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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
死者を操る少女編
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第85話 巡礼

 今日は依頼を探すために、ギルド管理局へ来ていた。Cランクになったとはいえ、金を稼ぐには働くしかないのである。

 いつものように不愛想に座っている敏腕受付嬢に挨拶する。


「おはよう、アルトちゃん。今日も美しいな」

「これはヴァレリー様、相変わらず元気ですね」


「天才とはいつも余裕があるものだからな。受付嬢がデートの誘いに応えてくれるともっと元気になれるが」

「ヴァレリー様を元気付けられなくて私も心を痛めていますよ」

 やれやれ、相変わらずの鉄壁ガードだ。

 気を取り直して掲示板へ向かうと、新しい依頼が無いか確認する。


「きゃー! フレデリック様ーっ!」

「……ん?」

 しばらく掲示板を眺めていると、にわかに入り口の方が騒がしくなってきた。


 そちらを見ると、女の子の人だかりと、その彼女たちの視線を集める男の姿がある。

 男は20代後半ぐらいだろうか、顔は悪くないが、笑顔は無くむすっとした表情で気難しそうな印象がある。

 その男は、別の窓口で何やら話し込んでいる様子だ。


「アルトちゃん、あの男は?」

「御存じないのですか? あの方は第1ギルド『王家の盾』の副ギルドマスター、フレデリック・セロー様ですよ」

 なるほど、通りで人気があるわけだな。それにしても、わざわざこんなところに第1ギルド様が来るとは、何の用事だろうか。


「あの方は『巡礼』の依頼結果を確認するために、最近よく足を運んでいますよ」

「巡礼か……」

 オレが気になっていることをアルトちゃんは話してくれた。


 『巡礼』とは、探知役、伝達役、護衛役のスリーマンセルで国内の各都市、村々を回り、魔法による被害が無いかを確認する仕事だ。


 魔法には、その気になれば街1つ簡単に消滅させるようなものもある。そんなことはめったにないわけだが、実際に起きたとしてもその情報は国に届かない為、定期的に国中の情報を収集しているという訳だ。

 各地を回る様子から、通称『巡礼』と呼ばれ、大体は何も起きずにそのまま報酬を貰えるため、依頼として人気が高い。


「アルトちゃん、オレも『巡礼』の仕事が欲しいのだが」

「私の調べによりますと、ヴァレリー様のギルドには伝達役がいないようですが?」

「……走力には自信があるぞ」

「残念ですね。また次の機会にお願いします」

 こんなところで、うちのギルドのバランスの悪さが浮き彫りになってしまった。残念だが今日は帰るとしよう。


 別の窓口を再び見ると、いつの間にかフレデリックという男もいなくなっていた。


*


「御主人様、仕事はありましたか?」

「いや、今日もあんまりいいのは無かったな」

 ホームに帰ると、エミリアがコーヒーを淹れながら話しかけてきた。

 熱いコーヒーに一度口をつけたあと、問いかけに答える。


「今のギルドの財政状況はどんな感じだ?」

「えーと、少しずつ貯金が減っていますね。以前受けたフーリオールからの依頼も赤字ですし」


「何だと? 国を跨いだ依頼で大金をせしめたと思ったが」

「地下室を作ったので、それが響いています。もう少し節制しないと……」

 由々しき事態だな。受付嬢をナンパしている場合ではなかった、少しでも金を稼がなくては。


 頭を悩ませていると、玄関から音がした。誰か帰ってきたようだ。


「フリード、帰ってきてたのか」

「お帰り、デット」

 帰ってきたのは痴女だった。また暇つぶしに罪もない小動物を狩っていたのかと思ったが、机の上に袋をどさっと置いた。袋の中からジャラっと金属音がする。


「何だこれは?」

「王都の近くの狼を狩った報酬だ。私も依頼を受けたんだ」

「……!」

 まさか、オレ以外に依頼を受け、金を稼ぐものが現れるとは。考えもしなかった。


「デット、お前は良い女だな」

「な、何だ急に……。私もギルドメンバーの一員なんだから、少しは仕事しないとな。毎月80万も貰っているわけだから」

「……そうか、そうだよな」

 よく考えれば、メイドとして雇ったエミリアや学生のステラはともかく、他の者は働けるはずだ。うちも慈善事業ではないのだから、少しはギルドメンバーにも可愛さ以外で貢献して貰わないとな。


*


 夕食後、オレはギルドメンバーが集まっているタイミングで絶叫した。


「注目ぅぅぅっ!」

「うわっ、急に大声出さないでよ!」

 ロゼリカがびっくりした声を上げる。他の者もこちらを見る。

 十分に注目を集めたところで、オレは一堂に向かって話を始めることにした。


「諸君、我々は無事Cランクギルドまで昇格し順風満々と言えるが、それに反して財政状況は危機に瀕している」

「……?」

「つまりは、皆も金を稼いでね♡ と言いたいわけだよ。特に、ルイーズ、ロゼリカ、そしてフラウ」

「ええ、僕も?」

 留学生であるフラウにも、当然貢献して貰わないとな。地下室まで作ったのだから。


「私、お金には困ってませんわ。フリード様が貧乏なら給料無しでもいいですわよ」

「貧乏とはなんだ、貴族だからと言ってナチュラルに見下すな。この激動の時代、女も強くなくてはならないのだ。立派なレディになるため、社会経験をしたまえ」

 ルイーズが不満を口にするが、お嬢様と言えども容赦はしない。

 子供たちに社会のことを教える、それもギルドマスターの務めなのである。


「お金を稼げと言われても、どうすればいいの?」

「何でもいい、大金じゃなくてもいい。とにかく1人当たり月に1件、これをノルマとしよう」

 名指しで呼ばれた3人はしぶしぶといった感じだったが、顔を向かい合わせてどうしようかと相談し始めた。

 これで、彼女たちも少しずつ成長するだろう。


*


 翌日、オレは無職3人衆を連れて、ギルド管理局を訪れた。

 初めての仕事なので、依頼を受けるところまでは見届けようという考えだ。


「この辺に貼られている依頼書が簡単な依頼だな。ほら、猫探しとか庭の掃除とか」

「へえ、これぐらいなら私でもできるかも」

「……まったく、面倒ですわ」

 3人は掲示板を眺めて、1人でもやれそうなものを探している。


「僕、これにするよ! これなら僕のネット弾で対応できそうだし!」

 フラウは、逃げた飼い犬の捕獲依頼にしたようだ。内容は簡単そうだが、王都の中をあんなでかい大砲を持って移動して大丈夫だろうか。


「じゃあ私はこれで」

 ロゼリカは、家の解体依頼を選んだ。威力は高いが速度の遅いロゼリカの魔法にはうってつけかもしれないな。


「ルイーズは決まったか?」

「碌なものがありませんわね。何ですの、この報酬。私を働かせて数万ベルじゃ割に合いませんわ」

 またこのお嬢様はわがままを言って。大事なのは金額じゃない、まずは第一歩を踏み出すことだというのに。


「フリード様、お金を稼げれば何でもいいですわよね?」

「まあ構わないが、犯罪じゃないだろうな?」

「私を見くびらないでくださいませ! 他の者よりもお金を稼いで差し上げますわ!」

 どうやら何かを思いついたようだ、自信満々に声を上げる。少々不安だが、自分で考えて行動することに決めたのだ、見守ることにしよう。


「よし、じゃあオレも適当に受けるか」

 オレも賞金首の掲示板から何枚かの手配書を取ると、フラウとロゼリカの依頼を受領するためにアルトちゃんの窓口へ行く。


「ヴァレリー様、大変そうですね」

「いや、これがなかなか楽しいぞ? どうだ、アルトちゃんもオレたちのギルドに入ってみたくなったか?」

「……デートの次はギルド勧誘ですか? 残念ながら私の天職は受付嬢ですので」

 言うほど天職か? と思ったが口には出さない。手続きも終わったので、不愛想な敏腕受付嬢の元を後にする。


 さて、彼女たちの初仕事、楽しみだな。

 オレは期待に胸を躍らせていた。


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