第3話 最初の仲間
久しぶりの再会を果たしたオレたちは、管理局の近くのカフェに来ていた。
「それにしても……すごいね。卒業してまだ1年ぐらいなのに、ギルドを作るなんて」
適当な席に腰掛けると、エミリアが話しかけてくる。
「フッ当然だ。オレは天才だからな」
「ふふっ、その雰囲気は変わってないね」
「それなりに成長しているつもりなんだがな……」
格好よく決めたつもりが、くすくすと笑われてしまうと形無しだ。オレは頬を掻く。
コーヒーが運ばれてきたので、一度カップに口を付けた後、本題に入ることにした。
「それで、求人の話なんだが……」
「あっうん。私、仕事を探してて……。戦闘は苦手だけど家事は得意だから、メイドとして雇って貰えないかなって」
確かにギルドの仕事は戦闘だけではないため、専属の医者やメイドを雇っているギルドも少なくない。だが、わざわざギルドを選ばずとも、貴族連中だってメイドを募集している。
「成程、でもなんでオレの求人に? メイドであれば他にも求人があったはずだが」
そう問いかけると、少し恥ずかしそうに顔を俯かせる。
「その……。この求人だけ、給与が決まってなかったから……」
「あぁ。人を雇うのは初めてだから、相談して決めようと考えていたんだ。ちなみに、いくらぐらいが希望なんだ?」
「80万ベルぐらい……。難しいよね、やっぱり」
「80万!?」
オレはその要求金額に驚いてしまう。王都の平均給与は約20万ベルだ。ホームの為に金を使い切ったオレにとっては、重い金額。
だが、難しいと言われて、このオレが引き下がれるだろうか。難題を解決してこそ、天才ではないのか?
「そんな金額、オレなら一日で稼げるぞ」
……安定はしていないが。
「え? じゃ、じゃあ……?」
「ああ、これからよろしく、エミリア」
「うんっありがとう! こちらこそ、これからよろしくお願いします!」
オレの差し出した手を取り、深く頭を下げる。……明日からちゃんと稼げる仕事を探すか。
*
「あっそうだ。一つ確認を忘れていた」
「何ですか?」
話が終わり、立ち上がりかけたところで聞きそびれていたことを思い出した。
「エミリアはどんな魔法が使えるんだ?差し支えなければ教えてくれ」
「えっと。今どこか怪我しているところはありますか?」
「怪我? ……そういえば、今朝少し指を切ってるが」
元々住んでいた部屋からホームに荷物を移動しているとき、少し人差し指を切っていたので、その指を彼女の目の前に差し出す。もう血は止まっていたが、指先に傷が残っている。
「では失礼して」
「うおぉ!?」
彼女は突然、怪我した指先をパクッと咥える。まったく予想していなかったので、素の反応が出てしまった。
指先に柔らかい感触が広がり、数秒後、彼女が口を離す。
「これが私の『天使の雫』の能力です」
……彼女の唇で濡れた指先は、傷がすっかり塞がっていた。