お兄様のうわさ
レックスの暴走は意外にも好評だったようで…まぁしばらくほおっておきましょうか。
さて、もうすぐ入学式が始まる時間です。大きな講堂にみんなが集まる。
「レイン、またあとでね」
「はい、アヴィル様」
アヴィル様は最上学年で生徒会長だ。入学式の挨拶をされるので、先に講堂に向かわれた。
「レイン僕もそろそろ向かうよ。サナリア様、ダリル様失礼いたします」
そういってお兄様も講堂へ向かわれた。
「レオン様は最近ますます格好良くなられたわよねぇ…」
サナリア様がつぶやく…
「そうですか?身内からだとよくわかりませんが…」
「しってるか?カイル兄上に聞いたんだが、レオンって最近フォルター公爵家のリシア嬢に言い寄られてるとか」
お兄様が?そんな話聞いたことないですが…でも、フォルター公爵家のリシア様といえばすでに婚約者の方がいらっしゃったはず…もちろんお兄様にもエーディオン伯爵家のベリル様という婚約者がいらっしゃいますし…妹としては複雑だわ。
「うわさではないのですか?」
「ううーん、カイル兄上からきいたはなしだからなぁ…どうなんだろうな?」
もう…ダリル様ってば教えてくれるならもう少し詳しく知りたかったわ。
「まぁまぁ、そろそろ講堂に向かいましょう?式がはじまってしまうわ」
「そうですね。いきましょうか」
「入学式の後は歓迎パーティーなんだよなぁ~友達100人できるかな♪」
ふふふ。前世でそんな歌ありましたね。私も学園生活たのしみだわ。
――――――――
「はぁ…」
レオンは、深いため息をついていた…甲高い声が頭に響く…頭が痛い
「聞いてらっしゃるの?レオン様」
「ええ、リシア嬢。しかし僕には本日から婚約者が学園に通っていますので歓迎パーティーでのエスコートはできませんよ」
「婚約者といっても伯爵令嬢でしょう?公爵令嬢である私のほうが格が上ですわ!」
「そういう話ではないのです。貴女にも婚約者がいらっしゃるではないですか」
何を言ってるんだこの令嬢は…格が上とかそういう話じゃないんだけど。
「何が婚約者よ!あんなの、みとめないわ!!」
そんなこと僕がしるかよっ!っていいかえしたい…この令嬢の婚約者は確かバラライカ侯爵家のカルネ様か。あぁ、何だってこんな女に捕まったんだ…
「とりあえず、エスコートはお断りいたします。ほかをあたってください」
僕はそういってリシア嬢に背を向け、講堂へ急いだ。
取り残されたリシア嬢は顔をしかめレオンの背をにらみつけていた。
「…許さないわ。少し顔がいいからエスコートさせてあげようと思ったのに。私の申し出を断るなんてっ!」
甘やかされて育ったリシア嬢…容姿に自信があり、自分より位の低い婚約者より、自分の横に見劣りしない同じ位の公爵家だからという理由だけでレオンにエスコートさせようとしたようだ。
レインは知らず知らずのうちにこの女の暴走に巻き込まれていくこととなる―――。




