喧嘩
前半→アヴィル
後半→レイン視点です。
「レイン…」
「…ご、ごめんね。兄上…」
珍しくカイルが本当に申し訳なさそうに謝ってきた…。
「いや…確かに私が悪いんだ…」
あぁ…レインは許してくれるだろうか。
『アヴィル、レインのことは後にしてくれる?』
レックス殿…ひどい(泣)
『今はこっちが重要だ。ルクス、とりあえず君にかかっていた呪いは解いた。君はこれからどうする?』
あぁ、そうか。なんで私やレインに化けてこんな事をしたのかも調べなきゃいけないな…。
『ええと、とりあえず開放されたのでまた自由に旅を…と思っていたんですが。助けていただいたお礼もしたいと思っているのでしばらくここにいてもいいですか?』
『恩返しなんていらないよ。でもまぁ、もし記憶が少しでも戻ったらディスタ帝国のことや忘れてた事とかを教えてもらいたいかな?』
確かに、私やレインに化けて何がしたかったのかも知りたいな…。
レイン…あんなに怒った事無かったなぁ…
『はい!がんばって思い出してみます!!』
『あぁ、そうだ。火の精霊のレーニってディスタ帝国で見たことない?』
『レーニ…ですか?いや、俺はあったことないですね~』
ルクス殿はコテンと首をかしげ覚えが無いといった。
火の精霊レーニ?レックス殿は何かつかんでいるのか?
『そうか、まぁなにか思い出したら教えてね。』
『わかりました』
そういって光の精霊ルクス殿はどこかへ飛んでいった。
『アヴィル。カイル』
レックス殿が真剣な表情で私とカイルの名を呼んだ。
『ここから内緒の話だよ?』
―――――――
信じられない…アヴィル様が私を間違うなんて…。
ルクス様の変化は確かにそっくりでしたよ?でもしぐさとか、表情とか全然違うじゃないですか?
膝の上…一体ルクス様は私に変化して何をしたのでしょう…もやもやします。
「レイン、大丈夫?」
サナリア様が心配そうに私の顔を見てきた。
「ええ…。サナリア様大丈夫です。」
「ごめんね。カイルお兄様が悪ふざけであんな事言って…」
「いいえ。カイル様は大げさに言っただけなのでしょうけど…。あの、サナリア様?」
「なぁに?」
「サナリア様から見て、ルクス様が変化していたアヴィル様を本物と思われましたか?」
私はルクス様が変化したアヴィル様を本物とは思わなかった…。いつも私を見つめてくれる表情じゃなかった…何かもっと私の心を覗こうとするような…。
「ん~、妹失格かもしれないけど…なんでレインがお兄様じゃないって言ったのかわからなかったの…。」
サナリア様はしょんぼりとして私に言った。
私以外の人は本物のアヴィル様と思ったってことか…。
「ルクス様が言っていたディスタ帝国…精霊が捕らわれていたと言ってましたね…ミスト様のお母様もどこかの帝国で…」
「ディスタ帝国がミスト様が言っていた帝国ってこと?」
「いえ、まだわかりません。一度レックスに話を聞いたほうがいいかもしれないですね…。」
これは偶然?
でもディスタ帝国の辺りを飛んでいただけで高位精霊のルクス様は捕らえられ、呪いによって操られた…。
今わかるのは、精霊がそこへ行くのはとても危険だという事…。
何も、起こらないといいんだけど…。




