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法則性があるたびに、ブライトは簡単になら教えてくれる。イメージとしては、独自の五十音表みたいなものがあって、音は大体大丈夫。けれど伸びる音が厄介だ。


伸びる音。これは日本語の単純に伸びてる音と半音を兼任していると言うのがわかりやすい。前にこの文字がついてるからこう読む、というのは、例えばきゃ、きゅ、きょはあってもかゃ、かゅ、かょがないのとおんなじ。これはいちいち前に来る文字と対応させて覚えていかないといけない。でも単体で使われる時もある。


「どうですか、難しいですか?」


「これ、表みたいになってるものは無いんですか?」


「ありませんよ。みんなひとつひとつ覚えていくんです。他の方々も、文句を言いながらも自力で覚えていたそうですよ。」


なんでだろう。一緒に来てた人たちと交流してわかりやすい表を作ってもおかしくないような教科だと思うのだけれど。


「作ってあるのもないことはないですけど、全部自分と同じ世界から来た人向けでして。コトリの書いている文字とは結局違いますので、役に立たないかと」


なるほど。使わない言葉を学んでから使う言葉を習うよりも、最初から自分でする方が速いか。今日中に表ができたら2人にも見せてあげよう。


「こんなのもありますよ?これはこっちの幼児用なんですけど」


差し出されたのは子供が使うこれな〜に?ってするカードだ。りんごの絵を出されたら、「りんご〜!」って答えるやつ。赤シートはないけど。ありがたくいただくと笑われた。


意味が乗ってる単語帳みたいなもんだぞ、もらうに決まってる。リンゴが描いてあったらこれはリンゴを指す単語だってわかるんだぞ。どれほどすごいか。


あんまり笑われているのも気に入らないから、こちらから話題を提供することにした。


「何で言葉は通じるのに文字はダメなんでしょうね」


「言霊の聖霊様のお陰ですよ。詳しくいうと授業をする意味がなくなってしまうので省きますが、ある程度の下地は聖霊様が作って入れているんです」


「じゃあ文字も読み書きできるようサービスして欲しかったですね」


「文字は声に出さないでしょう。あくまで言葉ではなく、言霊の聖霊なんです。それに、文字は人が独自に作り出してしまった物ですから。」


なるほど。それなら納得はできる。正しい言葉の使い方、というやつかな。


見られてばかりだと気が散るので、貰った単語カードに絵柄だけではわからないものがないかチェックしながらちょこちょこ話を振っていく。


「実際、当面やることは授業というか、とりあえず教えてもらって、覚えてってそういうことですよね。」


「そうなりますね。」


「じゃあそれが終わったらどうなるんです?」


「それが結構まちまちなんですよ。いつのまにかどこか遠くに行って家庭を築いていた方もいますし、城勤めでそれなりに出世した人もいますし。」


「会ってみたいんですけど。会えません?」


「無理だと思います。多分全員お亡くなりになってるかと。大体、貴方達が呼び出される一定周期がおよそ200年だと文献にはありましたし。」


「そうですか。」


理不尽だけど、200年くらい頑張って欲しかった。困るよ、くそう。


「何を聞きたかったんです?」


「特に何も。」


そんなことは関係ないでしょう。静かに聞かれる。そんなに気になる?何にもたくらんでないからね。ほんとに。


「実際コトリに関しては城の中にいるのがいいと思います。ショウタとサキなら傭兵という手が使えます。むしろそちらの方がいいと思います。」


あっそ。そうでしょうね。あんまりないって多分めちゃめちゃ強いってことなんでしょうね、そこら辺テンプレでちょっと笑えちゃう。


「でも貴女を簡単に自由にすれば、その力を悪用する人間が出て来ます。必ずです。貴女の意思など関係ありません。」


「でもここにいたからってそうならない理由とかあります?」


まずどういう風に利用するっていうんだか。言霊って言うのは言葉なんでしょ。じゃあ口をわたしが開かない限りどうしようもない。


「それがあるんですよ。事前に防ぐことはできませんが後から押さえつけることが出来ます。外に出られたら押さえつけることも難しい。」


「ほんと不愉快な言い草ですね。押さえつけるだかなんだか知らないですけど?外に出られたら害になるんですか、あっそ。じゃあ早めに出ていきます。」


「そんなことは言っていません。話をちゃんと理解してください。あと礼儀がなっていません。出ていく以前の問題です。」


「それは申し訳ありません。」


さっきと違って空気が重い。こうなるからこの人と会いたくなかったんだよなぁ。自分で言うのも何だけれど、結構根に持つタイプだし。さっきまではまだ和やかにいくかなと思ってたんだけど。


謝ってから、しばらくはカードに読み仮名を書いて、チェックしてもらう作業が続いた。大体50枚くらい。それが終わってから、声をかけられる。


「コトリ、まだ時間はありますか。」


「あります。」


「じゃあ、早いですが言霊について話しましょう。あまりにも知識がないと困りますから。」


教えてもらう前に結構イラッとくる。馬鹿にされてるわけじゃないんだけどな。ほんとに勉強しないといけないんですけど。



あれだよね、


「勉強しないとあんたが困るのよ!」

「今しようと思ってたのに!」


これを丁寧に言われた気分だ。

言い返さなかったことを褒めて欲しい。他に誰もいない。無理だ。



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