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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
子爵令嬢の恋愛事情編
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第80話 生首

 オレは鉄の鎖を生み出してそれを手繰りながら、亡者の生首とともにデットたちの所へ戻ってきた。


「お帰り、フリードさん。……って、何それ!?」

「お土産だ。死体の首を落としても動いていたから、持って帰ってきてみた」

 オレの手には、死体の首がある。生前は可愛かったであろう少女は、オレに髪をわしづかみにされてぶらぶらと揺れている。

 亡者の首はオレに噛み付こうとして顎を動かしているが、当然顎以外は動かないので歯が届くことは無い。


「ぎゃあーっ! そ、それをこっちに近づけるでない! 喰らえ、『ダーク★フォース』!」

「うわっ! おい止めろ、ロゼリカ。貴重な資料だぞ」

「だって……! き、きもいっ」

 のろのろとした魔法をさっと避ける。当たれば頭が爆散してしまうところだ。

 ロゼリカはまったくビビりだな、若干魔王が出てしまっているぞ。危険はないというのに。


「やめてよーロゼリカちゃんーお友達になろうよー」

「近づかないでっ!」

 オレは死体の顎の動きに合わせて裏声でアテレコしてみたが、ドン引きされてしまった。


「フリード、女なら何でもいいのか……?」

「……失礼なことを言うな。あくまでこれはお土産であり資料だ」

 デットはオレのことを勘違いしている。女ならってなんだ、まったく。


「お留守番のエミリアへ渡すとしよう。何もないのは可哀想だからな」

「それを渡される方が可哀想だろ」

 とにかく、ここで得られるものはもうないだろう。オレはローズのメモを再度確認する。


「フラウ、ナパーム弾はあと何発ある?」

「え? えーと、3発は残ってるよ。燃料を考えても、それが限界だと思う」

「よし、このメモの髑髏マークもあと3つだ。処理して帰るとしよう」

「……もう死体は持ち帰らないでね」


*


「よし、ここが最後の髑髏マークの位置だな。フラウ、最後のレクイエムを奏でるとしようか」

「がってん!」

 最後の大穴にナパーム弾が発射された。穴の底をしばらく地獄に変えたあと、静寂が訪れる。


「大地のデトックス完了だな。これで世界も少しは平和になっただろう」

「ありがとーフリード君ー私たちを浄化してくれてー(裏声)」

「フリード、きもいよ……」


「……少しでも死体と友達になれるように気を使ってやっているというのに」

「なりたくないから!」

 錬金術奥義・腹話術まで使わせておきながら、ロゼリカは死体を拒絶する。女心は難しい。


「洞窟を出るとするか。腹も減ったし早く王都に戻ろう」

「死体の焼失を見せられて食欲なんて湧かないよ……」

 洞窟に入ってから、半日は経っているだろう。出口に向かって歩き出し、縄梯子の所まで戻ってきた。


「はあ、また1時間かけて縄梯子を昇るのか……」

「安心しろ、作戦を考えておいたぞ。足元に鉄を生み出し続け、それに乗って上に向かう。名付けて錬金エレベーターだ」

 4人が乗れるほどの鉄の床を生み出し、そこに皆で乗る。そして錬金術で、下方向に大量の鉄を生み出し始めた。

 少しづつ、体が上に向かっていった。


「わっ! フリードさん、これはとっても楽ちんだね!」

「しかし、どんどん加速していないか、これ!?」

「安心しろ、この天才にミスは無い」

 エレベーターはガンガン加速を続ける。降りる時1時間の距離が、帰りは5分といったところか。明るい空がどんどん広がってくる。


「ちょっとフリード! 怖いからもっとゆっくり!」

「まだだ、この勢いに乗るんだ」

 エレベーターが地上に届いた瞬間、錬金術を止める。だが、体は勢いに乗って、高く空中に吹き飛ばされた。

 まるで、投石機の石の気分だ。


「うわぁぁぁ!?」

「よし、しっかり掴まれ!」

 オレは他の3人を抱き寄せると、スプリングを生み出し鮮やかに着地する。


「着地成功だな。どうだ、楽しかっただろ?」

「し、心臓が止まるかと思った……!」

「フリード、一言言っておくべきだろ!」

「……あははっ! 僕は楽しかったよっ!」

 どうやらおおむね好評だったようだ。これはまたオレの好感度が上がってしまったな。


「よし、脱出成功したし、王都に戻ろうか」

「……でも、馬車が無いよ?」

「しまったな、ローズの誕生日後に帰る予定にしてたから、馬車が来るのは2日後だ」


「どうするんだ?」

「歩いて帰ろう。馬車で1時間なら、徒歩なら4時間ぐらいか? 既に日が落ち始めてはいるが、夜には着くだろう」

「ま、また歩くのか……!」

「泣き言を言うな、運動した後の飯は美味い。これはこの世の真理だ」

 オレはロゼリカを叱咤激励し、4人と生首1つで王都へと歩き出した。


*


 竜を祀る呪われた祭壇。その側で、怪しげな2人が会話をしていた。

 祭壇には、"竜の眼"と"竜の双翼"が祀られており、まがまがしい瘴気を周囲に放っている。


「ユリアン、体は無事か……?」

「はっ、腕は失いましたが、問題ありません」

「そうか。竜の肉体を取り戻すにはお前の魔法が必要だ、今後も気をつけよ」

「有難きお言葉です」

 2人は小声で会話をするが、そこに場違いな大声を上げながら、女が入ってきた。

 血の様に赤いローブを脱ぐと、鋭い金色の目と、閉じた口から飛び出すほどの牙が見えた。


「まっっったく! 何なの、あのガキは! なんで私があんな奴のお守りをしなくちゃいけないわけっ!?」

「……ミュゼー、静かにしろ」

「あら、これはこれは、アーカイン様。ちょっと聞いてくださいよ、アリスがまた『死体性愛(ネクロフィリア)』で村を1つ滅ぼしましたよ! そろそろ国が動き出してもおかしくないです」


「そこを何とかするのがお前の役目だろう。何の為に一緒に行動している?」

「ユリアンは黙って。最近アリスのせいで新鮮な血が味わえていないから、貴方のを頂いてもいいのよ?」

「……お前の牙が届く前にその首が落ちるぞ」

「へえ、貴方にやれるかしら? 腕を一本無くしたおまぬけさん?」

 仲間であるはずの2人は、一触即発の険悪な雰囲気になる。


「止めろ、お前たち!」

「……失礼しました」

 アーカインの言葉に、2人は距離を取る。


「いいか、我が魔法『融合』は死体のままでは使えぬ。アリスの『死体性愛』で竜を一度復活させるのは必須事項だ。何に変えてもアリスだけは守れ」

「……ですが、アリスは私1人では制御しきれません。各国に潜入した者どもは、いつになったら竜の体を全て持ち帰るのですか?」


「……我の体調を考えるとここ1、2年がタイムリミットだ。それまでに揃わなければ、中途半端でも竜を復活させる」

「死体に欠損があると力を全て取り戻せないませんが、仕方ありませんね」

「その通りだ。だがアリスがいなければ竜の復活自体ができぬ。お前の活躍に期待している」

「……わかりました」

 ミュゼーは不満顔だが、頭を下げるとその場を立ち去ろうとした。その後ろ姿にユリアンが声をかける。


「ミュゼー、ハレミア領内の動く死体どもはどうした?」

「……穴を掘って埋めたわ。王都に近すぎるから、もう存在はバレているかもね」


「そうか。……アリスの存在がばれても我々の目的は分かりはしないだろう。だが、どこで何が起こるかわからん」

「その通りね。1対1なら私たちに勝てる魔法使いなどいくらでもいるのだから、目的を果たすまではちゃんと逃げに徹するわ。私は死んだ馬鹿2人とは違う」

「分かっていればいい。行け」

「……貴方が私に命令しないで」

 ミュゼーは今度こそ、その場を後にした。


「……ユリアンよ、ハレミアの"竜の心臓"はどうだ?」

「はっ、場所はわかっており、王族の墓がある聖地の中に封印されています。王族しか入れない結界魔法があるため侵入は難しいですが、今は国王が危篤の身で、必ず近々結界が開かれます」


「そうか。……最も竜の力が封印されていると言われるのは、ハレミアの"竜の心臓"とウイスクの"竜の頭骨"だ。その2つは何としてでも手に入れたい」

「……必ずや」

 ユリアンも頭を下げると、自分の任務の為にその場を後にした。


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