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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
美食の国ビストリア編
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第96話 国境

 実家で一晩過ごした後、オレたちは集合場所に集まっていた。

 オレたちの見送りの為、両親も集合場所の近くまで来ている。


「フリード、ステラ。餞別(せんべつ)だ、これを持っていけ」

「これは、カラスの羽?」

 オレたち兄弟に親父が黒い羽を渡してきた。恐らく魔法で生み出したものだろう。

 オレはそれをポイっと投げ捨てた。


「ああっ、なんてことをする!? それはパパの羽だぞ!」

「要するにただの抜け毛だろ。ゴミを渡してくるな」

「ゴミだなんて酷い……! パパの大事なところに生えてた羽毛なのに」

「……ばっちいな、どこの毛だよ」

 正直要らないのだが、すすり泣くおっさんがうっとおしいので、金めっきをして保管することにした。


「ステラ、頑張ってね。ちゃんとお兄ちゃんのいう事を聞くのよ?」

「はい、お母様!」

 オレの横で、母親がステラの頭を撫でている。見た目が17歳と13歳なので姉妹にしか見えないな。


「フリードちゃん」

「……? どうした?」

 母親はオレの前に来ると、両手を突き上げてバンザイのような格好になっている。


「頭を撫でられないから、ちょっと屈んで?」

「いや、別にいいから」

「ほら、早く〜」

 どうやら頭を撫でたいらしい。なぜこんなところでそんな真似をしなくてはならないかは不明だが、言い出したら聞かないタイプなので、素直にしゃがみ込む。


「男の子なんだから、ステラのことも他の子のことも守ってあげるのよ? 昨日の約束忘れないでね?」

「わかってるって」

 頭を抱きかかえられ、丹念に撫でまわされてしまった。なんたる羞恥プレイよ。

 やっとオレの頭から手を離すと、後ろにいるギルドメンバーの顔を見渡し、1人を手招きした。


「ちょっと来て〜」

「え? 私か?」

 どうやらデットを御指名のようだ。突然話しかけられて驚きつつも、半裸で近づいてきた。


「ええ、あなたが一番しっかりしてそうだから」

 ……どこを見てそう思った。どう見てもそいつは痴女だろ。


「フリードちゃんのことを守ってあげてね」

「は、はい、わかりました」

 デットは困惑しつつも、オレの母親の言葉に頷いた。


「そうだ、親父。オレからも渡しておくものがある」

「何だこのバッグ? ……重たっ!? 何が入ってるんだ?」

「金貨だ。光物は好きだろう?」

 ビストリアで豪遊しようと思って持ってきた、バッグ一杯の金貨を渡すことにした。見た感じ親父の稼ぎがあんまり良く無さそうだからな。


「ちょっと、フリードちゃん! こんな大金受け取れないわ。そうでしょ、パパ?」

「これで毎日豪遊だぜ、ひょおおっ……え? あ、そっ、そうだな。こんな大金別に要らないぞ、パパを舐めるな!」

「……はあ」

 少し金を渡す気も失せたが、母親の為にもバッグは置いていくことにした。宿代の代わりとして、無理やり押し付ける。


「それじゃあ、気を付けてね!」

「困ったらいつでも帰ってきなさい!」

「はい、お母様、お父様!」

「……また帰ってくる」

 朝からなんだかドタバタしてしまったが、依頼人を待たせるわけにはいかない。

 まだ話したい気持ちはあるものの、とにかく出発だ。


 2人に見送られながら、馬車が進んでいく。姿が見えなくなるまで、ずっと手が振られていた。


*


 馬車は村を発ち、軽快に進んでいく。半分忘れかけていたが、このままだと護衛としての出番もなさそうだ。


「両親とも、優しそうだったね」

「……ああ、悪いな、見せつけてしまったようで」

「別にいいけどさ」

 ロゼリカがポツリと言葉を漏らす。オレのギルドで両親がいないのはデット、ロゼリカとフラウだな。

 特にロゼリカはまだ幼いから可哀想だ。


「安心しろ、オレが親代わりだ。甘えてくれて構わないぞ?」

「はいはい」

 悲しいかな、オレの愛情は受け入れてもらえなかった。反抗期か?


「……まあいいか。それよりも着いた後のことを考えよう。飯はもちろんだが、折角だしいろいろなとこを観光しよう」

「私、海を見てみたいですわ」

 珍しくルイーズが意見を口にする。


「海か……。ハレミアにはないし、見に行くとするか」

 大陸の中心に位置するハレミアの数少ない欠点の一つ、それは海に面していないことだ。海の魚も新鮮なものはあまり口に出来ず、大抵は川魚か、輸入品の塩漬けや干物だ。

 聞くところによると、海の魚は新鮮なら生でも食えるらしい。少し恐ろしいが挑戦してみるか。


「あとは、こいつだな」

「あっ、それはローズさんに貰った、女王様の紹介状だね!」

 見覚えのある折りたたまれた紙を見てフラウが声を上げる。一体何の女王様なのか、確かめるとしよう。


*


 馬車に乗って今日が3日目だ。流石にそろそろ話のネタも尽きてきたな。

 皆無言で、窓の景色を眺めているばかりだ。だが、ついに商人オーティスが終えを上げる。


「おっ、ついに見えてきましたぞ、あれが国境ですな」

「やっと着いたー! 僕もう疲れちゃったよ!」

 目的地が見えるとわずかにテンションが上がるのは何故だろうか。皆体をほぐすように背伸びしている。


「国境では入国審査がありますぞ。荷物と人は別にやるので、申し訳ないですが一度馬車からお降りくだされ」

「ああ、少し体も伸ばしたいし丁度いい」

 目の前には木でできた柵がずっと続いている。恐らく、国境は全てしっかりと柵が張り巡らされているのだろう。

 馬車を降りると、体を適当に動かしつつ、審査をするという建物に向かっていく。


「そういえばフーリオールでは特に入国に審査はありませんでしたね。馬車は乗り換えましたけど」

「オレがいたから顔パスだったのだろう」

「……それはないと思います」


「ふふん、この僕がついていたからね! お姉ちゃんの名前をだせば一発だよ!」

「ただの職権乱用だな。まあ、一応同盟国だからあまり気にしていなかったのかもしれんが」


 ハレミアとフーリオール、ビストリアは3ヶ国同盟を結んでいる。ちなみに、残りのサリア、メルギス、ウイスクも同盟を組んでいるので、この大陸は六大国と言われている国によって実質二分されている形だ。


「よし、審査の順番が来たようだな。オレについて来い、野郎ども!」

「……野郎は御主人様だけですけどね」

 係員に呼ばれ、一列に並んで部屋に入っていく。中では所持品の確認と、軽い質問だけのようだ。


「香水や煙草、その他匂いの強い所持品はありませんか?」

「いや、持っていない」

「わかりました。ではこれで終了ですので、お戻りください」

 何故匂いの強いものはダメなのだろうか、あとで聞いてみよう。

 ギルドメンバー全員がつつがなく終わったようで、再び建物の外に出る。


「皆さま無事に終わりましたかな?」

「ああ、問題なかった。ところで、オーティス殿。何故香水や煙草の有無を聞かれるんだ?」


「何しろ"食"に重きを置いている国ですので、食事以外で匂いの強いものは禁止されているのです。私も最初は面食らいましたぞ、何しろヘビースモーカーなもので」

 オーティスは1人で笑っている。まさか禁止までしているとは驚きだ。


「やっと馬車のチェックも終わったようですな。さあ、出発いたしましょう」

「よし、体もだいぶ解れたぞ。それで、あとどれぐらいで目的地だ?」

「ここからビストリアの王都まで、あと2日ぐらいですな」


「ええっ!? そんな!」

「うう、また馬車の長旅か……」

 オーティスの言葉を聞いて、子供組が疲れたような声を上げる。


「気持ちはわかるが、しかたないだろう。さあ、早く乗り込むんだ。着いたら何でも奢ってやる」

 甘い約束をしてけつを叩き、再び馬車に押し込む。


 やや疲れの見える子供たちを乗せて、再び馬車は進むのであった。


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