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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
美食の国ビストリア編
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第98話 女王様

「エミリアさん、ただいま〜……って、死んでる!」

「おいどうした、エミリア?」

 フラウと2人でしばらく街中を歩いた後ホテルに戻ってみると、エミリアがうつろな目をして横たわっていた。

 テーブルには金貨が並べられており、本当にお金を全て数えたようだ。


「4日です……」

「4日?」

「今の所持金だと、4日しかこのホテルにいられません!」

 エミリアはベッドからバッと飛び上がり、怒りを露わにする。


「へえ、じゃあ900万ぐらいあったんだな」

 バッグはかなり重かったはずだが、良くここまで持ってきてくれたな。


「感心してる場合じゃないですよ! こんなに無駄遣いして!」

「まあそう怒るな。グミをやろう」

 オレはぷりぷり怒っているエミリアの口にグミを放り込む。甘味で怒りを収める作戦だ。


「むぐっ!? ……何ですかこれは! 程よい食感とフルーティーな甘さで美味しいじゃないですか!」

「そうだろう? これがカップ一杯でたったの50ベルだ」

 どうやら怒りも収まった……とは言い切れないが、少し落ち着いたようだ。


「はあ……でも、本当にどうするんですか? 流石に他国でお金を稼ぐ当てはないと思いますけど」

「そうだな。とりあえず紹介状で"女王様"に会ったらここを離れて港町に行くつもりだ。そこでは安いところに泊まろう」

 メインは食事と観光なので、このホテルはあくまで思い出作りといったところだな。


「もうそろそろ夕方だ。他の4人も退屈してるだろうし、街を歩きながら夕食をどこにするか決めよう」

「わかりました。でも、あんまり高級なものを食べ過ぎるとホテル代が無くなってしまいますよ」

「ふっ、その心配はないな」

「……?」

 説明するより見てもらった方がいいだろう。公園から帰ってきたばかりだが、エミリアを連れて再び外出することにした。


*


 暗くなり始めた街を彷徨い歩いて1時間ほど、迷いに迷った挙句ホテルに近い高級レストランに入ることにした。

 白いクロスの掛けられたテーブルに、優しく揺れる蝋燭の明かり。ファミリー向けではなく、カップルや夫婦で来るような店だな、ここは。


「本当にこんな立派なお店で大丈夫なんですか……?」

「表にあった看板を見ただろう。全員合わせても1万ベルを超えないさ」

 まだ心配しているエミリアをよそに、メニューを開く。予約はしていないので、とりあえずあるものを注文するとしよう。


「よし、まずは完熟トマトとチーズのサラダ、子羊のロースト、白身魚のソテー、それに赤ワインにしよう」

「いきなり頼み過ぎですよ……」

 折角の高級レストランだ、旨そうなものは全て頼むことにしよう。

 店員に手を上げ、注文していく。


「申し訳ございません、お客様。本日は魚料理を切らしておりまして……」

 ……悲しいお知らせだ。海に接した国なので魚料理も食べたかったのだが。

 まあ、牧畜と違って漁は運もあるだろうから、たまたま不漁だったのだろう。


 気を取り直して、ワインを飲みながら肉料理を待つ。しばらくすると、良い香りとともにメインディッシュがやってきた。


「おお、流石は美食の国……! かなり旨そうだ!」

「凄いですね、見た目だけでなく、飾りつけも凝ってます!」

 皿の中心には赤みの美しい骨付きの肉が、オレンジ色のソースを浴び光を反射させている。皿の周りには野菜が飾られているが、芋と人参が花形に切られており見た目も楽しい。


 エミリアはトマトのコンフィという料理を口に運んでいる。量がおとなしいが、女の子はそれで満足なのだろうか?


「グラタン美味しいです!」

「こっちのリゾットも美味しいよ!」

 横に座っている子供たちも食事を楽しんでいるようだ。子供らしく可愛い料理を注文しているな。だがもっと野菜を食べ給え。


 メインディッシュ、サラダ、スープ、デザート……結局、フルコースに近いぐらいの料理を食べてしまった。

 これで7人合わせて1万ベル以下とは、この国は底知れないな。


*


「はあ、少し食べ過ぎてしまったな」

「ハレミアだったら10倍以上の値段はしそうな豪華さでしたね」

 ホテルに帰りつき、エミリアと話しながら食事の余韻に浸る。今日はかなり満足したのでもう寝てしまおうか?

 そう考えていると、入り口をノックする音が聞こえてきた。


「お兄様、少し遊びませんか?」

 ノックの主はステラだった。今日はあまり一緒に行動していなかったので、構ってほしくて来たのだろうか。


「……ステラ、最近は学園がおろそかになっていないか? 遊びも大事だが、遅れを取り戻すために自宅学習も必要だぞ」

「だ、大丈夫です!」

「どうかな? 学力は勉強時間に比例する、今日は寝るまで勉強の時間だ」

「そんな……」

 部屋の中の机にステラを無理やり座らせると、日が変わるぐらいまで勉強をすることにした。


*


 翌朝。

 今日はついに"女王様"に会うつもりだ。一体何の女王様なのか、確かめてやるとしよう。


「それで、その女王様はどこにいるんですか?」

「どうやら城内にいるみたいだな」

 目的の城は、ホテルから10分もかからないほどの場所にあった。入り口には衛兵が立っている。


「止まれ、何の用だ?」

「女王様に会いに来た。紹介状もある」

 衛兵に折りたたまれた手紙を渡すと、それを持って城の中へと入っていった。


 数刻後、どうやら許可が下りたようで、衛兵に連れられて中に入ることができた。

 長い廊下を歩いていく。廊下からは、丁寧に手入れをされた中庭が見え、色とりどりの花が咲いている。

 やがて部屋に通され、中で待機するように言うと衛兵は帰っていった。


 まだ女王様は居ないようで、庭を眺めながら待つことにした。


「……! ルイーズ、肩に蜂がついているぞ」

「え? きゃあ、ちょっと、どなたか取ってくださいませ!」

 花が近いせいだろうか、大きめの蜂がルイーズの服に止まる。肩をぶんぶん振っているが、なかなか飛んでいかない。

 ルイーズが暴れるせいで、周りの人間も手を出せないでいる。


「任せて、ルイーズさん! 僕の『フラウランチャー・ミニ』で追い払ってあげる!」

 フラウは唐突に新兵器を懐から取り出す。片手サイズで、もはやピストルだな。


「ちょっと、危ないですわ! ……フリード様、早く!」

「お、おい、とってやるからオレの腕を操るな!」

 ルイーズの魔法でオレの腕が勝手に動き出し、拳を形作る。

 鉄を生み出して叩く訳にはいかないし、オレの右手は犠牲になりそうだ。


 だが、大騒ぎしているうちに急に蜂が飛び立ち、どこかに行ってしまった。


「ふう、危ない所でしたわ」

「……オレの腕がな」


 無事だったオレの腕を労っていると、いつの間にか入り口の扉が開いており、そこから1人の女性が笑いながら入ってきた。


「曲者か?」

「ふふふっ。ごめんなさい、からかってしまいましたね。ローズの友人というのがどんな方かを見ておきたくて」

「わっ! 蜂がいっぱいです!」

 その女性は、周囲にたくさんの蜂をまとわせていた。ブンブンと嫌な音をたてながら、まるで親衛隊の様に彼女を守っている。


「……なるほど、蜂の女王か」

「初めまして、貴方がフリード様ですね、私はカテリーナと申します。私の『女王蜂』はお楽しみいただけましたか?」

 このいたずら好きの女性が"女王様"で間違いないな。歳は二十代後半だろうか、髪を上品にまとめ、貴族のようなドレスを着ている。


「まったく、刺されたらどうするつもりでしたの!」

「私の命令に忠実ですから心配はありません」

 うちの貴族が突っかかるが、軽くあしらわれてしまう。悲しいかな、貴族では女王様には勝てないようだ。


「……でも、驚かせてしまって申し訳ありません。もう朝食は摂られましたか? お詫びに、蜂蜜たっぷりのパンケーキを御馳走いたします」

「蜂蜜!」

「パンケーキ!」


 美食の国だけあって、魔法は食事にも絡めてくるようだ。

 御立腹のルイーズはあとでなだめるとして、頭が蜂蜜で支配されてしまったステラとロゼリカの為に、食事の提案を受け入れることにした。


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