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緊張していたのか、案外早くに目が覚めた。


家ではなかった。


季節はもといたところとそんなに変わらない。夏に朝が早くて冬は遅いか知らないけれど、自分の常識に照らし合わせると大体5.6時くらい。

よく寝た。昨日何時に寝たか知らないけど。


顔を洗った。歯を磨いた。朝ごはんの後に磨きたいけどその時間を取ってもらえるかわからないから時間がある時に磨いときましょ。歯磨き粉は本当に粉だったけど。


「イズミ様、入ってもよろしいでしょうか」


「はい。」


トーザの声だ。こういうのは全部トーザの役回りなのか、大変だな。


「おはようございます、イズミ様。ご支度はお済みのようですね。」


「おはようございますトーザさん。早く起きたものですから。どこかおかしいところがありますか?」


大変お綺麗だと褒められた。まあ前と同じでウエストが緩くてベルトで締めるタイプの物だから。お世辞が上手でございますね。


「ブライト様がお三方に話があるそうで、朝食をご一緒したいそうです。」


「わかりました。」


「ご案内致します。その途中で中田様、長谷川様のお部屋にもお迎えに上がらせていただきます。」


なるほど。そういう扱いはオッケーなんですね。全然いいですよ、お互いの顔を見れば安心する。見知った顔だからね。


咲ちゃんの部屋は案外近い。同じ階でも4部屋離れているだけだ。中田君だけが男だから別の階なのだ。


「咲ちゃん、おはようございます」


「ことちゃん、おはようございます」


「イズミ様、口調にはお気をつけくださいませ」


おっと、何がいけなかった?


「まだちゃん付けでも結構ですが、ますを伸ばしていうのはおやめください。昨日とは違い、私は聞こえなくなるようにはできませんので」


聞こえないとかならいいよってことですね。


「わかりました」


「まぁお元気でいらっしゃるのも良いことです。故郷が恋しいと沈んでしまう方も少なくないそうなので。」


「すいません。誰かの気に障りそうならいつでも言ってくださいね。」


「いいえ、大変よろしいかと。皆様を追い出そうとする方など少数です。」


いるにはいるんですね。それならぜひとも注意してください。命の保証はして欲しいので。


昨日もブライトを見て思っていたけれど、ここの人たちはすごく剣とか武器がしっくりくる。多分小さい頃からつけてきたり練習したりしてきたんだろう。それで、この人たちがしているということは他の人たちもしてたんだろう。切り捨て御免は嫌だもんね。


そういうとこ気にしてたいんだよなぁ。


さっき口調を注意されてしまったので、咲ちゃんにはウィンクでアピールすることにする。人間いくらでも伝える方法はあるからね。ウィンクは得意だよ。


そうこうしている間に、中田くんの部屋に着いたらしい。中田くんの頭は少しボサボサしている。これはふてくされてたのか、今起きたのか、それともワックス的なものがないからなのか。ふてくされていたのなら仲良くできそうだ。


「おはようございます、中田くん」


「おはようございます、和泉さん」


中田くんと咲ちゃんも挨拶を交わす。さすが1年を越して付き合ってるカップルは夫婦感が増す。何というか空気を作っちゃうんだよな。会えてよかったね、と言いたくなる。


私もその空気に入りたくなって、話題を振る。もちろん小声で。


「2人とも、朝ごはんは和食だと思う?洋食だと思う?私は和食派なんですけどね?」


「え、洋食でしょ。和泉さんここの外観見た?超ヨーロピアン。まずここって米あるの?」


「私も洋食だと思うよ。ちょっと和食は想像がつかないな」


分からないよ。


昨日部屋でされた仕草を真似する。そんなことは置いといて、のあれだ。何それ?と顔が言っている。


「置いといて、が伝わってる世界に和食が伝わってないなんて私は信じないよ。なんならピータン入り中華粥が出てきても私は驚かない。」


「何で和泉さんってそう変なところつくのが好きかなぁ」


「朝食の献立ですか?メニューは毎日料理長がお決めになります。今日は」


トーザさんが聞いていたのか会話に入ってくる。もちろん小声だ。小声なら怒られなかった。でもそのぶん近寄ってノロノロ歩いていたから気になったのかな。


「それ以上は言っちゃダメでしょう。こういうのは実際に見るのが楽しいんですから」


置いといて、が伝わっているならタブー全般伝わっていて欲しいものだ。


「いえ、私も知らないんです。私は今日はブライト様の側に着いていることになっていますから。」


「でも想像はつくでしょう?ならだめですよ。同じ条件じゃなきゃ。言われたらそれが正解かと思っちゃうじゃないですか。」


ヒントはいいけれどひらめきが必要なヒントじゃなくちゃいけない。このクイズでは無理。偶然を楽しもう。


「着きましたよ。それではどうぞ。」


トーザが大きな扉を開けてくれる。その姿は騎士よりも家令、執事という言葉がよく似合う気がする。


「おはようございます、ショウタ、コトリ、サキ。」


間違えた、地獄の門番だ。見かけに騙されてはいけない、教訓にしよう。とても大切なことだ。


「食事をしながら、話を聞かせてください。さぁ、どうぞ。」


ブライトはお誕生日席に座っている。この世界にも上座下座の考えがあるのか。本でもよく見る、偉い人の席だ。


テーブルにはブライトのを除いて料理のセットが3つ並んでいる。トーザは言っていた通り、ドアを閉めてさっさとブライトの側に向かっていた。どうぞお座りくださいませ、とドア付近に立っていたメイドさんに急かされる。


「和泉さん、1番あっちに座って。」


おい中田くん、男の子だろ。



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