泣きそう…
カフェを出たあとは色んなお店を見て回った。服や雑貨、アクセサリー自分で見て回るなんてこの世界に来て初めてだった。いつもは商人が家に来るもんね。沢山の人で賑わう市場…この国はやっぱり豊かなんだなぁと思った。
初めて歩く市場にはしゃぎすぎた私は愚かだった…
「アヴィル様〜…」
こっちです〜と言おうと後ろを振り向くとアヴィル様の姿がなかった…。いつのまにかはぐれてしまったのだ。いやいや、私馬鹿だわ。はしゃぎすぎて迷子なんて…子供かっ!まぁ、今は子供だけど。しかし、ここどこかしら?
迷子になったらその場から動いちゃダメだと、前の世界で友達によく言われてたなぁなんて考えながら、どんどん心細くなり不安に駆られ私は元の場所に戻ろうと動き回ってもっと迷ってしまった…人の姿がない飲屋街のような道に出た、もう泣きそう…
「アヴィルさま…レックス…」
呟くと余計に涙が出そうになった。
「お嬢ちゃん…どっからきたんだい?」
「ふぇっ!」
背後から男の人の声がっ…
そっと、振り向くとイカツイおっさんがニヤニヤしながら見てる
「こんなところに一人でいたらわる〜いおっさんに連れていかれちゃうぜ?」
ガタガタと全身が震える…わ、私どうなっちゃうの!?
「迷子か?ちょっとこっちにおいで…」
イカツイおっさんが私に手を伸ばしてきた。私は恐怖で目をギュと閉じたーー
「こんの、馬鹿がぁーー!!」
バッコーン!!
「いてっ!ちょっ、まて、フライパンで殴んなよ〜」
「ちっちゃい女の子脅して何やってんだい!」
女の人の声!私はホッとして、目を開いた。すると女の人はフライパン片手にイカツイおっさんを何度も殴ってる…いや、もういいんじゃないでしょうか?おっさんタンコブできてきてる…
「いや、一人でいるから迷子だろうと思って警備隊に届けてやろうと…いてっ殴んの止めろって!」
イカツイおっさんが涙声になってきた。もう止めてあげないとおっさんが可哀想になってきた…
「あ、あの。ごめんなさい…私、知り合いとはぐれて…声かけられてびっくりしただけです…」
だからもうやめてあげてください…そう言おうとしたら
「ごめんねぇお嬢ちゃん。うちの旦那が怖がらせちゃって」
えっ?旦那さんだったのか…
「すまねぇな、嬢ちゃん。怖がらせちゃったのか…怖がらせないように笑顔で声かけたつもりなんだがなぁ」
「あんたの笑顔なんかちっちゃい子からしたら恐怖だよ!」
おっさんがショボン顔してる…あれは、笑顔だったのか…いや、私こそ怖がってごめんなさいだわ。
「いえ、こちらこそ本当にごめんなさい」
「私はアリーって言うんだ。こっちはジョエル。イカツイ顔してるけど悪い奴ではないからね」
ニカッと豪快に笑うアリーさん。
「あ、私はレイン。レイン・ヴェルナーグと申します」
「ヴェルナーグ!?おいおい貴族のお嬢様がなんだったって一人でこんなところに?王都といってもこの辺は治安が悪いんだぞ?」
「うっさいね!さっき知り合いとはぐれたって言っただろう。まぁ、一人では危ないからあんた警備隊のとこに連れてってやんな!」
「最初からそうしようとしてたんだがなぁ…」
ジョエルさん…いや、本当に申し訳ないです…
「じゃあ、行こうか」
そう言ってジョエルさんが手を差し出した
「レイン!!やっと見つけた!」
切羽詰まったアヴィル様の声が聞こえた。
「アヴィル様?」
走り回って探してくれたようですごく汗をかいているアヴィル様が私に駆け寄り、そしてーー抱きしめられましたー
「よかったっーー」
「ご、ご心配をおかけしました」
抱きしめられたまま、オロオロとている私をアリーさんとジョエルさんが「おやおや〜」ってニヤニヤと見ている…は、恥ずかしいからもう離してください…
迷子になるとすごく不安になりますよね(・ω・`)私は、方向音痴だとよく言われます_(:3 」∠)_




