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天才錬金術師の最強ギルド創設記  作者: 蘭丸
冬休み編
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第58話 フリード、奉仕する

「被告人、前へ!」

 オレは大声で呼び出され、前へ進み出る。


 ここは、王城内の裁判所。オレは、『浮遊島墜落事件』の首謀者として魔法裁判にかけられるところだ。

 魔法裁判という素敵な名前のイベントは別に大したことをするわけでは無く、ただ単に魔法を使った大事件を取り扱うための裁判だ。


 オレは周囲を見渡す。目の前の高い位置には、裁判の進行役である大臣、更に奥の高い所には最終判断を下す国王の席がある。今は第一王子が座っているが、国王の体調が悪いらしいので、代理なのだろう。


 左側には、国内のAランクギルドのギルドマスターが座る席がある。トップクラスのギルドは、裁判にも意見が出せるという事だな。

 今は3人の人間が座っており、両端の人間は見覚えがある。第3位ギルド『ユグドラシル』のクロード様、反対側はドジっ娘セシリアちゃんだ。つまり真ん中に座っている女性が、第2位ギルド『再誕の炎』のマスターか。初めて顔を見たが、その年齢不詳の女性は退屈そうに頬杖をついていた。


 そして右側には、事件の状況を説明する係や証人が立つスペース。そこに一人の男が立ち、紙をめくり始めた。


「大臣、まずは説明をさせていただきたい! 数日前に起きた、浮遊島の墜落。それはここにいる被告人、フリード・ヴァレリーの魔法によるものです!」

「被告人、間違いないか?」

「……その通りだ」


「幸いにして地上の人々に死者、負傷者は居なかったが、近くの村に被害が発生している。『轟音と共に地面が揺れ、畑は荒れ木々は揺れ、子供は泣き叫び男女は愛を忘れ老人はおしっこを漏らした』。これが村の様子を現した文面です」

 真面目な顔して何言ってんだこいつ。


「『老人はおしっこを漏らした』……。被告人、間違いないか?」

「……その通りだ」

 なぜオレに念押ししたか不明だが、人間素直が一番なのでとりあえず同意しておく。


「この行動は国家への反逆といえます! 厳正な判断をお願いしたい!」


「大臣よ、一言意見を申してもよろしいかな?」

「く、クロード様……。どうぞ、お願いいたします」

 オレから見て左側の席で、クロード様が口を出す。王国に多大な貢献をしているギルド『ユグドラシル』のマスターの発言に、大臣もやや気圧されている。


「今回の事件は確かに彼の行動によるものだ。だが、妖精たちや我がギルドの者を守るための行動だ。妖精達の知識は必ず国の為にもなる。そこをご考慮願いたい」

「わ、わかりました」

 内容はオレの弁護だ。言葉に重みのある人間の援護は本当にありがたい。


「私もいいかしらぁ?」

「ど、どうぞ、マルジェラ様」

 真ん中に座っていた女性も声を上げる。第2位ギルドのマスターはなんだか間延びした声で発言を続けた。


「そもそもあなた達にその男を裁けるわけぇ? 浮遊島を落とすなんて私でも無理だわぁ。そんな実力のある男が暴れても私たちは手を貸さないわよぉ」

 どちらかというと脅しだな、これは。オレは穏健派なので暴れるつもりは無いが、一応擁護してくれたのか?


「わかりました。……セシリア様は何か意見はございますか」

「個人的にその男とは面識がありますが、国に刃を向けるような男ではない、とだけ言わせていただきます」

「あらぁ? 珍しいわねぇ、貴女が擁護するなんてぇ」

 マルジェラがセシリアに絡んでいるが、無視されている。

 何はともあれ、トップギルドの連中は皆オレのことを助けるような発言をしてくれたようだ。


 大臣は考え込んでいる。沈黙が流れるが、一番高い位置にいる王子がついに声を上げた。


「皆の者、余の心は決まった! この者の功罪を鑑み、1か月のギルド活動停止、フリード・ヴァレリー個人には40時間の社会奉仕を命じるものとする!」

 王子の大きな声で、オレの判決が言い渡された。


*


「フリード、ちょっといいかの?」

「これはクロード様。なんでしょうか」

 王城を出てギルドホームに帰ろうとしていたところで、クロード様に呼び止められた。


「済まないのう、無罪にしてやれずに」

「大したことはありません。オレの魔法で被害があったのは事実ですし、特に厳しい判決でもありません」

 一応罰則はあるが、どうせ冬は大した仕事が無いので1か月何もしなくても問題はない。40時間の奉仕もすぐ終わる内容だ。


「……もう少しうまい方法はなかったのかと考えなくはありませんがね」

「仕方ないのう、メルギスの正規軍など、ギルド単位での対応は難しい。……彼らが国内にいた明確な証拠があれば、もう少し良い判決だったかもしれんが」


 オレが風を操る男を一瞬でボコボコにできれば良かったが、それができなかったのが悔やまれる。

 まだまだ未熟という事だな。選べる選択肢の中で最善の回答を出したとは思うが、オレの実力では100点満点の回答は選べなかったという事だ。


「それで、妖精の森は……?」

「わしの『天地創造』でひとまず荒れた木々や地面は修復しておいた。場所も国境近くは危険なので、場所を移して今はギルドのものに保護をお願いしておるよ」

「ありがとうございます」


 流石は、生命体以外の全てを意のままに操る世界最高レベルの干渉型魔法、『天地創造』だ。森の移動まで済んでいたとは。

 オレはクロード様に礼を言うと、ギルドホームに帰ることにした。


「御主人様!」

「お兄様、大丈夫でしたか!」

 ギルドホームに帰りつくと、皆がロビーに集まっていた。今日の裁判の結果を心待ちにしていたようだ。


「それで、結果は……?」

「残念ながら死刑だ。皆今まで世話になったな」


「そ、そんな……!」

「お兄様、そんなの嫌ですっ!」

「こ、抗議に行くべきだっ!」

 冗談のつもりだったのだが、皆は真に受けて悲しみと怒りを露わにしている。


「ちょ、ちょっと待て、冗談だ。本当は一か月のギルド活動停止と奉仕活動だけだ」

「フリード様、言っていい冗談と悪い冗談がありますわ」

「本当です! みんな、心から心配していたのに……!」

「……済みませんでした」

 目に見えてみんなの好感度が下がっていくのが分かる。どうやら今回のオレは選べる選択肢の中で、最低の回答を選択してしまったようだ。


*


「さあて、奉仕の時間だ……!」

 オレは、王城の前の大通りに並ぶ街路樹の根元に立っていた。

 もう12月に入っており寒さが身に染みるが、奉仕時間をとっとと消化するために行動を始めた。


 木の傍でしゃがみ込み、生えている雑草をぐっぽぐっぽと抜いていく。

 同時進行で枯れ落ちた木の葉もしこしこと集めて、もはや隙なしだ。


「くっくっく、もうつるつるで根元が丸見えだぞ?」

「……御主人様、何を言っているのですか?」

 街路樹の1本を綺麗にし終わり悦に浸っていると、後ろからエミリアに声をかけられる。


「話しただろ? 40時間の奉仕活動を命じられたから、こうやって街路樹をきれいにしているところだ」

「そうですか。……よいしょっと」

 エミリアはそう言うと、横の木にしゃがみ込みオレと同じように雑草を抜き始めた。


「おい、何やってるんだ? 奉仕を命じられたのはオレだけだぞ」

「私も手伝いますね。皆でやった方がきれいになりますよ!」

 きれいになる速度が上がっても、オレの奉仕時間が早く減るわけでは無いのだが。


「まったく、こんな寒い中草むしりなんて大変ですわ」

「フリード、私も手伝おう」

「わ、我も頑張るぞ!」

 オレの返事も聞かず、ギルドメンバーが集まり草むしりを始める。


「お兄様、私もご奉仕します!」

「……ルナも手伝ってやるです」

 夕方になると、学園が終わったのであろう、ステラとなぜかルナちゃんも合流し、黙々と草むしりに加わった。

 この寒空の中自ら進んで奉仕活動をするとはな。


「……御主人様、何を笑っているのですか?」

「おっと、笑っていたか? まあ、うちのギルドの奴って馬鹿ばっかりだなと思ってな。オレ以外は特にやる必要もないのにわざわざこんなことをして」


「ば、馬鹿だなんてひどいです! 私たちは……!」

「ふっふっふ、言わなくてもわかっているさ」

 まったく、無駄なことを進んでやる奴らだ。


 だが、オレはこのつまらない奉仕活動も、何故か楽しく感じ始めていた。


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