


「そうねぇ。確かにリスクは大きかった。それは認めるよ」



この空賊とは以前契約を結んだ。


―この場を救う。その代わりに俺のために動け。―


別に破ろうが俺が何かするつもりはない。


ただ、何故か悪魔との契約に対して相手は抗えないらしい。


俺はもともと守れない契約を結ぶ性質じゃねぇから、そこんとこよくわからねぇけど、銀曰く、昔は悪魔と契約する生き物は多く、その契約を破れば、そいつらは死ぬよりも恐ろしい目に遭ってたらしい。

それが本能的に染み付いているのか、それに基づくティナの能力かのどちらかだろう。と。



「覚えているかい?ゼロ。あの空を。あんたがここを救ってくれた日のことさ」


「忘れた」


「嘘をいうでないよ。あんたが軍を引き連れて来たんだ」



顔をしかめる婆。ああ、そうだったな。あの日もそんな顔して俺を睨んでた。



「控えめに言っても終わったと思ったね。空賊人生で一番の危機だったよ」


「まぁあんな真っ向から怒鳴りつけてきたのは婆が初めてだったな」


「昔からほんとにあんたは…口が悪いねぇ」



にやにやと笑いながら婆はそう言って、その口から昔話が始まった。


確か、あれはルナティクスにもまだ行っていない頃。まだガキでどうしようもないやつだった時のことだ。




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