リリーナ・ディスタ
信じられなかった。私を蝕む病魔はこの国の医師でさえ匙を投げたのに…
彼女、レイン・ヴェルナーグは私の手に触れただけ…。
身体の中から何かが吸い取られるように消えていった…。
そして、とても暖かい光のようなものが私を包んだように思えたのだ。
「おお!リリーナ!!本当に良かった…」
お父様が私のそばで一国の王とは思えないほど涙を流していた。
「リリーナ…」
お兄様もホッとしているようだ。
「お父様、お兄様今まで私のためにありがとうございました…。」
私のために…他国へ侵略したり精霊様に酷い事をさせてしまった…。
私たちはこれからそれを償っていかなければならない。
「いいや、これは俺達が決めた事だ…。」
「お兄様…」
コンコン
「レイン様がお見えです」
「あ、はい。入ってもらってください」
レイン様が侍女に連れられて部屋に入った。
「御機嫌よう、モンティスタ国王陛下、リデスタ王子、リリーナ様。」
「あぁ、レイン嬢。リリーナの治療の時間ですな…。よろしく頼む。」
「はい、分かりました。」
「では、われわれは失礼しよう。」
そう言って、お父様とお兄様は部屋を出て行った。
「リリーナ様、お手を失礼しますね。」
レイン様は私の手を取った…。暖かい…
「リリーナ様、明日にはもうベットから起き上がれると思いますわ。あとは少しずつ、歩く練習をしてくださいね」
「本当ですか!?」
私が起き上がれる??もうずっとベットで寝たきりだったのに?
「ええ、後は少しずつ体力をつけていけば大丈夫ですよ」
そう言ってレイン様は私に微笑んだ。
「頑張るわ!レイン様、本当にありがとう!!」
嬉しくて私は、レイン様の手を握り締めた。
レイン様はそんな私を見てとても嬉しそうに笑ってくれた。
「私は少しお手伝いしただけですよ。リリーナ様の生きたいという想いでここまで回復したのです。きっとすぐ歩けるようになりますよ」
この方は天使なのでしょうか?そうに違いないわ!
『…そうか。レーニの心残りはこの子か…。』
どこからか声が聞こえた…。
「レックス、だめですよここに入ってきては…。申し訳ございません、彼は私の守護精霊のレックスと言います。」
レックス様…精霊様、ですか。
「いいえ、大丈夫です。」
『レーニと言うのは火の高位の精霊でね。この帝国に捕まり、力を奪われ、弱り、カーヴェルス王国に逃げてきたんだ。』
「レックス!?」
レイン様がレックス様を咎めるように声をかけた。
「…続けてください。私は聞かなければいけません」
私のために…犠牲になった精霊たち…
『あぁ。そんな顔しなくていいよ。やっと分かったんだ。』
分かった?何が分かったのでしょう…。
『レーニは君を守ろうとしていたみたいだね、そして弱った身体では守りきれないと分かり精霊が沢山いて安全なカーヴェルス王国に逃げてきた…そしてミストを身ごもり力を引き継がせたんだ。自分が消滅しても力を引き継ぐものがいれば、加護も継続される…』
「うらんでいたわけではないの…?」
レイン様の呟きにレックス様が頷いた。
『レーニはリリーナの母親と面識があったようだ。そして頼まれた…。』
お母様が…。
『よかったね、君は沢山の人に愛されているようだ…』
私は涙が止まらなかった…。




