第5話 ゴブリン討伐戦
オレ達は兵舎から馬を借り、ゴブリンに襲われているという村に向かっていた。王都を出て、東へ約1時間ほどらしい。太陽はだいぶ傾いてきている。
「フリード殿のギルドは今までどのような仕事をしてきたのだ? だいぶ若く見えるが……」
「ギルドとしては初仕事だな。ギルド自体最近出来たばかりだし」
「お、おい、大丈夫なのか? 勝算はあるんだろうな?」
「五分五分って所だな、ゴブリンだけに」
「貴様……ふざけているのか!?」
どうやら天才的ジョークはお気に召さなかったようだ。
「御主人様……本当に大丈夫なのですか?」
エミリアも心配になったようで、声をかけてくる。
「安心しろ。オレは天才だからな」
「もし村を守れなかったら許さんぞ……」
「無駄な心配だ」
なんとも和やかな雰囲気で馬を飛ばしていると、遠くに村が見えてくる。
「見えたぞ、あそこだ!」
急いで近付くと、村を守るためであろう木製の柵が、所々破壊されているのが見えた。もう既にゴブリン共は侵入済みのようだ。畑は荒らされ、火のついた家もある。
「もう手遅れなのでしょうか……?」
「いや、村の中心にレンガ造りの頑丈な教会がある。そこに避難している可能性が高い」
ハンスを先頭に、教会へと向かう。
「ゴブリン共め! いたぞ!」
周囲に建物のない小さな広場に、その教会はあった。立派な赤レンガ造りの教会に、ゴブリンが群がっている。その数、500以上だろうか。教会を取り囲むようにひしめき合い、入り口さえ見えない。
持っているこん棒や石を打ち付け、壁を破壊しようとしている。あまり長く持ちそうになく、まさに間一髪で間に合ったという様子だ。
「一か所にまとまっているとは好都合だな。エミリア、馬を頼む」
「え? ちょ、ちょっと、大丈夫ですか!?」
「二人で離れていろ。すぐに終わる」
オレは手綱をエミリアに渡し、徒歩で近づいていく。ゴブリン共もこちらに気付いたようだ。対象を変え、こちらに飛び掛かろうとしている。
オレは手から鉄の鎖を生み出し始める。以前賞金首を捕まえたものと同等だが、先端は槍のような刃物がついている。
「悪いが畜生に慈悲はないぞ。一匹も逃さないと思え」
こちらから距離を詰めていくと、突然一斉にこちらに飛び掛かってきた。数で圧倒するつもりらしい。
「雑魚共にお似合いの人海戦術だな。いや、亜人とは言え、"獣"海戦術の方がふさわしいか?」
オレは独り言をつぶやき、全方向にいくつもの鎖を放つ。放たれた鎖は真っ先に飛んできた勇敢なゴブリンを貫く。
鎖は敵を貫いても勢いが衰えず、何十体もまとめて貫いていき、そのまま後ろの教会にドカッと突き刺さった。
まるで串焼きのように、鎖にゴブリンだったものが並んでぶら下がっている。
「おっと。勢い余って教会を破壊してしまうところだった」
だが、今の攻撃でゴブリンは一気に3分の1ほどに減っていた。残りのゴブリンは飛び掛かるのは危険だと判断したのだろう。手に持っていたこん棒や石を投げてくる。
オレは冷静にもう片方の手から鉄を生み出し、ドーム状に盾を展開する。石や木が鉄を貫けるはずもなく、ガンガンと虚しい音を立て、そのまま周囲に転がった。
そこまでしてやっとゴブリン共は実力差を知ったのだろう。生き残りは奇声を上げながら背を向け、一目散に逃げだしていた。
後ろから追い打ちをかけようとも思ったが、後始末が面倒だと思い、やめることにした。
オレの初仕事はあっさりと解決したようだ。
「ふう。おーい、終わったぞ!」
オレは後ろに手を振り、終わったことを伝えた。