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破壊の魔王  作者: Karionette
外界編 第二章 外の世界
11/340

03




「なんで生きてんだよ」



目を合わせたゼロさんからの第一声はそれだった。ほんとに驚いた顔してる。



「そんな弱くないよ」


「あのクラスの魔法に当たったら大抵のやつは死ぬぞ」


「魔法?」


「あ?」


「ヂュドーーンっていったからびっくりしてコケただけだよ?」


「………あ"?」


「え?」



だって、音がすごくて。ビックリして、倒れて。下が岩で、頭いたくて。一瞬気を失って……


え?



「………お前それ本気で言ってんのか」


「それは、もちろん、のことです」



ゼロさんの目が今までにないくらい怖い。腕を組んで、周りは闇がゆらゆらして、光る赤い目で睨まれるんだ。

誰だって動けなくなるよ、これ。



「あいてて…。なんだ?(オレ)の魔法が効かないって話か?」


「起きたか、ジジイ」



え。起きるの!?

全力で頭を殴ったのに血が出てるだけって…。どんだけ石頭なんだ!?



「危なかったぞ?嬢ちゃん。寸前で岩を砕かなかったら死ぬとこだ。ほぉー、いってぇ」


「ゼロさんを殺そうとしたおじさんが悪いもん」


「いやいや。ゼロが悪いやつなんだって。いいからこっちおいで。危ないから」


「いーや!ゼロさんは悪い奴じゃないもんね!オトナは嫌いだ!あっち行け!」



分かりやすいくらい落ち込むおじさん。



「いや。悪いのは俺だろ。犯罪者なわけだし」



あ、そっか。

でもオトナは嫌いだから行かないもんね。



「それよりも。このガキ、生きててよかったな」


「ほんとだよ。こんな可愛らしい子、殺さなくて……………なんで生きてる?」


「しかも無傷でな」


「…………」



なんか、空気がおかしい。

視線が痛い。



「ジジイ。まずは軽めに」


「さっきからジジイジジイ言うな。まだ30代だ!」



なんのこと?

あれ?ゼロさ。なんでわたしを猫掴みに……。



バリィ!



「ふあっっ!?」



なんかバリッて!

バリっていった!



「……もうちょいいってみるか」


「ゼロさん、なにを……」



バリバリバリリリ!!



「ふわぁぁぁ!ビックリした!」


「嬢ちゃん、それ、ビックリするで済むの?」



ちょっとこの人何をしてるんだ。さっきからバリバリバリと!

音がすごいし、なんかビリってする!?



「……嬢ちゃん、何者だい?さっきの一撃は熊もイチコロなんだけど」


「クマ?」


よく分からないけど、何かをイチコロにするのをよくもわたしにやったよね!?



「兄貴、ちょっと手だすよ。雷だけかもしれないし」



ビョオッて風が吹く。うぅ、目が乾く。



「……切り傷ひとつなし?」



目を開けると、ポカンとしたオトナが二人。ティナ持ちらしい人だけ呑気に座ってる。


そして、ゼロさんにいつもどおり、ポイッと投げられた。着地して睨むと、なんかニヤってしてる。



「えーとさぁ、要するに、このチビッ子は魔法が効かないってことだよね?」



ビョオッの人がおずおずしながら言った。



「魔法耐性が異常に高いのかも知れねーけど、それってさ。まずくね?魔法が効かない存在がいて、それがゼロの手元にあるって」



魔法が、効かない。


ん?


ちょっとビックリするだけで、死なない。


ん?



「んー、ティナ持ちのボクは関係ないけど、まず捕まえろって言われるだろうね」



捕まる?


そうだよ。魔法が効かないんだ。最強の力が効かないんだから、そんな存在がいたらまずいんだ。


どうしよう。


ゼロさんにならいいけど敵に知られてしまった。倒す?いや、無理だ。不意討ちでも倒せなかったのに今からなんて絶対無理。

というか魔法が効かないんだったら脱獄の時ウラガたちも助けられたんじゃないか!

いや!いやいやいや!そんなことは考えなくていいんだ!今さら遅いんだから!


どうしよう、え?どうしよう……。



「簡単な話だ」



ゼロさんがぽんとわたしの頭に手を置いた。



「言わなきゃいいだけだろ」


「そうだぞ、おめぇらはホント頭悪いなあ」



当然のごとく、言ってのけるゼロさんと髭のオトナ。


ビョオッの人は、そうっすよねーあんたはそういう人だよねー、と項垂れて、ティナの人はりょーかいと気の抜けた返事をした。


悩み事は、即解決したようだ。



「で、まだやるか?ジジイ」


「いや、帰る。子供がいる時点でこっちはお手上げだし…」



髭の人はガリガリと頭をかきむしりながら、諦めたようにため息をつく。



「その子どうするつもりだ、ゼロ。返答によっちゃあ、今から戦闘開始だ」



ギラリと髭の人の目が光る。ゼロさんはニヤリと笑うだけで何も言わない。

しばらく静かなにらみ合いが続いた。


折れたのは髭の人だった。



「……死なせるなよ、ゼロ。こんな小さい子を使おう、なんてするな」


「頭にはいれとく」


「ちっ。何言っても無駄か。おーい、撤収だ。撤収ー。忘れ物すんなよー」



撤収。

帰るってことだ。



「いいけど兄貴、なんて報告すんの?コレ」


「戦闘開始→定時だから撤退で」


「クビになりたいのかな?この人」



髭の人たちが去っていく。

なんか変な関係だ。

ゼロさんも追わないし、この人たちも戦わないし。さっきは本気だったのに。


ゼロさんとは敵同士のはずなのに、なんか……。


それより、なんか、あれ?



「ゼロ。またね。今度もよろしく」


「二度と来んな。生きてから出直せ」


「そんな無茶なこといわないでよー」



みんなが視界から去っていく。



「あ?おい!」



なんでだろう。


目が、見えない。息が苦しい。音が、ボヤボヤする。


ゼロさん?どこにいったの?




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