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破壊の魔王  作者: Karionette
アガド攻略編 第一章 一年後
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「しろ!はなしだ!」



扉を開け放ったのはクガネ。改まって何の用かと思えば話、か。クガネにしては珍しい。



「どうした。手短に話せ」


「おれもいーりすをたすける!」


「………ああ、そういうことか」



クガネが外に出る。


私でも、正確にクガネが何者かはわからない。何度も調べたがその全てが新種を示していた。


いくつもの生き物の要素をはらんだ姿はキメラにも思えるが、それにしては、人の色が残りすぎている。



「私はお前に外に出るなとは言ってはいない」


「う?でもしろはいやなんだろ?そんなにおいがするぞ」


「この場所のこと、そしてお前自身を考えれば得であるとは思えんからな」



クガネは4つ足で歩き、私の足元で膝を立てた。足の間に両手を置いて、まるで犬のような仕草である。



「おれはあぶないか?」



耳を垂らして不安気に目を伏せる。その頭をなでるも、血の気のない私の掌では温度さえ伝わらないだろう。



「私は誰も縛るつもりはない。自由にするといい」


「でも、おれはみんなをあぶないにはしたくない」


「ゼロを見習え。あれくらい奔放に生きることもできるだろう」


「あぶないは、きらいだ。おれはもうひとりはいやだ」



気落ちしたクガネにいつもの溌剌(はつらつ)さはない。イーリスのことを諦めることも、皆を危険にさらすことも、どちらもできないのだろう。まるで年相応の子供のように迷った表情だ。


解決策か。



「ならば私もいこう」


「!?」



びくんと体を跳ね上げる。

垂れた耳も天に逆らうように立ち上がった。



「しろが?ここじゃないとだめじゃないのか?」


「指示くらいならできる」


「でもけがとかだめだ!おれはしろのけーごもしてるんだぞ!」


「そうか。頼りにしている」



そっとクガネと離れ、私は窓の外を眺める。


裏のルナティクスと表のルナティクス。

この窓からはどちらもを空の上から眺めることができた。こうしていると、龍の姿だったころを思い出す。


あの頃は目下にいる命のこと、こんなにも重く考えてはいなかった。死んだ我が友が訴えていたことが今ならわかる。



「しろ?」


「クガネ。心配するな。ゼロがいる。

あいつが自身の目的のために動くときほど、頼りになるときはないだろう?」


「……う!」


「ついてこい。作業の合間に面白い物を作った。遊んで来い」



走り寄ってきたクガネの額に触れ、ある場所へと転送する。とはいっても意識のみで、肉体はここで眠っていた。


龍の記録の一部を伝えるのは禁じられているが、それは生き物に限ったこと。


クガネは生物ではない。


私は拍動のないクガネの胸に手を添え、暖かな毛皮の中にくるんでやった。




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