閑話1ーレックスサイドー
レックス視点のお話です
私はレックスーー零音の世界では九十九神と呼ばれる存在だった。
いつから私が、私として存在できるようになったかは…今ではもう覚えていない。
私の依代、木彫りの猫を作った親と言える人の子供が私を「レックス」と名付け、私はその子と共に過ごしたーーとても、とても大切に私を扱ってくれた。その子が死んで、何百年経ったか…
私は遠い国、日本という所にいた。
葉月 春…零音の祖母もあの子と同じように私を大切にしてくれた。春が7歳の時、彼女の前に私は姿を現した。とても驚いていたが怖がらず友のように話しかけてくれた。彼女にははっきりは見えていなかったらしいがそれでも気配を感じとったようだ。
しかし、大人になるにつれ春には私の気配を感じる事が出来なくなっていったーー
寂しかった、もう語りかけてはくれないのかー私の存在を忘れてしまったのかーー…
零音が5歳の頃、春が零音に呟いた…
『零音ちゃん、おばあちゃんはこの木彫りの猫から小さい子が出てくるのを見たことがあってねぇ…今は私には見えないけれど、また姿が見たいわねぇ。零音ちゃんになら姿を見せてくれるかもしれないわぁ』
春は!私を忘れていなかったんだーー
嬉しかった。私という存在をまた見たいと言ってくれた。側にいるよ!と伝えたかったーしかし、それを聞いた零音は青い顔をした…
あ…幽霊と思われてそうだ…そうだよねー普通見えない存在って幽霊って思われちゃうよねー
私は少し…いや…すごく凹んだ(泣)
それから数年はいじけて依代に篭ってた。だって零音に見えちゃったら怖がられるでしょ?
叫ばれたらショックだもん…(・ω・`)
イジイジしてたら家の中がバタバタした…。春が、旅立ったからだー
私は最後に春に会おうと数年ぶりに依代から出たーー
そして、零音と目が合ったんだーー
零音はすごく目を見開いて私を見た。
春の言ってた通り、零音も私の姿が見えたんだ!
それから私は常に零音の側にいた。
あ、ストーカーじゃないよ?お風呂とか着替えとか覗いてないからね?私は紳士なんだよ?そこのところ間違えないでね?
こほん…まぁ、零音は私の事は幽霊だと思っていたんだろうけどねー
そんなある日、零音が出かけるのについて行ったらへんな車がすごいスピードで零音に向かってきていた。運転者は狂ったように車の中で叫んでいた。私は零音に向かって手を伸ばし叫んだ!
『零音っ!逃げてっっ!!』
しかしーー私の手は零音の体をすり抜けたー
私の体と零音の体が重なった時…車が私たちにぶつかった。
私の意識と零音の意識はそこで途切れた。
私の意識が戻った時、白い世界にいた。
おかしい…私には肉体があるわけではない。車にぶつかったからと言ってこの白い世界に来るはずがないんだ。ぐるぐるとなぜこうなったのか考えていた時ー
《すまないねー…君は葉月零音が死ぬ際、偶然重なったために別の世界に飛んでしまったんだーー》
男のようでもあり、女のようでもある声がした…
『は?』
《私は、葉月零音だけを異世界に飛ばす予定だったんだが…いや、私が狙って事故を起こしたわけじゃないがね?》
『零音を異世界に…?』
《ああ、葉月零音の魂をね。彼女の魂は清らかだ…転生する異世界に必要とされてね…》
『私も行けるの?零音を今度こそ護りたい!』
《まぁ、君ならそう言おうと思ったが…君を人としては転生させられない。ふむ…転生先は人を守護する精霊という存在がいるから。それでいいかな?》
『人を守護…うん!それでいい!今度お前たちにも零音を傷つけさせない!』
《ははは、手厳しいな…まぁ、頑張って護りたまえ…》
そう言うと白い世界はさらに眩しくなり私は再び意識をなくしたーー
赤ん坊の泣き声がする…あぁ、零音だーー
今度は最初から零音の側にいられるんだ。この世界では、零音が天寿をまっとうするまで私が護るんだーー
《》は神様のセリフです。
白い世界=死後の世界…的な感じですm(_ _)m




