虹の精霊 レックス
『そこまでだよ』
私はアヴィルの偽者に声をかけた。
そいつは驚いた顔をして逃走の態勢に入る。
逃がすわけないのにねぇ…。
『【捕縛】』
「なっ!」
そんなに驚くかなぁ?
私から逃げれるわけないじゃん。
『さて、本当の姿を現してもらおうかな?』
「くっ」
『言いたくないならこっちから正体を言おうか?』
「…」
だんまりかぁ…まぁしかたないよね。そういう風に縛られてるんだから…。
『まぁいいや、とりあえず元の姿に戻すからね。』
私は偽アヴィルに向かって掛かっている呪いを解いた。
『あ…どうして…?』
呪いから開放されて現れたのは金の髪の光の高位精霊だ…。
そう、ミストの母親が捕まっていた帝国から差し向けられた精霊。
精霊は本来自分からしか人間に手を貸す事はない。しかしその帝国は何かしらの呪いで精霊を縛り、自分達の思い通りに動く駒としている…。
そんなの許せるわけない…今は同じ精霊として…。
『あ、ありがとうございます!』
『ん。もう大丈夫?君の名前を聞いてもいいかな?』
『はい!俺はルクス、光の精霊です』
『ルクスか。で、なんでレインとアヴィルをねらったのかな?』
なんだか憎めない奴だな~。まぁ光の精霊って素直だけどだまされやすいんだよねぇ…。
『ええと、なんかディスタ帝国の辺りを散歩してたら人が困ってたのを見つけて…近づいたら何かの瓶に吸い込まれて出れなくなったんです。んで、それから沢山の精霊が俺と同じように瓶に入れられてて…それから…あれ?』
『どうしたの?』
ルクスは頭を抑えながら苦しそうに顔をゆがめた…
『それから…思い出せない…なんで俺はここにいるんですか?』
ふむ…記憶が無くなったのかそれとも…。
「レックス…」
レインが私の名を呼ぶ…そんなに心配そうな顔しなくても今は大丈夫だよ。
『はぁ…まぁ今は無理に思い出さなくてもいいよ。レイン、何も心配しなくてもいいよ。』
「でも…」
『レインとアヴィルに化けてた事もおもいだせないんだよね?ルクス…』
『は、はい…ごめんなさい。なんだか頭にもやがかかっているみたいで…』
ミストも母親の記憶は正しく思い出せいていないが、ディスタ帝国か…。一度調べてみないといけないな。
「レックス殿…さっきのレインはこの精霊が?」
お、アヴィルそれ今言っちゃう??
「さっきの…私?」
「そうなんだよ~レイン嬢!兄上ったら生徒会室で偽レイン嬢を膝に乗せて…」
「カイル!!!」
「膝に乗せて…私を間違えたのですか?」
あ~あ…レイン怒っちゃった…。カイルったらいぢわるだねぇ~。
「ち、違うんだレイン!!話を…話を聞いてくれっ」
「しばらくお話したくないですわ。アヴィル様」
ぷいっとレインがサロンを去っていく…笑いながらサナリアが付いていった…。
あ、これって初めての喧嘩じゃないか?ふふふ、レインが感情的になるのってあまり無いから新鮮だなぁ。
『あの…俺はどうしたら…』
あ、ルクスのこと忘れてた…。




